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引きこもり勇者がダンジョンマスターになったら  作者: ニンニク07
第二章 魔王襲来編
13/87

共闘

 第八魔王、貪欲のアドラメレク、今までガゾンという男に化けていた金髪ロングのイケメンは確かにそう言った。


 だが、僕の頭は突然の事態についていけてない。初めての客で、山賊が来て、セレンから超強い調査隊がきたと思ったら、実は魔王本人だと、意味分からん。


 幸いといってもいいのかは、微妙だが、突然の魔王の登場についていけてないのはどうやら、僕だけではないようだ。赤毛の少女と女魔法使い、そしてさっきまで泣いていた山賊のお頭もまた、驚きの顔を隠せていないである。


「お前達の変身もそろそろ解くか」


 魔王が指を鳴らすと、調査隊のメンバーの内四人が姿を変える。ただし、魔王と違い、今度は人間ではない。四体とも身長は二メートルくらいあり、肌の色が緑や赤など異なっていたが、共通して、頭に角が生え、立派な西洋鎧を身にまとい、それぞれ、大剣や斧を装備している。


「!?……オーガロード、正真正銘のユニークモンスターだ!それも四体も!!」


 ガリと呼ばれていた青年が呟いた一言を聞き、その場に戦慄が走る。ユニークモンスターということは金卵級か、それが四体かやばいな。


「一体どういうこと!!いつから?」


 今の赤毛の少女には先ほどまでの自信に溢れた勝気な態度は見受けられない。よく見ると恐怖のあまり体が震えているようであった。そんな少女の姿に満足したのか、愉悦を浮かべながら魔王は答えた。


「部下に、この塔が他の魔王の作った基地の可能性があると進言されてね。折角だから、直接見に来たのさ、それで、人の姿に化けてセレンに侵入した時に丁度、君達がこの塔の調査に赴くと聞いて後ろからこっそりついていたんだが、気付かなかったようだね。君とそこの女魔法使いは一度ボクと戦っているから気づくかと思ったが残念だ」


 恐怖のあまり言葉が出ないのか、会話ができない赤毛の少女の代わりに女魔法使いが質問する。


「いつ、ガゾンさんと入れ替わったの?それに人間に化けられるですって!そんなの聞いていないわ!」

「その顔、どうやらボクの持つクリフォト能力〈貪欲〉を理解していないようだね。ボクの能力は殺した相手の魂以外のすべてを奪う能力だ。魔力や技能、容姿まで、もちろんアルカナ能力もね!」


 魔王が薄ら笑みを浮かべ、狩人の眼差しで僕を見た。そうか、殺した相手の力を奪えるのかチートだな。僕は自分のことを棚に上げながら思う。


「じゃ、ガゾンは?」

「そう、もう殺した!君達が森の前で一晩明かした時にね。他の四人も同様さ、ちなみにボクの能力は奪ったものを他の者に明け渡すこともできる。そいつらが化けられてのもこの能力のおかげさ」

「そんな」


 女魔法使いも悲しみにくれ頭を伏せる。もうこの場に魔王に戦いを挑もうとする者は僕以外いないようだ。それにしても、奪った力を他人に譲渡できるだと、僕にはできないぞチートだ。チート。


「さて、そろそろ、邪魔者には消えてもらおう。お前たち、勇者以外は始末しろ!!」


 その瞬間、魔王から驚くべき量の魔力が放出された。これはヤバい、僕も山賊達から結構な量の魔力を回収したがそれでも遠く及ばないほどである。そのため、恐怖のあまり僕も体の自由を奪われる。失敗だった。他の連中が魔王が現れただけで、すべてを諦めたようになったのを遅まきながら理解した。


 恐怖で動けない、冒険者にオーガロード達の大剣が振り下ろされ血しぶきを上げる。悲鳴はない皆生きることを諦めているようである。これはまずい早く何とかせねば、僕は心の中で、生き残っている冒険者達をゲスト登録する作業進める。


「さようなら、メイル嬢、なーに、心配することはない、セレンの戦いは、じきに終わる。我々が人間に化ければ、いつでも簡単に街に侵入できるのさ、それをしなかったのは君達冒険者という餌をセレンに集めて一気に力を奪うためさ、だから泣くな、すぐに街の人間も君の後を追わせてあげよう」


 魔王が右手上げると、赤い刀身のロングブレードが現れる。あの剣で彼女を殺すつもりのようだ。赤毛の少女は完全に諦めたようで抵抗する素振りもみせない。赤毛の少女に剣が振り下ろされる。だが、一手僕の方が早い。振り下ろされる直前に僕は生き残った冒険者達と共に最上階に空間移動した。




「!?うっ、ここはどこ?」

「魔王はどこだ?」

「きれいな麦畑」


 僕と一緒に最上階に来た五人が困惑の表情を浮かべる。連れてこれたのは、運よく、僕の近くにいた山賊のお頭とエドガーという剣士、ガリとかいう青年、調査隊からは、赤毛の少女と、女魔法使いの計五人であった。


「とりあえず、生き残っていた者達をゲスト登録して、まとめて最上階に転移させた!」


 ゲスト登録とはダンジョンマスターの僕のみが持つ権限で、使用するとダンジョンを攻略する意思のない者を侵入者からゲストに変えることができる。ゲストに登録された者は僕が操作する必要があるが、モンスター達と同様に階層を飛び越えて移動することができるのだ。


「おい、ここにいない者は、ベルンはどうした?」


 仲間が一人足りないことに気付いたお頭が僕に詰め寄る。もう殺されたと伝えるとお頭は地面にうずくまった。


「あなたには言いたいことが山ほどあるわ!」


 その光景を見ていた赤毛の少女が僕をにらみつけ言い放つ。


「もう、いいのか?さっきまで諦めていた顔だったが」

「!?うるさいわね!!あなただってあの魔王の力を見たでしょう?あんなのどうやって倒せっていうのよ!」


 赤面した顔で彼女が言う。どうやら少しは気を持ち直したようだ。


「とりあえず、助けてくれたことには感謝するわ、ここはこの塔の最上階ですってね、とりあえず外に出してもらえるかしら?」

「それは残念ながら無理だ」


 何故と問う彼女に僕は侵入者以外この塔から出るには、一階にある専用の扉を使うしかないことと、マスターとモンスターそしてゲストは、侵入者がクリアした階層には転移・移動することができないことを伝えた。


「つまり、現在、あなたを含めて私達は二階層より下のフロアに行けないということね」

「そう、そして外部に出るには一階にある扉を使うしかない」


 僕は引きこもりだから外に出るつもりはないが、もし塔に出る場合は一階まで空間移動し、専用の扉から外に出る必要がある。だが、三階に侵入者である魔王がいるので、その手が使えないのだ。


「では、僕達は魔王が各階をクリアしてこの最上階であるこの十階に到達するのを黙って見てるしかないのでしょうか?」


 話しを聞いていたガリとかいう名前の山賊の青年が尋ねてきた。


「そうだ、もしくは途中で、魔王達が赤い扉を通って向こうから塔の外に出るのを願うしかない」

「このまま、黙って死を待てと!!」


 山賊の一人でエドガーといっていた剣士風の男が叫ぶ。確かに彼の言う通り、現在は三階層にいるであろう魔王だが、僕のアルカナ能力欲しさに恐らく最上階であるここを目指してくるだろう。最上階を除けば、残された階層は四階から九階までしかない。


「早くセレンに戻って、アドラメレクが変身能力を持っていることを伝えなければいけないのに、でもこのままじゃ、この塔から出るのはおろか殺されるだけじゃない!」


 赤毛の少女が悔しそうに呟く。他の者達も同じ気持ちのようだ。あの場で殺されるはずだった自分達の死期が延びただけだと感じたのだ。だが、諦めるにはまだ早い、まだ一発逆点の秘策がある。


「諦めるのはまだ早いと思うぞ!」


 彼らは僕の一言にあまり期待してないような目で見つめながら問い返す。


「どうする?完全に詰みじゃない!」

「いや、まだだ、まだ終わりではない」

「終わりよ、感じたでしょう?魔王の魔力を前に戦った時とは比べものにならない。あなたもAランク冒険者並みの魔力があるようだけど、魔王には遠く及ばないわ!」


 もう希望はない、赤毛の少女の目はそう叫ぶ、だからこそ言ってやった。


「ここにいる僕達六人に、まだ踏破されてない階層の全戦力を一つの階層に集結させる。圧倒的物量で魔王を潰すぞ!」


 自信満々に言ったが、仮に全戦力を結集してもあの魔王を倒すのは容易ではないだろう。だが、九階層の彼女がやる気を出してくれれば、まだ希望はある。


 少しだけ生気が戻ってきたゲスト達にログハウスにあるモニターで魔王の様子を見ていてと伝えると僕は一人、九階層に転移した。

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