Bランク昇格試験
ここしばらくは時間に余裕があるので、1日に複数回、投稿してみようと考えております。
今後も応援して頂ければ幸いです。
Bランク冒険者昇格試験当日、早朝にも関わらず、ギルドホールには多くのCランク冒険者が集まっていた。
「ではこれより、Bランク昇格試験の内容をご説明を致します!」
集まった冒険者達の喧騒をかき消すように、いつもの受付のお姉さんがクエストボードの前で、受験者達に聞こえるように大声を出した。
「昇格条件は簡単です。これから掲示する三つのクエストの内、一つを今日中に達成してください。達成できた方は明日からBランク冒険者の仲間入りです。では、皆さん頑張ってください!!」
お姉さんがそう言うと、別の職員がクエストボードの中央にいつもよりも数倍は大きな紙をクエストボードに貼った。そして、俺を含め冒険者達はそこに書かれていた課題を読んだ。
Bランク昇格特別クエスト
依頼内容、1 ユニークモンスター ポイズンシャークの討伐(ポイズンシャークはシッパの沼地に住む体長十メートルを越す毒系のモンスターです)
依頼内容、2 希少植物 ハヤクイソウの納品(ハヤクイソウは山岳地帯に住む飛龍の巣の中に咲く草の事です)
依頼内容、3 一人で魔物五十体以上の討伐
*受けたいクエストが決まった方から、カウンターに御越しください。その際、詳しい説明をいたします。
「……こんなのクリアできるか!!」
「いつもはこんなに、難しくないぞ!!」
「これ、Aランク冒険者の試験じゃないのか!?」
貼り出された課題を見て、集まった受験者達から怒号が響いた。冒険者歴五日の俺達ではいまいち理解できなかったが、怒り狂う冒険者の様子を見る限り、今回の課題はどうやらCランク冒険者にとってかなり無謀なものらしい。
だが、俺達にとってはどれも楽なクエストのはずだ。俺はサクラとクーアンと顔を見合わせて、どれにするか話し合うことにしたが、その直後に聞きなれた声に呼び止められた。
「よっす!バベルちゃん元気にしてた~?」
呼び止めたのは、おなじみのルーク達三人組だ。俺達はお互いに軽く挨拶を済ませて、何故受験者達が怒り狂っているかを尋ねた。
「それは、今回のギルドの試験内容が余りにも高レベルだからだよ」
「それはどういうことですか?」
親切にもルークは順を追って詳しく教えてくれた。
「気づいているかもしれないけど、今この街には若い新人冒険者があふれている。彼らの大半が今まで訳あってBランク冒険者の昇格試験を受けて来なかったんだけど。先日からある噂が立って、急きょBランクに上がる必要が出てきたんだ!」
「どういった噂ですか?」
「詳細は分からないが、どうやらこの国自体が近々冒険者ギルドに対して大規模クエストを発注するみたいなんだ。国が発注するって言うことは、その分報酬も凄いと思うんだけど、困ったことに噂ではそのクエストの受注条件がBランク以上らしいんだ」
なるほど、つまり巨額の報酬目当てで、今までCランクに留まっていた奴らが、一気に昇格試験に押し寄せたのか。そして、理由は分からないがBランク冒険者を増やしたくないギルドはその事を見越して課題の難易度を釣り上げたと考えるべきだろう。
「でも、最近注目されているバベルちゃん達でもこれは無理だ。ギルドの方は君たちに特例措置を与えてようだけど、試験内容までは優遇してくれないみたいだね。例の噂がひと段落したら難易度は下がると思うから今回は諦めたほうがいいね。他の連中も諦めるみたいだし」
ルークが言うように、他の受験者は諦めムードで誰一人としてカウンターに向かわない。まあ、人が少ないに越したことはない。
「クーアン、サクラ、もうめんどくさいから俺が決めるけどいいかな?」
「いいですよ」
「オッケイなの!」
「!?……ちょっと、話し聞いていた?バベルちゃん何考えているの?」
慌てるルーク達を無視して、俺達は一番乗りでカウンターに向かって歩み出した。少女三人が無謀にも挑戦すると思ったのかギルドホール中から、嘲笑めいた声が聞こえてきた。
「ちょっと、あの子達何考えているの?」
「愚かだな。見た目は可愛いが、頭はポンコツのようだ」
「あれって最近話題のパーティじゃん!でも流石に今回は無理だな」
そのような声を無視して、俺はカウンターで待っていたお姉さんの元へ向かった。
「来ると思っていましたよ、バベルちゃん達、公には言えませんがギルドは君達に期待しています」
お姉さんは、周囲に聞こえないように小さく言うと、場所など詳しい説明をしてくれた。
「「「では頑張ってください!!」」」
手続きが完了すると、ギルド中の職員が一斉に声援を送ってくれた。だが、声援を聞いても他の冒険者はなお躊躇していた。
そんな奴らを尻目に、さっさとギルドホールを出ようとした俺達を慌てた様子で俺の肩を掴んで無理やりルークが止めた。
「おい!バベルちゃん達ちゃんと理解しているのか!?今回のクエストはただ難しいだけではない。Cランクでは高確率で死亡するだろう。それが分かっているのか!?」
恐らく心の底から心配しているのだろう。その気持ちは素直に嬉しいが、俺達に立ち留まっている暇はない。
「心配してくれて、ありがとう。でも私達には目的があります。今回のクエストの達成はそのための最短コースなんです!」
魔王ルキフグスに会って、元の体を取り戻すためにもこれが最善だと信じていた俺は、掴まれていた手を振りほどくと、サクラとクーアンを伴って外へ出た。
「おい、俺も行くぞ!!」
「あんな少女達が行くなら俺達も負けてらんねぇーー!」
俺の発言を聞いてか、出る直前に背後から、意気揚々とした冒険者達の声が聞こえてきて、ちょっとだけ俺は笑った。
「ここが、シッパの沼地か」
セレンを出て、半日の距離にあるシッパの沼地に俺とサクラとクーアンが着いたのは、お昼過ぎであった。
「おお!来たか、正直今回ばかりは誰も来ないかと思ったぞ!おっ!まだ小さいガキだな。でも冒険者に年齢は関係ねぇ、大事なのは、クエストを達成できるかの力があるかどうかだ!」
半径三百メートルほどのシッパの沼地の入口には四十代くらいの筋肉モリモリのおじさんが一人立っており、やって来た見た目は少女の俺達を見下さずに好意的に出迎えてくれた。
「俺の名前はジンダイ、Aランク冒険者だ!今回の試験の監督役でもある!これから詳しい説明をするぞ!」
そう言い、ジンダイと言うおじさんの説明が始まった。
「まずはポイズンシャークについての説明だ。ポイズンシャークはポイズンフィッシュが進化したと思われる魔物だ。特にこれといった特異な攻撃手段はないが、常に毒沼を泳いでいるため、地上からは容易に手出しできない。それと皮膚には触れるな、皮膚には強力な毒があることが確認されている」
ジンダイは次に、いかにも毒を吐き出しているように見える紫色に染まる沼を指した。
「見ての通り、この沼地は、常に毒を吐き出している。踏めば、即毒状態だ!よって回復魔法や薬で一々回復している余裕はないだろう。なので、沼地のあちこちにある蓮を足場にして戦え、同時にポイズンシャークは沼地のどこに潜んでいるか分からないから慎重にいけよ!最後にギルドでは討伐と聞いていたかも知れんが、無理に倒さなくてもポイズンシャークとの戦いで一定の成果を上げたと俺が判断すれば合格だから気楽に行け!では、諸君らの健闘を祈る!!」
そう言うと、ジンダイはブイサインをして、その場に座り込んだ。どうやら、俺達の戦いぶりをここで見学するようだ。
さて、どうするか?
「マスター、とりあえず私が先行して、敵を見つけますので、マスター達はここで待っていてください!」
パーティーの中で一番機動力があるサクラが先陣を切ること提案する、確かにサクラなら蓮の上をピョンピョン飛んで敵を見つけるだろう。だが、俺は待ったを掛けた。試してみたいことがあるからだ。
「試したいことがある。二人とも下がってくれ!」
サクラとクーアンは一瞬何か言いたげな顔になったが、すぐにおとなしく下がった。二人が下がったのを見計らって俺は、ジンダイに向かって質問した。
「ジンダイさん、あなたはさっき、無理して倒すことないと言っていましたが、別にあれを倒してしまっても構わないんでしょう?」
「ああ、確かにそうだが、ポイズンシャークはこの沼から動かないから危険度は低いが、地理的優位性から実際の戦闘力はユニークの中でもトップクラスという評価を受けている。いくらなんでもお嬢さん達には無理だろう」
明らかに無理だという顔でジンダイは答えた。だが、こういった態度でいてくれた方がこっちもやる気が増すのでありがたかった。
沼地の淵までたどり着き、振り向くとサクラもクーアンもそして一応ジンダイも何をするのか興味津々の様子だった。俺は三人の期待に応えるため、目を閉じて、意識を集中させた。そして、女神から貰った能力を発動させた。
「発動!世界!!」
眩い閃光が辺りを包みこむ、そして閃光が収まった後、観客、主にジンダイから驚きの声が聞こえてきた。
「!?……これはどういうことだ!お嬢ちゃん剣士ではなかったのか!これは一体何の魔法だ!!」
ジンダイが驚くのも無理はない、俺はアルカナ能力〈世界〉の地形変化を発動させて、毒と瘴気を放っていた沼地を一瞬にして、緑豊かな草原に変えたのだ。
そんな光景を見れば誰だって驚くだろう。しかも、今の俺は剣しか持っていない、杖を持たない魔法使いですらない奴がこんな真似をすれば、例えAランク冒険者でも驚きは隠せないだろう。
「いたぞ、ポイズンシャークだ!クーアン、サクラ、後は任せた!」
草原へと姿を変えた沼地のドン真ん中に、外見はホオジロザメに見える一匹のサメが、丘に上がった魚のように体長十メートルくらいの紫色の巨体をバタバタさせていた。
能力に驚いたのかポイズンシャークに驚いたのかは分からないが、サクラとクーアンは最初こそ驚いていたが、俺の指示を聞きすぐに行動に移った。
「先ずはクーアンが行くです!!クーアンの必殺技、太陽星を食らえ!!」
クーアンはアルカナ能力〈太陽〉を発動させ、掌に巨大な太陽のような火の玉を作り上げると、頭から尻尾まで真っ二つに切り裂かれたポイズンシャークに向けて投げつけて、その体を一瞬にして消し炭にさせた。
まだ、息の根はあるようだが、毒を持つ自慢の皮膚ごと焼かれてしまったポイズンシャークはもはやまな板の上ではねる無力な魚と変わらない。
そして、止めとしてクーアンの攻撃で接触しても大丈夫だと確信したサクラが鞘に刀を納めた状態で、黒焦げのポイズンシャークの元に向かって草原を一気に駆けた。
「秘技、居合、一文字斬り!!!」
必殺の居合斬りを完全に無力化されたポイズンシャークの顔面に放ち、その体を頭から尻尾まで真っ二つに切り裂いて、ポイズンシャークの息の根を完全に止めた。
「よし、やったぜ!」
「完璧な連携でしたね」
「クーアンもベストだったと思う!」
戦闘開始から一分にも満たない超短時間で、単独で街を破壊する危険生物であるユニークモンスター、ポイズンシャークを撃破した俺達は初めて三人で、ハイタッチをして、互いの健闘を讃えあった。
「……俺は夢でも見ているのか?」
だが、ジンダイは強敵であるはずの、ポイズンシャークが目の前で瞬殺されたのを見て間抜け面を晒しながら、ポカンと口を開いていて何やら呟いていた。
「勝ったよ!おじさん合格だよね?」
そんな、ジンダイに対して、俺は夢だった俺tueeeがついにできたので、少し調子に乗って全力で少女に成りきって満遍の笑みで合否を尋ねたのであった。




