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引きこもり勇者がダンジョンマスターになったら  作者: ニンニク07
第六章  冒険者編
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グランドクエスト

 Bランク昇格試験を無事合格した翌日の朝、俺達は諸々の手続きのため、ギルドホールに赴いた。その道中にサクラが尋ねてきた。


「これで、晴れてBランク冒険者ですね。どうします?すぐに、この国を発ちますか?」

「う~ん、どうしようか……」


 Bランク冒険者になると国境を楽に突破できる上宿屋などで値引きなど様々な恩恵がある。国外にいる魔王ルキフグスを倒すための準備段階として、Bランク冒険者を目指した以上それが達成されたので、もうセレン留まる必要はないだろう。


 ネックだった金の方もポイズンシャークの討伐でかなりの額の金が支払われるそうなので、心配はない。


「そうだな、時間も惜しいし、遠出の準備が整い次第セレンを出るか!」

「分かりました」

「わーい、遠足だ!!」


 その後、俺達はいつも通りギルドホールへ入る。だが、今日はいつもと何やら様子が違った。普段の倍以上の冒険者がおり、真剣な顔で何やら話し合っていた。最初は昨日の試験でユニークモンスターを瞬殺した俺達の噂でもしているのかと思ったが、どうやら違ったようだ。その証拠に俺達が来ても見向きもしなかった。


「何ですか、この人だかりは?祭りですか?」

「ねえ、見て! あそこに凄い人が集まっているよ!!」


 クーアンが指差す方には、クエストボードがあり、その前には多くの冒険者が集っていた。


「気になるから、ちょっと見てくるか!」


 小柄な体形を生かして、上手く人混みを掻い潜った俺達は、クエストボードを視認できる位置まで接近し確認した。


グランドクエストのお知らせ


難易度  三つ星(Bランク以上の冒険者限定)

依頼内容 魔王ルキフグス軍との戦闘

報酬   最低50万ワイア以上、さらに成果に応じて最高で1000万ワイアまで支払われる予定です。なお、戦地までの旅費や食料などのその他諸々の費用は全てギルドが手配します。


*第三魔王ルキフグス討伐のため、大規模な連合軍が結成される運びとなりました。そのため、冒険者ギルドも各国から要請で、この戦争に参加することに決定致しました。

*魔王討伐は、各国から選りすぐられた精鋭部隊が行いますので、皆様には魔王が率いる魔物の軍勢の殲滅をして頂きます。

*なお、本クエストの発注元はローレンス王国になりますので、死傷した際には国から保険金が本人またはご家族に支払われます。



 ……ギルドが何やら画策していると聞いていたが、まさか、それがルキフグス討伐だったとは、何だか先を越された感じがする。


 どうしたもんかと、悩んでいるとクーアンが何やら心配そうな顔で尋ねてきた。


「どうするの?マスター?」

「何がだ、クーアン?」

「だって、魔王に女になった呪いを解いてもらうんでしょう? でもこのままじゃ、もしかしたら魔王に会う前に魔王が人間達に倒されるかもしれないよ?」


 クーアンの心配は最もだが、相手は魔王だ。きっとただの人間では手も出せないだろう。それは多くの魔王と実際に戦ってきた俺だからこそ言えることだ。


「いや、クーアンこれはチャンスだ。ガブリエル曰く、ルキフグスの元には多くの魔物がいるそうだ。それを聞いて当初は暗殺者のようにこっそり忍びこむことつもりだったが、このクエストを見て考えが変わった。なんせ、雑魚の相手を連合軍がしてくれるからな」

「なるほど、戦争のどさくさに紛れて、こっそり魔王に近づくんだね!」


 クーアンは無邪気に笑った。どうやら賛成のようだ。あの日記を見てからというもの、クーアンの喜ぶ姿をどうにも素直な気持ちで見れなくなったが、今回ばかりは信じてもいいだろう。


「では、クエストを受けるのですね?」

「ああ、なんせ、旅費や食費を払ってくれるそうだからな。まずはクエストに便乗して、現地に着いたらどうするか考えればいいよ」


 二人も賛成のようなので、これで決まりだな。俺達はクエストを受けるため、そのままカウンターに赴いた。


 今日は、グランドクエストを受けるためか、多くのBランクと思われる冒険者が並んでいたので、いつもよりも時間がかかった。


「お! 来ましたねバベルちゃん! 昨日の件聞きましたよ。ユニークモンスターを瞬殺なんて信じていない人もいますが、私は信じていますよ!」


 早速、いつもの受付のお姉さんが明るい表情で出迎えてくれた。


「ありがとうございます。それで、今日はBランク昇格の手続きとグランドクエストの受注に来たんですが……」

「はい、Bランクの昇格の方は準備できています。これがBランク冒険者のギルドカードです」


 お姉さんは俺達全員に銀色のギルドカードを配った。ちなみにCランクの時は銅だった。なので、恐らくAランクは金だろう。


「ありがとうございます。それで、グランドクエストの方は?」

「この街からルキフグスが拠点にしている帝国南部まで徒歩で一か月はかかります。連合軍集結の日取りもその頃なので、明後日にも出発して頂きますが、よろしいですか?」


 ビックリするほど急だが、早いに越したことはない。俺は二つ返事で了承した。


「では、準備を整えて、明後日の昼前にギルドホールの御越しください。お待ちしています」


 お姉さんはここまで言うと、今までの真剣な顔を止めて少し砕けた感じで話した。


「それにしても私の目に狂いはなかったですね。私はバベルちゃん達を一目見て、これはメイル様級の大型新人だと予感したんですよ!それで、上に掛け合って特例で免除を要請したんです。ただ、今回の試験はちょっと事情があって、厳しいモノになったで、合格するのは無理かなと思ったんですが、まさか、ユニークモンスターを倒すとは、本当に大型新人だったんですね!」


 いや、あんた最初に会った時、俺達を目の仇にしていただろうと思ったが、宿を教えてもらったりと、このお姉さんには色々と世話になったので、余計な事は言わない方がいいだろう。


「「「色々とありがとうございました!!」」」

「うん、うん、これからも頑張ってね」


 後ろに多くの冒険者が並んでいたため、俺達は手短にお姉さんにお礼を言い、カウンターを離れた。


 今日は混んでいるため、そのまま建物を出ようとした矢先、突然見知らぬ冒険者達が前を塞いで話し掛けてきた。


「おい! あんたらか、昨日の試験でユニークモンスターを倒したっていうほら吹き野郎は!」

「うっそ?! こんなおチビ達が倒したのー、ありえない!!」

「何でも、六日でCランクからBランクに上がったようですわ!」

「可愛いからって調子乗るんじゃないわよ!!」


 立ち塞がった冒険者は四人組の女性の冒険者だった。何だ?こいつらはと思っていると、四人の中でリーダーと思われる女性が名乗り出た。


「私は、セレン一の美女Bランク冒険者パーティー エメラルドのリーダー、イリンよ!」

「はあ、私の名前はバベルと言います。パーティー名はまだありませんが、このパーティーのリーダーです」


 歳は四人共、二十代前後でそれなりに顔が整っていた。ただ、ガブリエルやラファエル、エリザベスから見れば、大したことないように感じられた。 


「私達は、あんたらみたいな、ガキとはくぐってきた修羅場の数も男を惑わす美貌も違うのよ!」

「ユニークモンスターを倒したなんて、嘘をつくんじゃないわよ!」

「つまり、調子に乗るなって言ってるの分かる?」


 どうやら、この人達は俺達に嫉妬して釘を指しに来たようだ。中身が男の俺に、美貌だなんだ言われても良く分からないが、こういった連中に絡むと碌な事にならないのは知っているので、無視してとっとこの場を離れることにした。だが、


「そうだぞ!てめらぁ、ここはガキなんかが来るんじゃねぇ!!」

「どうせ、可愛い顔で誑かして合格したんだろう!」

「てめえらのような、能力のない新人を見ると吐き気がするんだよ!!」

「貴族様はおとなしく、お屋敷で暮らしていればいいんだよ!!」


 エメラルドの面々に続いて、騒ぎを見ていた他の冒険者達も一斉に俺達を中傷した。どうやら、彼らは何か勘違いをしている様子だった。


「違う!! 私達はちゃんと実力でBランクになった!」

「そーだよ!ちゃんとあのサメ倒したもん!」


「なんだい、いくら可愛いからって、嘘はいかんぞ!」


 サクラとクーアンが反論するも、冒険者達は聞く耳を持たない。そのため、サクラ達の雰囲気が少しずつ殺気を帯びたものへと変わっていった。このままでは、暴れることが厳しく禁止されているギルドホール内で二人が大暴れするかもしれない。


 それに、これから仲間になるかもしれない人達と今ここで、乱闘になったらさらに仲が悪くなることは明白だ。そう思った俺はクーアンとサクラの手を掴んで逃げるようにギルドホールを出たのであった。





 バベル達が逃げるように、去っていった後、ギルドホールに残ったBランク冒険者達は口々に不満を述べた。


「けっ! 何だよあのガキ共、本当にあいつらがポイズンシャークを倒したのかよ!」

「ジンダイさんが言うにはそうらしいが、いくらあの人が言ったからって本当かどうか怪しいな」

「あの人、小さい子には甘いから、あの子達に手を貸したかもしれない……」

「試験を受けた他のCランク冒険者達は死人こそ出なかったが、ほとんどが重傷を負ったらしいぜ、そんな中、ぽっと出のあの子達がユニークを倒したなんか信じられるかぁー!」


 ここで不満を口にしてる者の多くが、以前から次々と来る、素人新人冒険者達を敵視していたが、一人前であるBランク冒険者であるため、何とかその不満を己の内の中に押しとどめていた。


 だが、たった六日で自分達に追いついたバベル達の存在を知り、一気に不満が爆発した。


 バベルは自分達は商人の子供とギルドに話していたが、冒険者の耳までは届いていない。そのため、ここにいる冒険者の多くが、身なりが良いバベル達のことを、冒険者が一番嫌悪する、道楽のために冒険者になった貴族だと勘違いしていた。


「だから、貴族は嫌なんだよ!親の権力と金さえ、あれば、簡単にBランクに上がれるからな」

「私達がどれほど苦労して、この地位に辿りついたのか知らないのか!」


 先ほどの受付のお姉さんがこの話を耳にしていれば、弁明してくれたかもしれないが、常に仕事に追われている彼女は知る由もない。


「まあ、一緒にグランドクエストに参加するんだ。本物の戦いにちびちゃう所を見せてもらいましょう」


 Bランク冒険者の中でも、特にバベル達を敵視していたエメラルドのリーダー、イリンが自信たっぷりに言った。


 彼女達がそこまでバベル達を嫌うのは、バベル達が将来的に、セレン一の美女パーティーである自分達の地位脅かすほどの美女になるのではという強迫観念の方が大きかった。出る杭は打つ。そのため、ここぞとばかりバベル達の悪評を広めていたのだ。


 こうして、バベル達の知らないところで、少しずつ、冒険者との間に溝が生まれていったのである。


 


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