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引きこもり勇者がダンジョンマスターになったら  作者: ニンニク07
第六章  冒険者編
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幼女日記

 冒険者になって五日が過ぎた。色々あって、特例で明日、俺達はBランク冒険者昇格試験を受ける。そのため、今日は一日中自由行動ということになったので、サクラもクーアンも街に繰り出していた。


 こういう時のお決まりは皆一緒に行動するはずなのに、どういうわけか、二人とも俺と一緒に行動したがらない。朝早くに、サクラは街で買い物、クーアンは買い食いすると言って戻ってすぐに部屋を出ていった。



 仕方ないので、俺は今日は一日中宿に引きこもって寝ることにした。正午過ぎに空腹で起きた俺は、天井のシミを数えながら今日までのことを振り返った。


 セレンに来て、初めの頃は一文無しで、街はずれで野宿して俺たちだが、今はクエストをいくつかこなした結果知り合ったギルドの職員に紹介されたニワトリ亭という宿を拠点に生活している。


 ニワトリ亭はパーティー単位で冒険者を泊めてくれるため、三人共同の部屋になったが、朝食付きで一泊、五千ワイアとかなりお得だ。


 女の子と同室というのは最初は少し抵抗があったが、毎晩無邪気に枕投げをしてから寝るサクラとクーアンの姿を見ているうちに、そういったものは薄れていった。


 日本では引きこもって、不摂生な生活を送っていただけに、今の生活はかなり充実しているように感じる。クエストという自分がやりたい好きな仕事を選び、達成すれば即日現金を手に入れられるため、やりがいというか楽しさを感じられたのだ。


「ふ~生きているって感じがする~!」


 ベットに横になった俺は、充実した毎日にただただ満足していた。手足を伸ばしてストレッチをする、そんな時、クーアンが使っているベットの下に赤い本らしきものがあるの見つけて拾い上げた。


「……?なんだこれ?」


 ページを開けてみるとこの世界の言語でこう書かれていた。


冒険者生活一日目


 つまりこれはクーアンが書いた日記ということだろうか。同じ部屋にいるのに気づかなかったとは。人の日記を見るのは悪いことだと思いつつも俺は好奇心に負けて日記帳を最初から読んだ。



初めに


 塔を出る時に、ゴブリンキングからこの本を渡された。日記を付ければ賢くなると言って渡してきた。日頃から賢くなりたいと言っているので、恐らく本人は善意で私にこの日記を手渡したのだろう。低脳のゴブリンにしては気が利いている。日記には自分の体験を振り返ることができるなど、様々なメリットがあるからだ。


 私は人を誑かす妖狐だ。そのため、普段は周囲の者達に愛されるキャラを演じるため、わざと精神年齢の低いキャラを演じているが、正直言っていつもこのキャラを演じていてはでは本当の自分を見失ってしまう。そのため、せめて日記の中くらいは本当の自分をさらけ出したいと考え、ストレス発散のために私は日記をつけることにした。



冒険者生活一日目


 結論から言うとマスター貧乏だった。寝るために必要な金がないそうだ。塔を出る時にしっかりと準備しておけと思ったが、私自身も人間の街に興味があったため、生活費について失念していたため、追及するのは止めて置くことにした。


 マスターは安い宿を探して散々街を彷徨ったあげく、店でパンを買って街を出て外で野宿すると言い出した。宿の従業員と交渉して値下げしてもらうなり、後払いするなりして、やりようは沢山あるのに、店先の看板の値段のみ見て無理だと判断して、決して中に入らなかった。前々から感じていたが、マスターは人見知りが激しい。私はこの先、大丈夫かと少し心配になった。



 冒険者生活二日目


 昨日絡んできたルーク達が、今日もしつこく絡んできた。顔は覚えた。今日からこいつらを三バカと呼ぶことにする。さて、流石に昨日のオーク戦で懲りたのか、マスターも三バカ達と一緒にクエストを受けるのを断った。


 それでも、しつこく絡んでくる三バカを可愛らしい少女の面を被って断るマスター、私はその姿を見てマスターには度胸はないが、役者としての才能があるのかもしれないと推察した。


 今日は、薬草採取、鹿の毛皮の納品、ゴブリン五体の討伐の三つのクエストを一気に片づけた。日暮れまでに三つとも完遂したが、ある問題が発生したことに私は気が付いた。それは移動時間がかかり過ぎると言うことだ。現地に着けばクエストそのものはすぐに片が付くが、その間の往復にかなりの時間を要した。


 マスターもこの問題には気付いたらしく、対策を考えるそうだ。いい案を出すこと期待したい。



冒険者生活三日目


 昨日一日で、三つものクエストを達成した我々はギルドの職員達の間でちょっとした有名人になっていた。そのため、早朝にギルドにやってきた我々に対して、ギルド職員が個別の面談をしてくれた。マスターは自分から踏み出すのは苦手だが、相手の方からアクションを起こされると、しっかりとした対応ができる。その点は評価に値するだろう。


 面談ではギルド職員から、出自や使える魔法の数や、修行期間などを問われた。マスターは事前に考えていた設定を話した。マスターは没落した商人の娘、私とサクラはその店の従業員の娘という設定だ。また、多少は魔法や武術に心得があるという設定と現在、泊まるところがなくて野宿していることも合わせて話した。


 その作り話を聞いた職員は、辛かったねと、おいおい泣きこれからは力になると言ってくれたので、マスターは街で一番安い宿を紹介してくれとお願いし、ニワトリ亭に宿泊する運びとなった。


 ニワトリ亭は質素な宿だが、野宿するよりはましだろう。宿の案内で時間を潰してしまったため、この日の達成クエストは一件のみとなった。


 マスターもそうだが、今回のギルド職員のように、私は騙され易い人間が大好きだ。見ていて、本当に腹がねじれるほど面白い。愚者は多い方がいい、この職員も今後は大切に扱ってやろう。 



冒険者生活四日目


 今日は、昨日の遅れを取り戻すべく、三つものクエストを受注した。一昨日のように全員で一緒にクエストを回っていては時間のロスであるため、クエストの受注こそはパーティーで申請したが、ギルドを出てからは全員別れて行動し、一人一つのクエストを片づける運びとなった。


 私が担当したクエストは、街はずれに住むゴブリン五体以上の討伐だ。本来はCランク冒険者の場合、パーティーを組んで挑むクエストだが、私から見れば何一つ問題ないクエストだ。速攻でゴブリン共を皆殺しにした。他のメンバーも同じくあっという間にクエストを片づけたため、お昼前には全員ギルドに戻ってきた。


 下位の二つ星クエストとは言え、半日で三つものクエストを片づけた私達は当然、ギルド職員や冒険者の注目の的となった。そのため、ギルド支部長が直々に出てきて、最低二十クエストを行って星を集めるという規則を免除して、すぐにBランク昇格試験をやってくれることになった。試験の日取りは元々予定されていた明後日ということになった。そのため、今日、明日は自由行動ということになったので、今日は一人で、今までできなかった街の散策をして一日を終えた。


 騙されやすいマスターは見ていて飽きないが、いつもマスターを見ていると少しだけ飽きてしまう。なので、定期的に街に繰り出しては、幼女を装って馬鹿な人間達の行動を眺めていた。幸い明日も自由行動だ、愚かな人間達の姿を見るために、街に繰り出そう。




 日記に書かれていたのは以上だ。俺は一度深呼吸して、それから日記を元の位置に戻した。そして叫んだ。


「誰だ、これぇぇぇーーーーー!!!!」


 黒っ!?クーアン真っ黒だよ!あの無邪気な顔の裏でこんな事思っていたなんて信じられない!あの無邪気な笑顔は演技なのかよ。


 俺は信じられなかった。それとも信じるしかないのか、その日の午後は俺は、クーアンの素顔についてずっと一人で悩んでいた。


「帰ってきたよーーー!」

「ただいま戻りました」


 夕暮れに二人同時に部屋に戻ってきた。クーアンはいつものように無邪気に笑っており、日記からにじみ出ていた腹黒さは一切感じられない。


「マスターは今日は何してたの~?」

「ああ、今日は一日中、部屋で寝ていたよ」


 笑顔で尋ねるクーアン、本当にあの日記を書いた人物と同一人物なのか。俺の中で疑念が膨らんでいった。


「どうしたの~?」


 上目遣いでこちらを除くクーアンに不覚にも少しドキッてしまった。いや正直に可愛いと言っておこう。しかし、あの日記を見て後では素直に受け取れない。


 こうして、今日を境に俺はクーアンに対して、少しだけ疑念を抱くのであった。 




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