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引きこもり勇者がダンジョンマスターになったら  作者: ニンニク07
第三章 勇者強襲編
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闘技大会

 津田がセレンの街の近郊にある大森林ヒィスの森にいることを知り佐伯集達、異世界をエンジョイする派が塔の入口の扉の前に着いたのは、朝倉楓達と魔王達との戦いが集結してから一日が過ぎたころであった。


「それにしても佐伯!本当にここでいいのか?聞いてた話と違うようだが」

「きゃはははは!!!確かにね、森なんか吹き飛んでいるからね」


 佐伯達が疑問を持ったのは当然だ。先の戦いでヒィスの森は跡形もなく吹き飛んでしまったのを彼らはまだ知らなかったからだ。


「おい!そこの奴隷!本当にここはヒィスの森があった場所か?」


 首輪をつけられた奴隷少女の一人がおびえながら無言で頷く。


 佐伯達一派はリーダーである佐伯集、西村春樹、寺尾修、ギャルであり佐伯達や校外の不良とつるんでいた内田キラリ、大村あすみの五人で構成されている。


 彼らは道中で計八人の奴隷を購入していた。若い女奴隷が六人と男の奴隷が二人である。地球では奴隷の風習は当然ないが、まだ文化的に発展していないこの世界にはそれがあった。故に、奴隷が購入できることを知った佐伯達は喜んで即座に購入した。


 ここにいる佐伯一派全員が男女は別であるがバスケ部に所属しており、部活を隠れみのし、学校の不良OBや他校の不良達と共に色々と悪事をやっていた集団だ。恐喝、強姦、薬など彼らの悪行を上げればきりがない。自分達にできない事などない、そう思っていた彼らだがクラス内の派閥競争では二位に甘んじていた。


 一位にいたのは、高木一派である。高木一派がクラス内で大きい顔ができていたのは、高木の父親が地元の大物政治家であったからだ。親の七光と言われてはいたが、高木はそれを上手く利用して自分の派閥の拡大を行っていたのである。


 一方で、佐伯一派は父親の権威を上手く利用していた高木を苦々しく思っていた。高木の政治手腕には目を背け、自分達も権威があれば高木のようにさらに好き勝手できると考えていたが、残念ながら佐伯達の親は高木と違って平凡な親であった。こればかりはどうする事もできない。


 だからこそ、佐伯一派は高木一派に遅れを取らないように、高木一派の後追いのようなことをしてきた。その一つが今まで接点がなかった津田に対するいじめである。高木が津田に嫌がらせををしている。あいつがやっているならこれは正しい事であり一種の流行だと思った佐伯達の行動は、元々は高木が個人的に津田にやっていた嫌がらせに拍車をかけることになった。


 高木よりも過激にそして凄惨にいじめをやることで、自分達は高木よりも目立ち、優位になると錯覚したのである。しかし、普通であれば誰かが止めるはずだが、運悪くこの時期はクラスのほとんどが高校最後部活の大会でいい成績を残せなかった時期であった。自分達も佐伯達のように誰かに鬱憤を晴らしたいと感じていたクラスメイト達は、佐伯達に続くように津田を蔑み、暴言と暴力を行った。その結果、津田は不登校となってしまったのだ。


「それにしても、津田も哀れだね。初めは高木が何故か派閥も使わずに個人的に嫌がらせをしていただけだったのに、ウチらがいじめを始めたら、高木の派閥どころかクラス中にいじめられたからね」

「全くだな、だが楽しかっただろう?あいつをいじめるの。そもそもあいつが弱いのが悪いんだ。それにあいつはクラスで唯一の帰宅部だ。部活で何があったか知らないが、王宮から逃げた時と同じように部活からも逃げたんだろうぜ」


 ちなみに佐伯達は勉強を理由に津田が親から部活を辞めさせられた事を知らない。


「ん?おい、とっとと、荷物を運べ、ウスノロが!」


 内田は男奴隷達に全員分の荷物を運ぶように命令をする。昼は荷物運び、夜は自分の欲求を満たすために使っているが、それはここにいる勇者全員がやっていることだ。ここでは奴隷に何をしても罪に問われない。地球にいた時は大人達にバレないようにパシリやいじめの対応にはそれなりに気を使っていたが、この世界ではそういう事は気にしなくても良い。まさに彼らにとって最高の場所であった。


「しかし、本当に魔王を倒したのだとしたら、津田の強さは相当なものだぞ!」

「!?何を言うんだ寺尾。あの津田が勝てるくらいだぞ。きっと見掛け倒しの雑魚に違いない!」


 心配する寺尾を他所に佐伯の意見に賛成である西村が佐伯に問う。


「だな、それで佐伯、この塔の中にいる津田を締めたあとはどうする?」

「そうだな、一度王宮に戻るか。魔王を倒した津田を連れて来れば、他の連中も俺らを見直すかもしれないだろう?そしてチャンスがあったら今度はあの姫さんをつれて脱走しようぜ、勇者である俺達のは誰も勝てないはずだろうし、王国側も財宝を盗んだ時と同じで何もしないだろうぜ」


 ここまでの道中で佐伯達は襲ってきた山賊をアルカナ能力で何度か撃退していた。そのため自分達には力があると己惚れていた勇者達は佐伯の提案を聞き、皆が鋭く光った。


「いいね、あの姫さんすごく好みなんだ。きっと楽しめるぜ」

「俺は姫さんよりも朝倉の方が好みなんだが」

「朝倉の両親は高木と同じでお偉いさんだからうかつな事はできないって言っただろう。だが、それも元の世界での話だ。機会があったら朝倉を捕まえてみるのも面白いな」


 男性陣の下卑た笑い声に負けないように女性陣も声を荒げた。


「はい、はい、その時はウチらも混ぜて、あの生意気な女が辱められて、泣き叫ぶところみたいから」

「私も!私も!」

「内田、お前はそう言って以前…名前なんだっけ?後輩の女子を痛い目を見せてあげてと言って俺達に差し出しただろう。また同じことをするのか?」

「何よあんた達だって楽しんだでしょう」

「「「それもそうだ。ぎゃははははははは!!!」」」


 笑い声が響く。まだまだ楽しみは沢山ある。そのためにはまず、津田を引きずり出さなければと考えて勇者達は下卑た笑いを出しながら塔の扉を開けた。




「よく、来たね佐伯君達。早速で悪いけど、これから僕の持つ五体の部下達と君達勇者五人とで、一体一の対戦をしてくれないかな?」


 体からあふれ出る怒りを抑えながら僕は佐伯君達に、一体一の勝負を申し込んだ。


 監視カメラで塔に近づくまでに、佐伯君達がどういったことを話していたかは把握している。


 魔王アドラメレクは確かに恐るべき敵であった。だが、山賊くらいしか相手にしたことがない佐伯君達がアドラメレクを貶めるような発言をするのは我慢できなかった。


 朝倉さん達とは接点はないが、ガブリエルですら称賛した朝倉さん達を目の前の佐伯君達が自分達のものできるとぬぼれているのにも怒りを覚える。


 そして極め付けは、僕がクラス中からいじめられる原因になったのがこいつらだということを初めて知ったことだ。確かに最初の原因は高木君の嫌がらせだが、それをおもしろ可笑しく広めたのは自分達だと言うではないか。僕は我慢の限界であった。もう彼らは容赦なく殺してしまおう。


 だが、気掛かりが一つあった。勇者が持つアルカナ能力だ。朝倉さん達ほど使いこなしてないと判断でき、彼らから感じる魔力も今の所、僕と比べると大したことはない。ちなみに、この場では大分抑えているから佐伯君達には気付かれてないようだが、今の、僕の魔力はあのアドラメレクよりも上だ。


 とは言え、油断はできない。それだけのアルカナ能力は脅威だ。


 だから、僕は彼らのアルカナ能力の把握と自治権を求めるヴァンパイア達の要求を聞くか判断するために、一体一の対戦を考えた。佐伯君達勇者は五人、流石にただの金卵モンスターでは不安だが、ネームドモンスターであればかなり安心できる。ブラド、エリザベス、サクラ、クーアン、ガイアールとこちらにはネームドモンスターがちょうど五体いる。なのでヴァンパイア達にはブラドとエリザベスの両方が勇者に勝利できたら要求を聞くと提案し、彼らは喜んでそれを受けた。


「津田ぁ!自分が何を言っているのか分かっているのか?お前如きが俺らに意見するな!」

「そうだぞ、ゴミムシ、お前は黙って俺らに締められて、王都まで引きずり出されればいいんだよ!」

「津田君、身分をわきまえな!」


 どいつもこいつも、僕を罵倒するばかりでこちらの話を聞こうともしない。仕方ない、僕は合図の右手を上げる。すると今まで客席に隠れ潜んでいたモンスター達が歓声を上げた。


「「「「ワァーーーー!!!!」」」」


 この闘技場の客席数は一万席だが、ここにはその十分の一にあたる千体ほどしかいない。残りの千体は各階の防衛についている。


「なんだ、こいつら、ゴブリンにオークか」

「あっちには、スケルトンもいるぞ」


 少し物足りないが、千体のモンスターの歓声に流石に驚いたようだ。


「僕のアルカナ能力〈塔〉はダンジョンを作る能力だ。そしてこのモンスターはダンジョンの防衛用に僕が生み出した者達だ。かなりギリギリであったが、こいつらを襲わせて魔王を倒した!」


 佐伯君達は驚きの余り口が開けっ放しのままだったが、しばらくすると正気に戻ったのか、再び高圧的な口調で佐伯君が話しかけてきた。


「それで?だからどうした、俺達にはお前よりももっと凄いアルカナ能力がある。数だけは多いようだが、良く見るとほとんどがゴブリンやオーク、スケルトンのような雑魚ではないか。こいつら程度であれば俺達も倒しているぞ」


 以外に冷静だな。僕は話を進めた。


「もちろん、あいつらは雑魚だ。今、あいつら全員で襲わせてもいいが、そうなった場合、こちらにかなりの犠牲が出るだろう。僕は戦力を抑えたいんだ。だから、あいつらよりも少しばかり強いモンスターを五体出すから、そっちの勇者五人と一体一で勝負してくれないか?」


 仮に倒しても復活するがな。心の中でそう思いながら一気に畳掛けた。


「後ろを見てみろ、この塔は一度入ると僕の許可なしには出ることができない。だが、僕の提案に乗って勝負を受け勝ったらここから出してあげる上に、君達の言うことも何でも聞こう。ただし負けた場合は即刻ここから出てもらって二度と近づくな」


 もちろん、逃がす気はない。最悪ネームド達が負けたら、一旦引いて態勢を立て直すつもりだ。ガブリエルを含め、残りの金卵モンスターを効率良く使えば勝てるだろう。


 しばらく思案した佐伯君達は、他に選択肢がないと判断を下し、僕の提案を受けた。


 彼らに案内のホムンクルス(メイド)を案内につけ、闘技場の隅にあるベンチに誘導した。ベンチは闘技場全体を見渡せる位置にあるが、魔法によって外からは見えない作りになっている。内装もそこまで豪華ではなく、野球場のベンチくらいの設備と広さしかない。


 僕は佐伯君達とは反対側にあるネームドモンスター達のベンチに赴く。


 そして、最初の一人が舞台に上がる。向こうからは、頭を染めていた金髪が少しずつ剥げて金と黒が疎らになってしまった西村が出てきた。それに対しこちらの一人目はまだ戦闘を観ていないので若干不安が残るが、見た目は強そうなので期待できる奴が先陣を切った。


「では、対戦者それぞれに自己紹介してもらいましょう~!」


 舞台上では審判をやりたいとしつこくお願いしてきたガブリエルが司会兼審判を行っていた。


 ガブリエルの問いかけに、こちらの一番手が名乗りを上げた。



「我が名はノーライフキングのブラド、ヴァンパイア族を統べる夜の帝王だ!」


話のタイトルを佐伯集から闘技大会に変更しました。

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