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ダッシュ

作者: ぱた

○大田商業高校・外観(夕)


○同・グラウンド(夕)

   陸上部が練習中。山田貴(17)と佐藤隆幸(17)。マネージャーの高田みれな(17)がいる。

   佐藤が100メートル走の練習をしている。

   走り終えた佐藤。

佐藤「どうだった?」

   息を切らしながらみれなに訊く。

みれな「12秒33」

佐藤「あー、全然だめだぁ」

   離れたところでストレッチをしていた山田が佐藤のほうへやって来る。

山田「どうだった?」

佐藤「ダメ」

山田「じゃあ、もう1本俺とやるか」

佐藤「あぁ、そうする」

   山田、佐藤、スタートラインに立つ。

山田「みれな、記録たのむわ」

みれな「オッケー」

   山田、佐藤、クラウチングスタイル。

   みれな、ゴールラインに立ち、大きな声で。

みれな「用意、どんっ!」

   山田、佐藤、一斉に走り出す。


○大田商業高校・外観


○教室

   ドアの上の「2年3組」のプレート。


○同・教室・中

   佐藤、小林誠(17)が一緒に弁当を食べている。

小林「でさ、どーなのよ(モグモグ食べながら)」

佐藤「なにが?(モグモグ)」

小林「みれなだよ」

佐藤「あー、まだ」

小林「お前、もう1年以上経ってんだぞ。そろそろ言ったほうが・・・」

   小林の話を制するように佐藤が。

佐藤「なんつーか、その。タイミングがないんだよね」

小林「バカ。タイミングなんて毎日あるぜ。今の昼休みに1組行ってみれな呼んできて告っちゃえばいいんだよ」

佐藤「そんな簡単にいくかよ」

小林「なんでよ?(笑)。ま、みれなが山ちゃんのことが好きだってのが問題だよな」

佐藤「そこだよ。大問題だよ」

   佐藤、教室の窓の外の景色を見る。


○同・グラウンド(夕)

   陸上部員たちが練習をしている。

   山田、息を切らしながらみれなの方へやって来る。

山田「タイムどうだった?」

みれな「11秒33」

山田「まぁまぁってとこかな」

みれな「んー。山ちゃんならもっと伸びるとおもうけど」

山田「そう簡単に言うなって」

   山田、わざとらしく、みれなのおでこを小突く。笑みがこぼれるみれな。

   佐藤がやって来て、みれなに訊く。

佐藤「みれな、オレのタイム何秒だったけ?」

みれな「確か・・・12秒そこそこ」

佐藤「そこそこって、おまえ短距離走はそこの、そこそこのところが大事なん・・・」

みれな「ところで山ちゃん。来週の水曜日って何の日でしょう?」

山田「水曜?」

   山田は佐藤のほうを見る。

佐藤「ギョウザの日じゃないかな」

   みれな、佐藤の言葉を無視して。

みれな「誕生日だよ。あたしの」

   山田、佐藤、見つめ合う。

佐藤「で、それを発表して俺たちにどうしろと?」

みれな「さぁ、どうでしょう」


T-(数日後)


○花屋

   佐藤が花屋の前をウロウロしている。

   店内に入る佐藤。女性定員が。

女性定員「なにかお探しものですか?」

佐藤「(戸惑いながら)あの、た、誕生日とかの、花って、どういぅ・・・」


○時計屋

   店内を物色している佐藤。赤色の腕時計を見つけてレジへ向かう。


○大田商業高校・外観

   

○教室

   ドアの上「2年3組」のプレート。


○同・教室・中

   佐藤が小林の席へ来て話しかける。

佐藤「あのさ、おまえって彼女いるじゃん?」

小林「あー、いるけど」

佐藤「その、プレゼントとかって、どうしてる?」

小林「どうしてるって、なにを?」

佐藤「だから。渡すタイミングとか」

小林「あー、特に気にしないけど」

佐藤「(小声で)気にしない・・・」

小林「そう、あっ、お前。まさか」

佐藤「まあね」


○同・グラウンド(夕)

   陸上部練習中。

   走り終えた山田がみれなに近づく。

山田「みれな、ちょといいかな?」

みれな「なに?」

   山田は自分のバッグの方へ行き、バッグの中から綺麗に包装された包みを取り出す。その包みをもっ   て、みれなのほうへ戻ってくる。

山田「これ、誕生日の」

みれな「えっ、マジでっ!」

   満面の笑みで喜ぶみれな。

   みれなを見ながら立っている山田。

   二人を少し離れた所で見ている佐藤。

みれな「でも、今日じゃないよ。誕生日」

山田「知ってる。明日だろ。けど明日部活ないし、1日くらい早くてもいいかなって」

みれな「問題なーし。もらえれば問題なしっ。開けてみていい?」

山田「別に、いいけど」

   みれな、包みを開ける。赤色の腕時計(佐藤が時計屋で選んだものと同じもの)。

みれな「(笑顔で)ありがと。しっかし時計って。タイムの事が頭から離れないんだね」

山田「今度、それで計ってくれよ」

みれな「おしっ!まかしといて」

   山田、みれな、二人笑顔。

   佐藤、二人から視線をそらし、スタートラインへ向かう。

 

○佐藤家・前(夜)

   住宅街の戸建て。玄関のドアの上に「佐藤」の表札。


○同・佐藤の部屋(夜)

   床に仰向けになり、じっと天井を見つめている佐藤。ゴミ箱の中に小包と小さな花束が捨ててある。

   ラジオから音楽が流れている。


○大田商業高校・外観(夕)

   陸上部練習中。

   佐藤、コースを走っている。走り終えみれなのほうへいく。

佐藤「(息を切らしながら)どうだった?」

みれな「12秒22」

佐藤「うわぁー、もうちょいで12秒台きれんのになぁー」

   山田が、みれなの所に近づいてきてストップウォッチを見る。

山田「おっ、おしいっ。もうちょいじゃんかっ」

   佐藤、山田を真剣な目で見る。

佐藤「山ちゃん。1本、一緒に走ってくれないか?(落ち着いた口調で)」

山田「よし。やろうぜ」

   山田、佐藤、スタートラインに立つ。

   ゴールラインには、みれながいる。

   みれな、ストップウォッチと赤い腕時計、両方を見る。

みれな「(大きな声で)用意!。どん!」

   山田、佐藤、二人同時に走りだす。


○大田商業高校・外観(夕)

 

○同・玄関(夕)

   佐藤が下駄箱に靴をしまい帰ろうとしている。後ろから小林がやって来る。

佐藤「あれっ、おまえ今日彼女と帰るからって」

小林「あー、別れた」

佐藤「いつ?」

小林「さっき」

佐藤「さっき?!」

小林「まぁ、いいよ。そうだ、どっかでラーメン食ってこうぜ」

佐藤「・・・いいね、そうしよう」

   ラーメン屋を目指して歩く二人。

                    <おわり>


   



 









   



 


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