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引きこもり勇者がダンジョンマスターになったら  作者: ニンニク07
第六章  冒険者編
64/87

国際会議

一部加筆修正しました

 別名、女神に愛された国、ローレンス王国の南方には、世界最大の軍事力を保有する大国エスカドラ帝国が存在する。だが、今、そのエスカドラ帝国を支える精強な軍隊の規模は全盛期の半分以下にまで縮小していた。


 その原因は、国内を占領していたアスモデウス、リリス、そしてルキフグスからなる三体の魔王とその軍勢との戦いに軍が疲弊してしまったからだ。


 十年にも及ぶ魔王との戦いで、有能な将兵の半数近くを失った帝国。先の見えない戦いに全国民が諦めのムードが広がり始めた時、ある奇跡が起きた。


「号外!号外!ローレンス王国にて勇者達が魔王リリス、アスモデウス、ベルフェゴールを撃破したぞ!!」


 帝都アーウィンを掛け巡ったその知らせは、絶望の淵にいた帝国市民を大いに奮起させた。そして、この日を境に帝国のいや人類の反撃が始まった。


 帝国は残存戦力を二つに分けて、占領されていたリリス領とアスモデウス領を解放すべく総攻撃を開始。魔王の配下であった多数のユニークモンスターと雑魚モンスターを多大な犠牲を払いながらも撃破に成功した。また、同時期に別の人類国家が連合を組み同じく占領されていたベルフェゴール領、バール領に対して攻撃を開始、見事奪還に成功していた。


 長年魔王に虐げられてきた国の国民は歓喜に沸き、勇者をそして英雄達を崇めた。そんな状況の中、帝国上層部はここで一気に蹴りを付けるため、エスカドラ帝国帝都アーウィンに近隣諸国と冒険者ギルドの上層部を招集した。


「本日は遠いところからお集まり頂きありがとうございます。これより対ルキフグス戦争のために意見交換を始めようと思います!また今会議の司会は私、帝国宰相ネルヴァが務めさせて頂きます」


 宮廷内にある大会議室にいる様々な国からの要人達を前に堂々と司会を務めるのは帝国宰相のネルヴァという中年の男性だった。この会議の成功次第で、帝国のいや人類の運命が決まるということもあり、事前にネルヴァは入念な準備をしてきた。


「では、早速本題に入りましょう。これから、我々は第三魔王ルキフグスに総攻撃を仕掛けます。諸国の皆様には戦力と資金や物資を提供して頂きたい」


 前置きもなく、いきなり本題に入るネルヴァ。だが、当然、反対する国もある。そういった諸国の要人達が一斉に反対の声を上げた。


「ネルヴァ殿、突然呼び出したと思ったらこれは何ですか!戦争するから資金や戦力を提供せよとはあまりにも無礼ではないですか!!」

「然り、そもそも我が国はすでに帝国に多大な支援を行っている。これ以上の支援は国家の存亡にも左右しかねない」

「そうだ!そうだ!」


 ネルヴァの提案に真っ先に反対したのは、これまで魔王の侵攻とは無縁の国家の要人だった。特に魔王との戦争の間、後方支援に徹していた世界第二位の強国フラン共和国の特使であるミール大臣はひときわ大きな声で反対意見を述べた。


「左様、そもそも何故帰国達は魔王と敵対するのだ?我が国のように友好関係を築けるほど、外交能力が欠如しているのか?」


 ちなみにフラン共和国は全世界で唯一魔王と取引して、自国内に魔王のための特別特区を設定している国家だ。そのため国内には魔王との戦争そのものに対して反対意見を持っている者もいる。


 このように魔王からの被害と無縁だったフラン共和国などの国は、今までは魔王と戦っている国が敗れた場合、次は自国に危機が及ぶと考えていたため、対魔王戦のため後方支援としてかなりの支援を行ってきてきたが、勇者達のおかげで魔王の半数が倒され人類側の勝利が見えてきたため国家戦略の変更を行った。


 魔王出現前に世界の覇者であった帝国は、この戦争で多くの戦力を失ったため、魔王に勝利しても戦後は没落は免れない。そう考えて魔王の戦いに無縁であったフラン共和国を始めとする国家は、帝国に代わり次の覇権国家は自分達だと考え始めた。そのため、魔王退治は勇者や他の国家に任せて全魔王が討伐されるまでは、できるだけ自国の損耗は少なくしようとする方向に舵を切ったのだ。


「貴国は魔王による人的損害はゼロではないか!」

「その分支援をしてきた!」

「命は金で賄えないぞ!!」


 当然、帝国を含め、魔王によって甚大な被害を被ってきた諸国もその事は熟知していた。そのため、会議場は、帝国を中心とする魔王と戦争している国家と共和国を中心とするそうではない国家の二つに分かれ大論争となった。論争は白熱し、終いには会議に関係ないことまで言い合う始末だった。


(やはりこうなったか、共和国のごろつき共め、我が国の疲弊ぶりを見て調子に乗っているな)


 その光景を見て頭を抱えるネルヴァ、特にまだ魔王が残っているにも関わらず、次の人類同士の戦いで頭が一杯な国の存在はネルヴァにとって頭痛の種であった。


「諸君、お静かに!!」


 ネルヴァは手を叩いて、言い合う要人達を黙らせた。


「共和国のミール大臣を初めとする国家の内情も理解できる。君達の援助がなければなければ戦争は続けることすらできなかったその点に関して礼を言いたい」


 ここで、ネルヴァは頭を下げ、支援してくれた国々に謝辞を述べた。今後はどうなるか分からないが、現段階では唯一の大国の宰相が頭を下げるなど異例な事だ。このネルヴァの姿を見て、言い合っていた要人達の頭も少し冷えた。


「で、具体的にどういった支援をすればいいのだ!」


 冷静になったフラン共和国のニール大臣がネルヴァに尋ねた。


「その前に、諸君に知らせた情報がある。リリア王女どうぞ!」


 ネルヴァは事前に打ち合わせていたローレンス王国のリリア王女に発言を促した。この大論争の会議室において発言を控えていた二人の女性がいた。その内の一人ローレンス王国の代表であるリリア王女がついに口を開いた。


 ローレンス王国自体は中規模な国である、しかし、女神に愛された国であるため人類の精神的な支えでもある国だ。女神の使いである天使の血を引くと言う王族はこの世界で最も尊ぶ血筋であり、多くの国家の尊敬を得ていた。軍事力に熱心な諸国が勇者の召喚や育成に一切口を出さなかったのは、その血筋に畏れを抱いていたからに他ならない。


 つまり、ローレンス王国王家こそが、この世界ガイアの王家と言っても差し支えない。まだ成人前女性とは言えリリア王女の声に耳を傾けない不届き者はこの場所にはいなかった。


「皆さん、聞いてください。先月、勇者様方は東方にあるカナン大森林にいる第二魔王ベルゼブブの討伐に向かわれました。大天使ラファエル様とウリエル様もご同行されているため、勝利は確実です!」


 この知らせを聞き、声は出なかったが、会場は驚きと喜びに満ちた。そして、勝利は目前だと誰もが感じた。皆の顔が笑顔になったのを確認したリリア王女はネルヴァとの約束を果たすため、意を決して自分の思いを告げた。


「皆さん、この知らせを聞き、まだ勇者様のお力に頼るおつもりですか?勇者様方はこれまでにリリス、アドラメレク、バール、ベルフェゴール、アスモデウスと五体もの魔王を滅ぼしてきました。ですが、私達の撃破数はゼロです。不甲斐ないとは思いませんか?せめて一体くらいは倒さないとこの世界に住む人間として女神様に顔向けできませんと私は思います!当然、我がローレンスからも最大限の戦力をこの作戦に参加させます。女神の名のもとに共に魔王を打倒しましょう!!」


 リリア王女は初の国際舞台の演説が無事終わったとほっとした気持ちで席に着いた。短い演説ではあったが、リリア王女の演説は聞いていた要人達の心を動かした。その結果、会場からは一言も声が発せられず、皆顔を伏せて静かにしていた。


 ローレンスの王族に女神の名前を出されれば、この世界に住む人間であればそれがどんな無茶な内容であっても一考せざる負えない。それだけ女神とローレンス王国の権威は凄まじいものがあるのだ。


「……なるほど、確かにリリア王女の言う通りだ。一人くらい魔王を倒さなければ女神様から不甲斐ないと思われ見捨てられてしまうかもしれん」


 リリア王女の発言が終わると最初の声を出したのは、先ほどまで大反対をしていたニール大臣だ。しかしニール大臣は、今は静かに腕を組み真剣に出兵に対して考えていた。


「だが、度重なる戦争で兵士の数が足りないのも事実だ。その部分はどうするのだ?」


 今度は、戦争に賛成だった国の要人が声をあげた。その点に関しては元々ネルヴァにはある考えがあった。


「そのために、滅多に表舞台に出てこないこの方にわざわざ御越し頂いたのです!ホンゴウ殿、事前にご説明させて頂いた冒険者を投入するとういう提案について答えを聞かせて頂きたい」


 会場の全ての目が、会議室の隅の方にいた一人の美女に向けられる。リリア王女と同様にこれまで一言も発しなかったその美女は、女性でありながらその美女の身長は二メートル近く、目も髪も黒で、とてもスレンダーな体形だった。歳は三十代くらいだが、本当に目を引くのは体ではなく彼女が背中に背負っていた一本の大太刀だ。武器そのものも珍しいが、各国の要人が集まるこの場所で武器を所持していることが異例なのだ。


 だが、それを咎めるものは一人もいない。なぜならば彼女こそ、前回の勇者の直系の子孫の一人だと噂される、現冒険者ギルド総本部長にして、現在ただ一人のS級冒険者、世界最強の戦士ミカグラ・フジ・ホンゴウであったからだ。


 誰もがひれ伏す肩書だ。だが、実はそれすら彼女の表の顔に過ぎない。世界の頂点が集うこの会議ですら、彼女の真の正体を知っているものは一人としていない、彼女こそが四大天使のリーダー大天使ミカエルだということを。


 冒険者ギルドにBランク冒険者が十万人以上所属しているが、彼らは常に戦いに明け暮れているので、各国の軍隊から見れば精鋭と目されていた。さらにその上を行くAランク冒険者も五百人近く所属していた。世界最強の軍隊を擁していた全盛期の帝国軍ですら。Bランク冒険者クラスの兵士は五万人弱、Aランククラスなどは数えるほどしかしない。


 つまり、この女、ミカエルに扮したホンゴウこそが、世界最強であると同時に世界最強の軍隊を持っているといっても過言ではないのだ。そのホンゴウだが、普段は未開領域の探索に一人で赴いているため、滅多に表舞台に姿を現さない。その彼女をこの会議に参加させただけでもネルヴァの大殊勲と言ってもいいだろう。


 会議など煩わしいことだと考えている彼女は、普段は部下の副本部長にギルドの全てを丸投げしているが、それでも彼女の命令に口を挟める者などこの世にはいない。


 会場中の視線がホンゴウに向けられる、しばらくの間、ホンゴウは目を瞑り思案する。やがてゆっくりと目を開け言い放った。


「……よかろう、冒険者ギルドはこの戦争に全面協力する。今後の事は副本部長のヨハンと協議しろ!それと、その戦争には私も参戦する。相手は第三魔王だ。戦力は大いに越したことはないからな」


 ホンゴウはそう言い残し会議室を出て行った。ホンゴウはたった一言しか話さなかったが、その一言はこの会議の方向を決定付けた。帝国とローレンス王国そして冒険者ギルドが全面協力する作戦に参加しなかければ、その後の国際社会から爪はじきにされることは確実だからだ。


 こうなることを見越して、リリアとホンゴウに事前に協力を要請していたネルヴァの作戦勝ちだろう。ネルヴァは心の中で、二人の女性に感謝し、詳しい内容を詰めるために、司会を続けた。

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