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理想の召喚獣(美少女)育成計画  作者: 松乃森スバル
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はじめてのお仕事、ワーム退治 1

精神的なダメージと引き換えに部屋の鍵を貰って、リンネと二人で荷物を運びこんでいく。

俺達に与えられた部屋は2階の一室。

元々はオフィス用のテナントスペースだった為に、一つの広い部屋をいくつかに仕切って2LDKの居住用に改装しているらしい。

何にしてもそろそろリンネも一人部屋にしてやろうと思ってたから調度いい。これから思春期の難しい時期になるだろうし。


「今日からここがリンネの部屋になるんだよ。好きなように使っていいけど、ちゃんとお掃除とお片付けはしなさい」


「わぁ~!ここ、リンネの部屋なの?うん、ちゃんとする!」


などと元気よく返事をしていたが、リンネは言わないと片付けをしないからかなり心配だ。というかどうせ言わないと掃除しないだろうな・・・。

それにそろそろリンネにもお金の使い方や金銭感覚を身に付けさせる頃だろう。いろいろ忙しくなるとリンネに買い物を頼まないといけないだろうし。


「それと今月からリンネにもおこずかいをあげるから、これからも良い子にするんだぞ?」


「おこずかいくれるの?!やったぁ!リンネ、良い子にする~!」


俺も就職できたことだし、食費やこの部屋の家賃を引いても毎月手取りで80000ギルほど貰えるはずだ。最初だし、リンネには5000ギルくらいが妥当かな。


「あ、それとリンネ。さっき会ったココットとはあまりお話ししちゃダメだぞ。あの子の話してる言葉も聞いちゃダメだ、いいな?」


リンネの精神年齢と一番年が近そうだけど、あいつの性格と言葉使いの悪さがうつったら大変だ。

『あんな子と遊んじゃいけません!』って言うお母さんの気持ちがよく解る!

童貞だけど・・・、ってもういい加減いいだろ?


「え~、ミルフェちゃんとお話しできないの?」


と、リンネはココットを憧れの魔法少女だと思い込んでるようだ。


「あれはね、ココットという悪い魔法少女なんだよ。見た目はミルフェちゃんだけど、俺をイジメるとんでもない悪魔なんだ・・・」


「そうなの?!カイルをイジメるなんて許さない!私が守ってあげるからね!」


ああ、リンネはほんとに素直で優しい子だな。


こうしてリンネも自分の荷物を部屋に運び込み、「ここに置こう」とか、「これはこっちがいい」なんて悩みながらも片付けを終えたようだ。

おこずかいを貰えるのが嬉しかったらしく、リンネが荷物運びや整理を積極的に手伝ってくれたおかげで俺の方の荷物や家財道具も片付き、引っ越しは無事終了した。


俺達がピンクペンギンの事務所に戻ると、社長のファミルさんやドリスさんも戻ってきていた。


「あら、引っ越しは終わったかしら~。部屋は気に入ってくれた?」


「はい、内装も綺麗ですし、部屋割りまでしてくれててすごく満足してます」


先日、入社契約に来た時に内見したときは壁紙も剥がれただだっ広いだけの部屋だったが、内装工事をしてくれたらしい。


「そう~、良かったわ!これからはしっかり働いて、まずは内装工事費を返していかないとね!頑張って!」


ファミルさんはすごく優しい笑顔でサラッと言ってるが、何だって??


「内装工事費って、え?どういう事ですか?」


「だってぇ~あんなボロボロでな~んにもない部屋じゃ生活できないでしょ?だから気をきかせて改装してあげたんじゃない」


「そういうのって、家賃にふくまれてるんじゃ・・・」


「家賃は最初の状態での家賃よ?大丈夫よ、たった80万ギルくらい一年も働けば払えるわよ~」


ああ・・・、就職と同時に借金を背負うハメになるなんて・・・。

リンネにおこずかいなんてとてもじゃないが無理だな。

すると憐みの表情を浮かべたココットがポンポンと俺の肩を叩く。


「あんたの就職した会社はね、こういう所なのよ・・・」


この口の悪いガキもここで苦労してるんだな・・・。


「まあそんな暗い話は忘れて、今夜はカイル君とリンネちゃんの歓迎会よ~!驚かそうと思って内緒でドリスとご馳走を作ってたの~!サプラ~イズ!」


誰のせいで暗い話になったんだ!というツッコミは置いておいて、仕込みというのは俺達の歓迎会の為の料理を作ってくれてたらしい。


ドリスが一階の店から運んでくれた料理は凄く豪華で美味しかった。何だかんだ言いつつも、こんな優しい一面もあるんだな。


「本当に今日の料理は美味しかったです。あれ程の高級食材を使って、結構大変だったんじゃないですか?」


今日の料理に使われた食材はどれも王都の三ツ星レストランで出されるものばかりだった。


「今日はカイル君とリンネちゃんが社会人になった記念日でもあるのよ~。そんな野暮なこと言っちゃダメよ~」


少しお酒が回ってほろ酔いのファミルさんが優しく微笑む。俺達の門出を祝ってくれるなんて、結構いい人じゃないか!


「費用の事なら来月の給料から落ちるから、心配しないで~!遠慮しないで沢山食べてね~!」


それを聞いた途端、酔いも一気に醒めた。ほんとにサプライズだよ!


「えええええっ!待ってくださいよ!これ、まさか俺が払うんですか?!」


「もう~、記念日なんだから、野暮なことい・わ・な・い・のっ!!」


ほろ酔いのファミルさんがウインクしながら俺のほっぺをつんつんする仕草は可愛いけど、けどぉ!!


「・・・だから、こういう会社だって言ってるじゃない」


慰めるように背中をポンポンしてくれるココットと、通じ合えた気がした・・・。



翌日―――

昨夜のショックも冷めやらぬ俺は、出社時間前に特売品を狙って王都のディスカウントストアに来ていた。

就職した日に約100万ギルの借金を背負った我が家は、少しでも節約しないといけない。


狙った通り、開店直後のディスカウントストアの店頭には値下げした特売品のワゴンセールが行われている。引っ越ししたばかりなので、今日のターゲットは主に日用品だ。

買い物の練習がてら、少しでも安いものをリンネに選ばせる。


「カイル!これが安いよ、ほら!」


「リンネ、お願いしたのはシャンプーだぞ?ここを見てごらん、これはリンスだ」


「・・・あ、ほんとだ。だっておんなじに見えるもん!」


「う~ん、じゃあこれ?」


「そっちはコンディショナー」


「ええ~?なんで頭を洗うものがこんなに一杯あるの~?」


それは俺もそう思うが、美を追求する女性の自己満足だ、としか言いようがないな。


「ああ!これ買おうよ!これ~!」


と急に色めき立ったリンネが持ってきたのはキャラクター物のシャンプー。ボトルにはリンネの好きな『魔王少女サタリン』のキャラがデフォルメされている。

版権の使用料分だけ高いし、肝心の中身のシャンプーは安いガムみたいな臭いのするヤツだ。


「いらん!戻して来なさい!」


「ええ~!シャンプーならこれでいいじゃない~」


「ダ~メ!こんなの買いません!」


「じゃあリンネ、自分で買うもん!おこずかいちょうだい!」


とリンネが手を出して催促してくる。そう言えば昨日そんな約束したんだった。


「すまん、お金がなくてまだおこずかいはあげられないだよ」


すると余程そのシャンプーが気に入ったらしく、珍しく駄々をこねてくる。ここ最近はお金が無くて、リンネに何も買ってやれなかったしな。


「ええ~!おこずかいくれるって約束したのにぃ~。ひどいよぉ~」


「お金が出来たらちゃんと払うから、な?」


「うう~、昨日はあんなに良い子にしたのにぃ、カイルの嘘つき~」


(ちょっと、奥さん!あの二人、おこずかいをあげるとか、約束が違うとか、もしかして援助交際なんじゃないの?!)


(ええ?!でもあの子まだ中学生くらいじゃない?!あら!首輪まで付けられて、『良い子にしてた』とか、あれはただ事じゃないわよ!)


通報された。


だから、なんで日用品を買いにいくだけで数時間も拘束されなきゃならないんだよ・・・。

この日は買い物だけで一日を費やしてしまい、急いで会社に戻ると『急がなくても今日はお給料ついてないから~』とファミルさんに言われた。


翌日はちゃんと営業開始の11時に出社してタイムカードを押す。

その後、オフィスの会議室に集まって受注した依頼のミーティングが始まった。


「ん~、これは昨日お願いしようと思ってた依頼なんだけど、初日から無断欠勤だったから今日お願いするわね~」


ぐ・・・、何も言い訳できねえが、すごく理不尽な気がする。


「ほ~んと、就職して初日に無断欠勤なんていい度胸よね!しかも買春容疑で警察署に拘留されてたなんて、恥ずかしいにも程があるわ!身元引き受けに行った私の身にもなってよ!」


ココットが俺を睨みつけながら吐き捨てるように言うが、従業員とは言えこんな年端もいかない子供が身元引受人として認められた事が驚きだった。


「ココットちゃん~、それもお給料のうちよ~」


とファミルさんがたしなめて、今回俺とリンネ、ココットの三人で担当する依頼の説明をしてくれた。


何でも、とあるお屋敷の地下倉庫にワームが現れて食料やワインを食い荒らすので退治して欲しい、というものだった。

どうやらギルドの依頼センター経由ではなく、ファミルさんの知り合いから持ち込まれた依頼らしい。

驚くことに報酬はなんと25万ギル。

低級魔獣のワームの退治程度の報酬にしてはかなり高い。依頼センターなら6~7万ギル程度だろう。


念のため魔獣図鑑でワームのデータを調べてみる。


『ワーム(小) 低位軟体種 全高15センチ 全長約55センチ ステータス 攻16 防19 俊10 魅16 魔8 知5 社 4  スキル 溶解液 締め付け』


ふ~む、前にやったローチよりもステータスが低いし、これならリンネと俺だけでも余裕だろう。

しかし、この図鑑の魅力と社会性の項目がよく分からん。


「おつかいみたいな依頼だからカイル君達だけでも大丈夫だろうけど、依頼主との手続きもあるからココットちゃんも付いて行ってあげて~」


ということで、俺とリンネ、ココットの三人は列車に乗って王都の端にある高級住宅街に向かった。


「あと、お屋敷で何を見ても気にしないでね~」


と、会社を出るときにファミルさんが言ってたのがちょっと気になるが、これ位の依頼なら大丈夫だろう。



これまでの召喚獣の成長値


腕力 50 器用 56 俊敏 49 魅力 50 魔力 23 知力 64 社会性 59



これまでに通報された回数 7回

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