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引きこもり勇者がダンジョンマスターになったら  作者: ニンニク07
第一章 ダンジョン作成編
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ダンジョン作成

 さて、僕が王都から逃げ出して三週間が過ぎた。あの後、道中で商隊に遭遇した僕は、商人が僕が異世界に転移していた時に何故か着ていた学生服が欲しいと言ってきたので、代わりの服と金銭そして商隊に同行中の食事と交換したのである。


 代わりにもらった服はこの世界の農民が一般的な平民が着る服であった。なんだか、みすぼらしい恰好になってしまったが、黒い学生服は明らかに目立つのでこれでよかったのだろう。


 食事付きで馬車の荷台に乗せてもらった僕は、商隊と共に王国の東端にある街セレンに着き、三週間の間、過ごした商人のおじさん達と別れを済ました。商隊の人達はいい人ばかりであった。僕のことを、わけありの貴族と勘違いしたようで、必要最低限のこと以外は話しかけてこなかったからだ。だがこの街で暮らすとなると、他の者と積極的にコミュニケーションを取らなければならない。引きこもりだった僕にそんなことは不可能だった。


 なので、商人達が別れの際に憐みの眼差しでくれた僅かな食料を手にセレンの街を出る。


 そしてセレンの街から徒歩で半日ほどの場所の森の中に塔を建設したのである。一階層1000ポイントなので、9000ポイントを使用し、とりあえず十階層分、階層を増やした。外から見ると高層ビルくらいの高さになっていた。恐らく、すでにこの世界の建造物で一番高さであろう。


「もうこの塔自体がオーバーテクノロジーだな」

(何を言っていますか、まだたったの十階ですよ。これからもっともっと大きくしていくんです)


 ナビ子さんの目標は天まで届く高さだそうだ。夢が大きい。


(では、それぞれの階層のレイアウトをしましょう)


 ナビ子さんの指示通りに各階のレイアウトをする。ポイントを使えば、階層の広さを最大十倍まで拡張できることを知り、様々な工夫を施した。罠等のトラップもオブジェクトとしてポイントを払い設置できた。結果、中々面白いダンジョンになったと思う。


(マスターは念じれば、塔の中を一瞬で移動できます。とりあえず最上階である十階に行きましょう)


 ナビ子さんに急かされた僕は、心の中で念じ、最上階に移動する。


(おお、すごい辺り一面麦畑だ)

 

 ワープのように一瞬で移動した僕を待っていたのは、まるで黄金のカーペットのような麦畑であった。ナビ子さん曰く、ダンジョンの地形効果で採れる作物は普通に食べることができ、いくら取っても勝手にまた生えてくるそうだ。


 畑とか水田とかあったので、どうやら食料不足に悩むことはないようである。完璧だ。自給自足できる引きこもり生活を満喫できるぞ。


(では、この〈塔〉の能力で作られるダンジョンの戦闘時ルールについてご説明します)


 ナビ子さんが真剣な口調で語り掛けてきた後、脳内にこのダンジョンのルールが流れこんでくる。


 塔のルール

・マスターが認めた場合に限り、侵入者をゲストとして扱うことができる

・侵入者は各層に設定されたボスモンスターを倒すことで、「ダンジョンからの脱出」か「上の階層に進む」のどちらかを選択できる(ポイントを払うことで、選択肢を「上の階に進む」のみに設定できるキルモードも存在する)

・侵入者が入口の扉を開け、いくつかの条件のうちどれかを満たすと扉は消滅する。また外部からは入口が閉じてから一時間は入口の扉を開けることはできない

・侵入者によって倒されたモンスターは、倒されてから一時間後に自動的に復活をする。また破壊されたオブジェクトも破壊から一時間後に自動修復される

・マスター及びモンスターは戦闘中、侵入者がクリアした階層には転移することができない

・マスターがダンジョンの外に出る場合は一層目にある入口の扉から出る以外に方法はない

・侵入者がダンジョン内で死亡した場合、死亡した者の能力や装備をポイントに変換できる。また、変換しないでマスターのものとすることも可能である

・ダンジョンの物理的破壊は不可

・マスターが死亡した場合、ダンジョンとモンスターは消滅する

・マスターのダンジョン不在時に侵入者が最上階に達した場合、〈塔〉の能力は到達した侵入者に移譲される

 

 これだけ見るとかなりのチート能力と言ってもいい。つまり、ダンジョン内では、ほぼ無敵ということではないか。唯一問題なのは、能力そのものが他人に奪われる可能性があるということだが、それも僕がこのダンジョンから出なければ問題ない。


 勝ったな、僕はもうこのダンジョンから出ない。魔王やクラスの奴らが来ても、このダンジョンで向かい撃ってやる。魔王から世界を救う?異世界で冒険?ハーレム?そんなのどうでもいい、そんなことより身を守ることの方が重要だ。僕をいじめるクラスの奴らが手を出せないようにするのだ。このダンジョン内であれば、僕は最強だ。決して外には出ないぞ。


 そんな固い決意をした僕に対し、何故かナビ子が悲しい口調で話しかけてきた。


(では、マスターそろそろお別れの時です)

(ん、それはどういうことだ?)

(私は言わばチュートリアル用のガイドのようなもの、こうしてダンジョンができた今、役目は終わりなのです)


 僕は引きこもりだ、だから仲間はいらない。しかしそれでも、ここ最近、話し相手になってくれる存在が消えるのは寂しい。


(そ、そうか、お別れか)

(そう、名残り惜しいけど、これからマスターには一人で頑張って生きていくんです。シクシク)


 なんか、馬鹿にされている気もするけど、どうやらナビ子も悲しんでいるようだ。


(マスター最後に一言いいですか?)


 優しく問いかけるナビ子、僕はナビ子の最後の言葉を聞き逃さないように集中する。


(いつまでもあると思うな親と金)


 えっ、今こいつなんて言った?なんか耳を疑うようなことが聞こえてきたぞ。


(引きこもりを更生する魔法の言葉です、では、さようなら~)


 こうして、最後に毒を吐いてナビ子は逝ってしまった。それ以降ナビ子の声が頭に響くことはなかった。




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