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理想の召喚獣(美少女)育成計画  作者: 松乃森スバル
16/22

新しいおうちにお引っ越し

クラリス教官の紹介のおかげで俺とリンネの就職が決まった。

『ピンクペンギン冒険社』


ネーミングも事務所も社員も怪しい会社だが、横の繋がりも軍や召喚術研究所とも関係の薄い会社である事が最も重要な俺達にとって、贅沢は言ってられない。

きっと教官はそれも見越して紹介してくれたんだと思う。


それと住む場所や食事も付いているのも嬉しい。

あの怪しい雑居ビルの一階のバーも社長のファミルさんが経営しているらしく、仕事がないときは社員はそこの手伝いをするとのこと。

バーというか昼間は喫茶店兼食堂といった適当な店らしいが、零細企業だけに冒険稼業だけではやっていけないんだろう。


なんにしても、ちゃんと就職出来たことを母さんに連絡して安心させてやらないとな。


「まぁ~、良かったわね!とりあえず仕事に就いてないと家族を養えないものね。あとは早く孫の顔見せてね!」


なるほど、就職したあとは親の『結婚と孫』の催促が始まる訳か・・・。


数日後―――


この日は今のアパートを引き払って、王都の怪しい雑居ビルへの引っ越しの日だ。


「リンネ、要るものと要らないものを分けて、お片付けだ」


思えばここでのリンネとの生活が始まって一ヶ月近い。

改めて室内の荷物を見ると、リンネの物が半分近くを占めていた。

特に服とおもちゃの類い。

「女の子は物入りでしょ~」と母さんがコリーのお下がりの洋服や下着を送ってくれたのは有り難いが、引っ越しの後にして欲しかった・・・。

おもちゃはリンネが幼児期から小児用、小学生まで短期間で成長したこともあって、かなり多い。

対象年齢から外れて遊ばなくなったものは捨てるしかない。


要らない物の箱に入ったリンネの持ち物を眺める。

リンネに文字を教えた知育絵本や教材。

初めて買ってやったぬいぐるみや積み木。

洗濯に失敗した水色のヒラヒラワンピース。

使い古したクレヨンや塗り絵。

どれもリンネとの思いでと成長が刻まれた品だった。


「カイルがくれたもの、捨てられない!」


最初、リンネはどれも要らない物の箱に入れる事をためらっていたが、「使ってない物は、お礼を言ってお別れしようね」と説得した。

手放す基準と勇気を教えないと、将来『物を捨てられない女』になりそうだしな。


なるべく少なく荷物をまとめると、呼んでおいた運送業者のトラックに積んで行く。

王都内での輸送なら魔導自動車が使えるから早く終わりそうだ。

王都の外だと、舗装が進んでいないし、燃費の悪い自動車よりも速度は遅くても馬車に頼る方が効率的なのだ。

実家のクレイリバーでも、自動車を持っているのはプルムの家だけだった。


トラックに荷物を積み終えると、大学入学時から住み慣れたアパートを離れる。


俺の隣で「しゅっぱーつ!」とはしゃぐリンネの言葉通り、俺達は新たな門出の一歩を踏み出した。


一時間程トラックに揺られ、王都中央駅前歓楽区の雑居ビルに到着した。

う~ん、このビルも周囲も怪しい&いかがわしい。

空き缶やピンクチラシがそこらに落ちている通りには昼間だというのに、露出の多い服の女が男にしなだれかかって歩いてるし、真っ当な値段設定でないような店では真っ当な仕事をしていなさそうな人が開店準備をしている。

見た目は10代の美少女だが、中身は小学生のリンネが暮らす場所としては凄く不安だ。


とりあえず『ピンクペンギン冒険社』の事務所に挨拶するためにリンネを連れて三階に向かう。

昨日にも雇用契約やら入居の手続きで来てはいたが、このボロくて狭い階段を大きな荷物や家具が通るか不安になってくる。


磨りガラスに洒落た字体で社名が書かれたレトロなドアを開けると、中の内装は新しく、外観と違って明るく綺麗なオフィスになっている。


「失礼します~。カイルです。只今到着しました~、って誰も居ない?」


入ってすぐ両側の事務机にも奥の社長用の大きなデスクやその間の応接ソファにも人の姿は無い。


「いるわよ!」


怪訝な声と表情で応接ソファの背もたれの向こうからココットが顔を出す。


「ああ、お前が居たのか・・・。引っ越しの報告と部屋の鍵を貰いに来たんだけどなぁ。社長かドリスさんは居ないの?」


「お前とはなによ!この前から後輩の癖に生意気なのよ、あんた。社長とドリスは下の店で仕込み中だから、あたしが留守を任されてんの!だから今が最高責任者ってこと!」


ココットはソファに上がり、ふふんと腕を組んで得意げに仁王立ちする姿は遊具の上に立ってるお子様みたいだ。


「小さい子に留守番させるなんて無用心だなぁ」


と、出ていこうとする俺をココットが引き留める。


「あら~?部屋の鍵は欲しくないの?」


振り替えると、ソファの上のココットが見せ付けるように鍵をくるくる回す。


「あたしが留守を任されてると言ったでしょ?あんたが来たら渡すようにってね」


「ぐ!・・・じゃあ荷物入れるから鍵よこせよ」


「は?それが先輩にものを頼む時の態度?うちの会社では先輩には様付けが基本なのよ?」


このガキ、足元見やがって・・・。


「くそ、・・・ココット様、鍵を頂けませんか?」


「なに対等にものを頼んでるのよ?ちゃんと頭を下げて、『無知なロリコン童貞野郎の私めに』が抜けてるわよ?」


無知で未経験、百歩譲って童貞も我慢しよう。しかしロリコンは聞き捨てならん。俺はロリコンではない、と思う。


「ちょっと待て、俺はロリコンではない!そこは訂正してもらおう!」


「ならどう見ても10代の女の子にしか見えない召喚獣に、どう見てもロリコン趣味のお洋服を着せ替えて楽しんでいるのはなぜかしら?一緒にお風呂に入って、幼く穢れのない未成熟な身体にこれっぽちも興奮しなかったとユルズの神に誓えるの?」


「うっ、そ、それは母さんが妹の服を送ってくれるから、仕方なくだな・・・。あと、リンネの身体に興奮するだなんて、あ、ある訳ないだろ。ははは・・・」


「ならここにユルズの聖典があるわよ。ここに手を当てて誓ってごらん?『私、カイル・ハートレイは誓ってこの無垢なる幼子に邪な感情を抱いたことはありません』と。さあ、さあ!」


ユルズの女神はエルフェリア国教として国民全てが信仰する大地の神だ。それに冒険の神でもあり、俺達にとって関わり深い神の名を持ち出すなんて汚ねえ!

だめだ、聖典に触れ、神の御名において嘘は言えねえ・・・。


「・・・ココット様、どうかこの無知なロリコン童貞野郎の私めに部屋の鍵をお与えください」


この会社での最初の仕事がこれだとは就職を喜んでくれた母さんにはとても言えねえな・・・。


これまでの召喚獣の成長値


腕力 47 器用 54 俊敏 48 魅力 49 魔力 22 知力 62 社会性 58


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