これは夢か現実か
男爵令嬢、メリッサは顔を真っ赤にしてプルプルと震えている。
父と兄は母が連れて行っていまい、部屋にはメリッサとアレンの二人が残っている。
「メリッサ様、返事をいただきたいのですが…」
もう、はい、以外言えないでしょう!
メリッサが心の中で叫ぶ。
「今はまだ同じだけの気持ちをお返しすることはできないのですが、それでも大丈夫でしょうか。」
家同士ではない、ただの婚約。
友情や婚約者としての絆はあると思う。
しかし、まだ恋心にもなってはいない。
「これからは沢山時間があります。時間をかけましょう。」
この人は何もかも捨てて私を選んでくれた。
この手を取ればきっと私は幸せになれるだろう。
「待っていてください。きっとすぐに追いつきますから。」
まだ分からない恋心でも、こんなに想われると嬉しい。
涙が出るくらいに嬉しい。
いいのかしら…いいのかしら…こんなに幸せで。
**
メリッサとアレンは静かな湖畔の前にいた。
「広い湖ですね。」
そう言ったメリッサに湖畔から涼しい風が吹いた。
隣にいるアレンの瞳の色に似た湖の水面が揺れる。
大きな湖は森を切り裂き、空をよく写す。
「ここは空が一番綺麗に見えるところなんです。そして、この空の澄んだ青を見るとメリッサ様の瞳を思い出すのです。」
プロポーズから幾ばくか過ぎ、私たちは二人だけの関係をゆっくりと築いている。
何か行動をした訳ではなく、アレンは赤子の様な歩みのメリッサを見守るかのようにただただ一緒に時を過ごした。
私は…時々妄想してはアレン様と他の女性をくっつけてしまったりもする。
それはとっても楽しいのだが、いざアレン様が目の前から消えてしまえば寂しくて泣いてしまうと思う。
本当は誰にも渡したくない。
惜しむ程、アレン様に執着している。
そしてその髪や肌に触れたいと思う。
いいのかしら、私。
それでもいいと言ってくれて、待っていてくれる人…
メリッサはそっとアレンの肩に身を寄せた。
それは恐らく、自分から初めて甘えてみせた行動である。
アレンがメリッサの肩を抱くと、お互い顔を見合わせた。
アレンの髪と瞳が揺れている。
本当に綺麗。
アレンの指がメリッサの唇に触れる。
メリッサも同じ様にアレンに触れたいと思っていた。
メリッサ手がアレンの顔へと伸びる。
その手はアレンの顔へ振れる前に掴まれ、同時にメリッサとアレンの唇が重なった。
手を握る強さとは違って、優しいキスだった。
唇が離れ、アレンがメリッサを抱きしめる。
その腕の力は強く、体にかかるアレンの体重が幸せの重みのように感じる。
「アレン様、私、アレン様のことが好きです。」
分かってもらえているかも知れないが、メリッサは口に出して見たかった。
自分の言葉がくすぐったかった気持ちの治り方を教えてくれる。
アレンは体を離してメリッサの顔を見た。
少し驚いて、とろけるよう微笑む。
「メリッサ様、私もメリッサ様のことが大好きです。結婚してください。」
「はい。」
ずっと言えなかった返事を答えると、メリッサは花のように笑顔になった。
そして二人はまた幸せそうにキスをした。
次でラストです