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一連の結末

 甲高かんだかい鳴き声と共に怪鳥は急降下し、塞をくわえて飛び立つ。

 瞬く間に地面が離れてゆく。

 そのまま大空を猛スピードで進む怪鳥。どこへ向かっているかなど想像にかたくない。


「ほう、これはいい眺めだな」


 眼下に広がる森や砂地。遠くには川もある。

 これが他の人物であれば、非常に有益な情報となり得ただろう。

 しかし、塞にとっては必要ない。地形などわからずとも、進むべき道がわかっているから。

 だが、広大な世界を一望する権利は塞にとっても喜ばしいものだった。


「見てるか女神。最高の気分だぜ? 風は気持ちいいし、絶景は果てしない」


 えさにされそうだというのに、なおも余裕の態度の塞。

 無理もない。これは彼が望んで進んだ未来なのだから。

 具体的に何が起こるか、その全てはさすがに彼もわからない。だが、その帰結する先に最善の未来が存在していることだけはわかっている。


「さてと、そろそろみたいだな……」


 塞は首を回し、怪鳥を見上げながら呟いた。


「ご苦労なことだ。わざわざ自らの命運を削りながら、こうして俺を運んでいるんだからな」


 話しかけても反応はない。

 ただひたすらに巣を目指して飛び続ける怪鳥。

 だが、塞はお構いなしに続ける。


「この日この時この経路を選んだこと、そして俺を捕まえたこと。それがお前の罪だ。とっとと帰るなり他の獲物でも探すなりしていれば、お前は死ぬこともなかったんだ」


 塞は口角を釣り上げた。

 次の瞬間、森から放たれた矢が怪鳥の首を貫いた。

 悲鳴が一つ上がり、塞は怪鳥の嘴から解放される。そしてそのまま、苦しむ怪鳥と共に落ちてゆく。

 木々の枝葉に引っかかったため、塞は軽傷で済んだ。

 だが、怪鳥は無事では済まない。重みで枝が折れてしまい、そのまま地へと叩きつけられる。いや、それ以前に首を射抜かれているため助かりはしない。


「あーあ、かわいそうに」


 塞は心にもないことを呟き、乾いた笑い声を上げた。

 と、その時。


「おーい、大丈夫かー!」


 木々の間から弓矢を背負った青年が駆け寄ってきた。


「お前が助けてくれたのか?」

「ああ。鳥に捕まっているのが見えたからな」


 青年はナイフを取り出し、塞を縛りつけている縄を切り解いた。


「ありがとう。今は何もしてやれないが、この礼は必ずしよう」

「別にいいさ。それより、早くここを離れた方がいい。この周辺は危険だ」

「だろうな……」


 塞でなくても容易にわかる。

 唸り声が時折響き渡る薄暗く深い森。どんな凶暴生物が潜んでいることか。


「こっちに洞穴ほらあながある。獣が嫌う薬草をいてあるから安全だ。来い」


 促されるまま塞はついてゆく。

 そうして着いた先には、くぼんだ岩壁がそびえ立っていた。


「今日は泊まっていくといい。俺はレイ、君は?」

「塞、とでも呼んでくれ」

「わかった。ところで、塞はどうして怪鳥に捕まってたんだ? 居住地には滅多に現れないはずだが……」

「ちょっと城に立ち寄ったら見張りに縄で縛られて、その後底なし沼に連れてかれただけさ」

「西の国の連中だな。奴らはよく囚人の処理に沼を使っているから」


 レイは洞穴の入り口へとまっすぐ指さした。


「へえ……そっちが西か」


 知らない世界であるため方角は元々把握できていなかったが、どちらから来たのかさえわからなかった。

 馬車に乗っている間、どの方角に進んでいるかを確認できなかったためだ。

 大空から眺めていた時も前方しか見えなかったため、最初に着いた城を見つけることはできなかった。


「この近くは馴染みがないかい? なんなら明日、君の家まで送ってあげようか」

「いいや? 俺は家を持ってないんでね、帰る場所がないのさ」

「旅人か。それならしばらくここに住むか?」

「そうだな……。お言葉に甘えさせてもらおう。ところで、レイはずっとここに住んでいるのか?」


 その問いかけにレイの表情がくもる。


「実は俺、東の国の王子なんだ」

「ほう、そりゃあまた何でこんな場所に?」

「嫌なんだ、この戦国の世が。父上はまるで獣のようだ。他の城の人間を殺すことばかり考えている」

「そうか……。なら、その争いを終わらせてしまえばいいんじゃないか? 国を一つにまとめて」


 レイは悲しそうに笑った。


「そう簡単にはいかないさ。西の国は強いから、やがて他の国は滅びるだろう」

「簡単さ。俺が勝ってみせるよ」


 その言葉を聞き、レイは驚きのあまり塞の顔を数秒間見つめた。

 だが、直後に笑い出し……。


「冗談が上手いね、君。ありがとう、ちょっとだけ気が楽になったよ」


 そう言って溜息を吐いた。

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