02 プロローグ㊥
「スキルがひとつも表示されない、ですか?そんなことはまずありえません。人間には必ず向き不向きがあります。なので、あなたにも向いていることに対応したスキルがあるのですよ。見落としてはいないのですか?」
「はい、見落としてはいません」
「おかしいですね。ちょっと表示されたスキルを見せてください」
ん?そんなことができるのか。
「……汝…異能………」
小声で言ってるあたりを見ると、漏洩禁止なんだろう。
「では、見させていただきます」
「はい、わかりました」
そして、俺の表示されないスキルを見ている。
もしかしたら、俺には見えてないだけか?
「………たしかに、ありませんでした」
「やっぱり」
「ちょっと代表者を呼んできます。こんな事例ははじめてなもので」
「では、待たせていただきます」
そして、どっか奥の方に消えてった。
ってかその間に、色々声が聞こえたんだよね。
おい!まだ《スキルテスト》させてもらえねえのか!?
申し訳ありません、事情がありまして……
こっちはスキルさっさと選びてえんだよ!
早くしろ!
暴言、その他諸々。
みんなどんなスキル選ぶのかな。
やっぱり【戦士】?
それとも【ヒーラー】かな?
隙をついて【神官】とかかな?
俺はどんなスキルが向いてるのかな?
「おまたせした、俺がここの代表者だな」
「あ、どうも」
「それで、珍しい事例だと聞いたんだが?」
「はい、なんか《スキルテスト》を受けたのですが、スキルがひとつも表示されなくて」
「ふぅむ………確かに、何一つ表示されないな」
「え?無詠唱、ですか?」
「ああ、俺は【探偵】というスキルでな、人の情報や意識などを盗み視れるんだ」
「へえ、すごいですねー」
そんなスキルがあるのか。ますますスキルが欲しくなるな。
「あの、そういうことって機密事項とかじゃないんですか?」
「ああ、俺は代表者だからな。別に漏らしたって構わないさ」
「理屈がわからないです……」
「さて、話を変える。とりあえず俺が視た結果、スキルが表示されないことがわかった。俺の部下に、他人にスキルを受け渡しできる奴がいる。そいつに、無理やりスキルをお前に取得させる」
「わかりました」
「おーい、誰か!“盗っ人“を呼んでこい!」
「……あの、“盗っ人“というのは?」
「ああ、俺たちの間での呼び名だな。なんかで俺たちの名前が完全にバレた時、他人をどうにかできる奴がいたら、それでおしまいだからな」
「わかりました、気にしなくて良さそうですね」
そして、誰かがやってきた。
恐らく、この男が“盗っ人“なのだろう。
「じゃあ、こいつに何かスキルを取得させてやってくれ」
「わかりました。理由は聞かない、でしたね」
「ああ」
「とりあえず、あなた。仮ですが、【商人】のスキルを渡しますね」
「あ、はい。お願いします」
「では。…………………あれ?」
「どうした、“盗っ人“?」
「スキルを渡そうとしたんですけど、跳ね返されました」
「はあ?そんなことあるのか?」
「いえ、ありません。いや、可能性ならば一つありますけど……」
「なんだ?教えろ」
「はい。以前、【釣り人】のスキルを渡してくれ、って言ってきた人がいたんですよ。まあ、いいかなって思って、渡そうとしたんですけど、今回と同じように跳ね返されてしまったんですよ。それで、その時は無理だと言って帰ってもらったんですね。で、後日その人に聞いてみたら、『あ、この前はゴメンな。どうやら、既に【釣り人】のスキルを持ってたらしい』って言ったんです……」
「………………つまり、お前はこいつが既に【商人】のスキルを持っていると言いたいんだな?」
「はい、あくまでも可能性ですが」
「はあ、わかった。お前、これの上に手をのせろ。この水晶を使えば、自分の持っているスキルがわかる」
「へえ……そんなのがあるんですね」
「さっさとのせやがれ」
「すいません、っと」
そして俺は、水晶の上に手をのせた。
だが、のせて何秒かすると、パリィィン!っていって割れてしまった。
「あっ、すいません!!これ、絶対高いですよね……」
「「……………」」
あれ?二人して固まってる。どうしたのかな?
「お前、これがどういう意味かわかってるか?」
「いや、わかりません」
「これはですね、歴代最高のスキル量の人間を基にして作った水晶なんです。そのスキル量は、489です」
「ちなみに、スキル全ての量は?」
「確認されてるだけで500だ」
「………………」
つまり、それは暗に俺がスキル500以上あるってことだよな。
「お前の名前は?」
「俺、ですか」
はぁ、あんまし名前は言いたくないんだけどな。
「俺は、ヴィ%@**?#$です」
「は?」
「だから、ヴィ%@**?#$です」
「……聞き取れんな。……まあいいだろう」
「お前に命ずる、ここにて謹慎しとけぇい!」
そして俺は、謹慎命令が出たとさ。
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