8章 追憶 2人の足跡
俺が、神の境地に目覚めてから2ヶ月ほどが経った。未だに俺の記憶は戻ってはいない。
「ユートさん。おはようございます。」
リティアが俺の名前(仮)で呼ぶことができるのも、ポケットの中に入っていた消しゴムに(ユート)と書いてあったからだ。前の世界のことは日常的に使っていたシャーペンとかボールペンだとか消しゴムだとか。そんなどうでもいいことしか覚えていなかった。しばらく平穏な生活を送っていた俺は最近になって俺が何者なのかを考えるようになった。
「…トさん…ユートさん!」
「ん、あぁごめん。何?」
「……ちょっと、散歩に行きませんか?」
「いいね。今日はとてもいい天気だし。行こうか」
目的地を特に決めているわけではなく、のんびりとどこかへ向かって歩く。周りをよく見ると、鳥たちがまるで俺たちに話しかけるように鳴いている姿や、木から果物を取る少年たちの姿。改めて良い街だと思った。
「こう男の人と並んで歩くのとても久しぶりです。」
しばらく無言で歩いていた俺たちだが、耳馴染みのある声でリティアが話しかけてきた。
両親は病気で亡くなり、兄と二人暮らししていたが、兄は神の境地で限界まで膨張した血管が破裂し、内出血により他界したことをリティアからは聞いていた。聞くべきではないのかもしれないが、俺はずっと気になっていたことについて聞いてみることにした。
「あのさ、お兄さんってどんな人だったの?ずっと気になってたんだけど、聞いてなかったからさ」
「……。」
リティアは口を閉じてしまった。やはり、聞くべきではなかったのだろうか。
しばらくするとリティアは口を開き、兄ファルティアについて話してくれた。
「兄さんはね、とても優しい人だったんだ…」
近所のいじめっ子たちが、リティアのことをいじめている時に、助けてくれたこと。
そんな話を聞いているうちに俺は自然と涙を流していた。
俺の昔の話話したいのに何も思い出せない。
暮れかけている太陽の光は雲に遮られ、その後見えることはなかった。
「日も暮れますし、帰りましょう…。」
「そうだな」
そう言って俺たちは家に帰ることにした。
はいどうも!艶姫でございますぞ!
かなり長くおやすみを頂いて申し訳ございませんでした。
いち早くみなさんに見ていただきたくて、友達という名の担当の方に見せる前に投稿させていただきました。そう言ってもかなり日は空いたのですがね笑
それではこれからも頑張ってまいりますので!
応援よろしくお願いしまっす!!
それじゃ!おやすみなさい。