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英雄王の娘  作者: 猫にゃんにゃん
王都マリンキャッスル
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私の日常 2

「う。なんかごめん。変なこと聞いちゃったね」

「いえ。大丈夫です。もう気にしていませんから」

「…それだけきれいなんだから、きっと男から貰ったんだと思ってたのにな~。セレーナってば出会った頃から全然男の影ないでしょ」

「?私なんか全然可愛げがなくて地味な女じゃないですか。そんな物好きいませんよ。美人でもないし」

「いやいや、あんた何言ってんの。さっきも告られてたじゃない。確かに一見地味だけど、よく見たらなかなか美人だってその筋じゃ有名よ?」

「…それを言うのならサウラの方がすごいでしょう?私がここに来る少し前から受付嬢の人気ナンバーワンだって聞きましたよ。付き合っている男性とか、いないのですか?」

「まーね。やっぱ、せっかくなら少しでも良い物件にしたいじゃない」


 そのようなこと話していると、ようやく料理がやって来た。ミナが勧めてくれただけあってどれもとても美味しそうだ。




「ふ~久々に食べすぎた感があるわね~でも美味しかったし午後も頑張らなきゃいけないからいいか~」

「そうですね。機会があったらまた来ましょうか」

「満足してもらったなら嬉しいです~!ご来店ありがとうございました~」


 そうして私たちは酒場パステルを出た。美味しいものを食べたおかげで自然と元気が出てくる。よしっ午後も頑張ろうっと!







「はあ。今日も疲れました~」


 私は自分の家に着くなりリビングルームのソファにゆったりと体を預けた。この家は商業ギルドが管理している家で、月にいくらか払えば貸してくれる。代金はギルド同士でつながりがあるため、私の場合は冒険者ギルドに預けてあるお金から勝手に引き落としてもらっていた。わざわざ払いに行くのは面倒だからと、初めてこのシステムを知ったときはなかなかによく出来ていると感心したものだ。


「駄目ですね。このままでは寝落ちしてしまいます。きちんとお風呂に入って身支度をしてからでないと」


 今日はギルドから出た後、女性職員だけで飲みに行ったのだ。いつもはそんなことは無いのだが、同僚の人がこの度同じパーティの男性と結婚することが決まったそうで、それを聞いたサウラが「飲みに行こう!」と言い出したのだ。(パーティとは冒険者たちが数人で集まって作るチームのことである)私はお酒があまり好きではないためご飯だけ食べて帰ってきてしまったが、他のメンバーはまだ夜の喧騒の中にいるのだろう。




「…美人、なのでしょうか?」


 今日昼間サウラが言った言葉を思い出す。脱衣所にある鏡の中には、ここ2年間全く変わらない私の姿が映っていた。別段珍しくも無く何処にでもいる長い茶髪で、紺色の目をした女性。確かに多少顔立ちが整っているかもしれないが、全体的に野暮ったい印象を与える顔だった。体つきも女性らしさに富んだ丸みは無く、小柄でふつうそのもの。しかしそれは当然である。この身体は世の中の平均的な女性を限りなく追及して創られたのだから。


「万人を欺きし偽りの人形よ。其は天より使われし月の化身。我は正義の名の下汝が戒めを解き放ち、奪われし真実をここに顕わす。リリース」











 もし、今この瞬間私の身に起きている出来事を誰か別の人がが見ていたならば、その人は驚きのあまり気絶していただろうとそう思う。




 鏡の中には、それはまるで天使のようだという形容では生易しいほどの美しさを持つ女性がいた。髪は白銀に煌き、瞳は母なる大海を思わせる透き通るような蒼。形の良い唇は仄かに紅く、姿態は芸術品のような曲線美を描いている。と、ユナやティカたちからは評された容姿。これが私の本来の姿だ。


 私自身はあまり実感したことが無いのだが、彼女ら曰く「それで町中を歩かれたら死人が出るレベル」だそうだ。(それがどういう状況なのかは理解しかねるのだけど…)それゆえ、このままでは普通の娘として生活していくことが出来ないということで、こうして身体変貌の魔法を常時発現している。これは光魔法を応用したもので、意図した容貌に自由自在に変えられるのである。それにより『セレーナ・ルーシュ』として至って普通のパッとしない女冒険者として、ここ2年間過ごしてきたつもりだったわけだが、いやはや。どうやら私の意図するところでない評価を下されていたようだ。うーん。詰めが甘かったか。


「グルフィスにも約束した通り、これからも自分を磨いていかなくてはいけませんね」


 私はは一人よしっと気合を入れると、シャワーで身体の汚れを落とし始めた。


次話は視点が変わります。お楽しみに~

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