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引きこもり勇者がダンジョンマスターになったら  作者: ニンニク07
第二章 魔王襲来編
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メイル・セレン

 今年十七歳になった彼女の名前はメイル・セレン、ここセレンの街の領主の娘である。セレンの街はローレンス王国の東の最果てにあり、この街から見える巨大な山脈にはあの恐ろしき魔王の一体、第八魔王、貪欲のアドラメレクが根城にしている。故に、このセレンは魔王との戦いの最前線の街と呼ばれているのだ。


 そのため、魔王を倒して有名になろうと国内外から多くの冒険者達がセレンに集まった。そしてメイルもBランク冒険者として、この街を襲う魔物達と日々戦っているのである。


 一ヵ月前についに王都に勇者が召喚されたが、残念ながら実戦経験が皆無だったため、王都で修行をしていてこちらには当分派遣されてはいない。だが問題ない、勇者に頼らなくても、メイルやセレンの冒険者は自分達のみで魔王を一人残らず駆逐してみせようと息巻いていた。


 そんなメイルの耳に、ここ最近おかしな話飛び込んできた。山脈とは反対方向の王都がある方角の森林の中に、突如として塔のような巨大な建造物が現れたと言うのだ。


 目撃者の商人によると、その塔には扉が一つだけついており、扉を開けると不思議な事に、中は広大な草原が広がっていて、ゴブリンやオーク等の魔物がいたらしい、その商人は危険な臭いがしたため、すぐに扉を閉め立ち去ったそうだ。


 付近に建築する人影は見かけなかったが、魔物がいる以上見過ごすことはできない。セレンの領主でメイルの父が議長を務める街の防衛委員会はこの塔を魔王によるものと断定し、調査隊を送り込むことにした。Bランク冒険者が中心となるこの調査隊にメイルも志願し、Bランク冒険者総勢十二人からなるパーティーは不気味な塔を目指して街を出た。


「しかし、メイル様が自ら行かなくても、俺達がぱ~っと行って調べてきますぜ」


 気軽にメイルに話しかけるこの男は、メイルと同じくBランクの冒険者ガゾンだ。今回の調査は領主の娘としての任務だとメイルが言い張ったため、彼女がいつも組んでいるパーティのメンバーはここにはいない。ガゾン達他の十一人はメイルの父が彼女のために就けた護衛役も兼ねている。


「そうは言ってられない、もしその塔内部にモンスタースポットが存在していた場合、放って置いていてはセレンの街は山脈と謎の塔の前後から挟撃される恐れがある」


 モンスタースポットとは魔王が自らの眷属を生み出すために、設置する特殊な装置の事である。


「という事はやはり、謎の塔を作ったのは、あの山脈に住む魔王アドラメレクですか?」

「間違いないだろう。魔王アドラメレクの配下にはゴブリンやオークがいる。塔という要塞でモンスタースポットを守りながら、我々の後方に戦力を増強する考えなのだろう」


 メイルのこの考えはセレンの防衛委員会と一致している。現在セレンの街と魔王の軍勢は一進一退の攻防戦をくり広げている。中々攻め落とせないセレンを落とそうとする魔王の狡猾な作戦だと考えられていた。


「そういえば、お話しは変わりますが、王都に勇者が召喚されたそうですね。もしかしたら私達、冒険者はお役御免になるかもしれませんね」


 メイルとガゾンの会話に割り込んできたのは、十二人の中でメイル以外の唯一の女性冒険者リサである。


「聞いた話によれば、勇者は全員戦闘のせの字も知らないド素人というではないか、リサさんそんな奴らに期待はしないほうがいいですよ」


 メイルもリサも十分美少女だが、リサの方がメイルよりも三つ年上で大人の色香があるので、街の冒険者の間では、リサの方が若干人気があった。この場にいるガゾンも実はリサの隠れファンなので、リサの発言を擁護する。


「しかし、メイル様、勇者達は皆Aランク冒険者並みの魔力を持っているそうですぜ、今回召喚された勇者は二十人、それに対し王国にいるAランク冒険者は五人しかいないんですよ。時期が来れば勇者に手柄を横取りされますぜ」


 ちなみに一般人と駆け出しの冒険者であるCランクの魔力量を1とした場合、一人前と認められるBランクは2、人類の切り札と呼ばれるAランク冒険者そして異世界から召喚される勇者の魔力量は3である。そして、人類の多くの犠牲の果てに掴んだ情報では魔王達の魔力量は推定10以上だ。


 必ずしも、魔力量で勝敗が決まるわけではないが、それでも魔法が発達した、この世界では魔力量の多さは戦闘力とみなされる傾向がある。


「Aランクと同等の魔力量では、魔王には遠く及ばない、そんな事お前だって分かっているだろう」

「でも、勇者達は女神様から特殊な能力を授かったと聞きますぜ」

「それなら、魔王だって特殊能力を持っているではないか」

「まぁそうなんですがね」


 自分でも分かっているが、メイルは例え勇者といえ、よそ者にこの世界の命運を託すのが嫌なのだ。自分達の世界は自分達で守るべきと考えていたがら同時にガゾンが勇者に希望を託すのも良く分かる。


 十年前に突如魔界から十体の魔王が現れた。そして十年で魔王による犠牲者は推定で全世界の人口の一割に及ぶ、このローレンス王国は幸いかどうか分からないが魔王アドラメレクにのみ攻撃を受けているが、酷い国では、同時に三体の魔王から攻撃を受けており、滅亡寸前だそうだ。勿論、すでに魔王によって滅ぼされた国もある。


「同時に攻めてくことはあっても、魔王達が互いに敵対していて、連携して攻めてこないのが唯一の救いだな」

「ええ、学者達も、もし魔王が連携して攻めてきたら、とうの昔に人類は根絶やしになっていると聞きますし」

「魔王が結束しないことを祈るのみだな、だが同時に我々からしたらこれはチャンスだ。セレンの敵は魔王一勢力分しかいないのだから」


 だからこそ、セレンの街の冒険者は戦うのだ。自分達が世界で初めて魔王を倒すために、


「勇者共が戦えるようになるまでに、魔王アドラメレクを我々の手で倒すぞ」

「「「「「おう!!!」」」」」

「はい!」


 三人の会話を聞いていた他の冒険者も声を揃えて決意を示す。


 魔王を倒すため、後顧の憂いは取り除かなくはいけない、冒険者達はこの任務の重大さを胸に刻みながら、問題の謎の塔を目指した。


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