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13.キャンプにやって来た(朝)

 七姉さんの思いつきキャンプ当日、怪我人にも関わらず鈴音は待ちに待ったと朝から張り切り。

 反対ににびは『お腹痛くならぬ……健康な自分が憎い……』とテンションが低く、嫌々オーラ出しまくりだった。

 キャンプとかレジャーでの雑用は苦にならないと思うが、場所以外は普段と変わらない雑用+αと言われれば確かに気乗りはしない。

 いつもはそうだろうけど、今回はこいつらも俺も居るしにびも多少は楽できるだろう――。


「兄上、その鞄もお願いします」

「よしきた」


 相変わらずふんどし一丁の忍者、そしてキャンプ行く気満々の姿をした久野さん、今回は忍者兄弟も便乗するようだ。

 ポンコツの方は懲罰として奴隷働きをさせられているらしく、ポンコツから荷物を受け取った妹はベランダから華麗に舞い降りる。

 まだ夜も明けてない早朝というか深夜、普段からそうなのか近所迷惑にならないようにしているのか、

 物音一つ立てず荷物に積み込む姿は流石忍者と言うべきか。

 片やポンコツは鈍くさい、ふんどしが気になるなら袴ぐらいはけよ……。


「馬鹿言え、装備なぞ見につければ防御力下がっちまうだろうが。Lv上がればシャーマン戦車級になるんだぞ」

「いま防御どれくらいなんだよ?」

「今で10だ」

「転職すらしてねぇじゃねぇか!!」


 10が基本値でマイナスになればなるほど硬いはずだ、それに忍者なら8からのはず。

 筋肉はモリモリのマッチョマンなのに見せかけかよ。


「兄上のは結果にコミットされた見せかけ筋肉なので防御力ありません、

 それどころか余計な筋肉に阻まれ、より素早さが低下しました。しかも酒場行って身包み剥がされて捨てられてます」

「言うなよぉっ!? イケナイ美人お姉さま隊に声かけられたらそりゃ行くだろ!!」

「ほれ、喋ってばかりでなく手を動かすのじゃ。鈴音はいつまで気合入れてメイクしておる」

「べ、別に気合なぞ入れておらぬ――それに七殿も全く動いておらぬではないか!!」


 鈴音の方も先日の大怪我から鈴音の雰囲気が変わった。

 いや気のせいかもしれないけど何か吹っ切れたような、刺々しいのが無くなり柔らかい感じがする。

 女子力アップしようとしているのか、やけに化粧の仕方について七姉さんやにびにあれこれ聞くようになってるし、

 料理についてもこれまで以上に学ぼうとしてるんだよな……。そのおかげで今まで以上に美味い料理が食えて俺もありがたいんだが、

 怪我した時に頭でも打って別人格が表れたのかと逆に心配にもなってしまう……。


 それに時折見せる心の底から出るような笑顔にドキっとさせられて……これがギャップ萌えと言うのだろうか?

 今日だってキャンプに行くから当然でもあるけどいつもの和服姿ではなく、普段と全く印象が違うし……。


 ギャップと言えば、六姉さんの薬のおかげで鈴音の骨折もある程度治ったみたいだが、ああ見えてヒーリング能力持ちかなにか?

 八姉さんもボケボケに見えてシャーマン的な能力にかけてはピカイチらしく、

 トランス中はボケボケしているように見せている別人格のようだった。ああいう腹に一物抱えてる人が一番怖い。

 突然いなくなったし――。


「はっはっは、準備できたようだなー。気をつけて行ってこいよー」


 この人もビフォーアフターのギャップが強烈だったし……。

 全ての荷物を積み込み、留守番のごっちゃんに見送られながら行き先の分からないキャンプに出発した。

 一ヶ月は買い物せずに済むぐらいの大量の食料が置かれてたけど多分帰ったら全部無いな……。


 車の運転は自称ジャンボジェット以外の乗り物なら操縦できる久野さんがハンドルを握っている。

 飛行機の免許は無いけど操縦方法はハワイで父親に習ったらしい。父親ってなんて優秀なのだろう。

 俺も免許はあるがたまに会社の車を動かすぐらいのペーパードライバーだし。街中だと電車やバスのが早いし……。

 それに今回みたいな大人数で行くには車の運転に慣れた奴の方がいい。

 ……いいのだが今回は俺が運転した方が良かったのかもしれない。


「ぬぉぉぉぉぉっ減速っ減速してぇッ!?」

「こ、この世の荷車は速すぎであろうぅぅぅっ!?」

「ほっほっ、いやこれは愉快じゃのうー」

「ででっ電車で行くから降ろしてっ降ろしてくれなのじゃあっ!!」

「うーん、あまり加速しないなあ……兄上、車体軽くしたいので飛び降りて下さい」

「出来るかっこのスピード狂っ!!」


 スピード狂ならスピード狂って事前に言っておいてほしい。

 一般道でも飛ばすなぁって程度だったけど高速に入ってからこの人がそうだって分かった。

 映画でよくあるカーチェイスをするわけでもない一般車ここまで加速する必要ないだろって数値まで出してる。

 ETCゲートを越えた直後から減速って言葉が無く、緩やかなカーブですら直角に見えると言うけどマジだった

 ――って、やめろぉぉぉオートマでドリフトするなぁぁぁっ!!??

 降ろしてっマジで降ろしてぇぇ……右に左にうねうね動いてカッとばしてるから酔う、酔いたいけど酔えない。


「事故っても逃げられるから大丈夫ですっ!!」

「妾らも脱出できるしの」

「忍者と狐基準で考えるんじゃない!?」


 こんな速度で飛ばしてたらお巡りさんが――ってほらぁぁッ


「車は偽装済みじゃ、安心して振り切れい」

「承知――」

「承知、じゃねぇよっこの犯罪者どもっ」

「ここは任せろ」


 ポンコツは窓を開け、そこから車の屋根の上に這い上がった。

 こんな高速で走る中なのにこの辺りはちゃんと忍者してるな。

 ルーフの上で『世の風紀を守る犬どもめっ』と聞こえたがそれは良い事だろ、怒られんの嫌なら真っ当に生きろよ……。

 すると何故か追いかけてくるお巡りさんの車が減速した気がする、考えたくない事だが一体何があったのだろう……。


「車の上で丸出しにした覆面男がV字開脚すればと言えば分かるでしょう」

「…………朝ぼらけが綺麗だなー」

「じゃあそろそろ晦ませるので普通の運転に戻すのじゃ」


 七姉さんの能力で車そのものを偽装していたらしく、

 SAで休憩を兼ねて幻を追いかけるお巡りさんが通り過ぎるまでやり過ごす事になった。

 なおSAに入る途中一気に減速したせいか、屋根から何か転がり落ち跳ね飛ばしていた。

 きっと路肩あったゴミだろう、迷惑な事する奴がいるもんだ。


「美味そうだ――食いたいが食欲がないのはこれ如何に……」


 SAにあるみたらし団子の甘辛い匂いが食欲をそそる。だが脳が欲しても胃が拒否している。

 ドライブを楽しんだ七姉さんと久野さん以外は、見事に全員酔っていた。乗り物にはあまり強くないけどこれは誰でも酔うぞ。


「これ本当に動いておるのか……?」

「さっきが速すぎただけでこれが適正速度だよ……」


 先ほどとはうって変わってほぼ1/2の速度で走っているんだ、スピードの感覚が麻痺していて遅く感じるのは無理もない。

 高速から降りたら速度の出しすぎで事故したりするのもこれが原因の一つでもである。

 まぁこれぐらいならまだ安全だしって……あれ、鈴音――って寝ちゃったのか。

 流石に毎日早起きしてる鈴音でも今日は早かったからな、寝ても仕方ないんだがこれは困った……。


「ほっほ、仲が良いことじゃのう」


 肩に寄りかかるようにして眠ってしまった為動くに動けない――。

 電車だと酔ったオッサンに寄りかかられる嬉しくないハプニングがあるが、これは逆にありがたいか。

 うーん、良い匂いする……。


 ・

 ・

 ・


「んー、着いたのじゃ」

「あの、七姉さまここは何処……」

「すまぬ、弘嗣……大丈夫であるか?」

「うん、大丈夫。女の子に寄りかかられて悪い気はしないし」

「ささっ左様であるか――」

「さぞ安心できたのですね、熟睡でしたよ」

「ち、違うっ眠かったのだっ!!」


 結局山奥に車が止まるまで鈴音はずっと眠っていた。

 同じ姿勢だったので肩が痛いものの、嬉しい痛みなので特に苦はないが。

 ――で、ここはどこだ? 大体三時間ぐらい走ったけども……。


「おぉぉ、この川のせせらぎに木々の音……うーむ生き返るようだ。

 この世にもかのような場所があったとは」

「道中はさておき、確かに良いのう――早く山の中を駆けたいのじゃ」

「ほら、車を置いてくるので自分達の荷物は自分で、それ以外の荷物も自分達で持って下さい」


 七姉さんの先導の下、各々自分の荷物を持ち(何故か俺が七姉さんのも)本当にここが正しいのか思えるような道を降りて行く。

 いや登ってるのか? 上に下にと舗装も整備もされていない土の湿った道を進んでいくのでどうなっているのか分からない。

 野犬や猪や熊出没注意の看板なんてこの際無視だ、あとついでに狐注意も掲げておくべきだ。

 にびは急斜面を飛び跳ねるように獣道を駆け上がりショートカットし、鈴音も慣れた足取りでずんずん進んでいる。

 狐はまだしも一般人には斜面がキツい道だなこれは……。


 皆よりもゆっくりと倍以上の時間をかけて登る事になってしまったのは、

 俺の体が重いからではなく荷物が重いのだ、それとちょっとばかり運動不足なせいだ。

 もっと言うなれば狐と侍だし、俺一般人だし……だからお前らちょっとは一般ピープルを気にかけろよっ!!

 置き去りにするんじゃないよ、寂しいだろ!!


「うむ、流石は五尾じゃ。良く見つけたのう」

「おお、これは素晴らしい所であるな。かのような場所に城を築ければ……」


 どれくらい登ったか、ようやく置き去りにして行った薄情者達に追いつくと、

 そこには人工的な物が一切ない緑の絨毯――広い草原が広がっていた。

 凄いな……すぐ近くには清流が流れているし、これぞ隠れ家的なスポットだ。

 日本にまだこんな場所が残っていたんだと感動すらしてしまう。


 日々の喧騒の中で生活し慣れてしまっていると、こう言った場所が物凄く不安も感じてしまうが……。

 ごっちゃんが教えてくれたと言っていたが、なるほど山とかそう言うの土地的な物が詳しいのか。

『獣が薦めるユートピア』とか本を出せば売れるかもしれない――

 いやそこに人間が踏み入れない場所だからこそ彼らの楽園があるわけだから駄目か……。

 そこにいる狐だって――ってこんな所に野生の狐もいるの?


「よく見るのじゃ、あれはにびじゃぞ」

「あ、あぁ……確かに尾が二本あるように見えそうで見えないが、そうか本物の狐にもなれるのか」

「獣・半人半獣・人のどれかじゃの――

 まぁ各々好きな形態をとっておるのでどれが正しいかと言うのはないが、本来はあれが原点じゃからの。

 最近はああやって遊びまわれておらんかったし、にびにとっても良い息抜きじゃ」


 子狐が無邪気に草原を駆け回り、時折ごろんと転がる姿は癒しそのものだった。

 鈴音も同じ事を考えているのか二人して眺めていると、そこにもう一匹の白い狐が――ってあれ七姉さんか!?

 横に居たはずなのに、いつの間にかそこに脱ぎ捨てられた着物だけが残されており、

 七本の尾をした狐はこちらを向いてフフンっと笑った……気がした。

 七姉さんとにびって獣姿になると結構似てるんだな。見分け方としては体毛の違いぐらいか……?


 それとにびの尻尾も栗毛だけど根元の部分は白く、

 よく見れば七姉さんも後ろ足の太もも部分に赤い呪文みたいな模様があるし。

 狐でないと分からないものも多いもんだな――。


「いやー、楽しいのじゃー」

「ちょ、に、にびっ服っ――」

「ん? 童は別に気にせんぞ」

「お、お主……生えておるのか……」


 鈴音の言うとおりそこには栗毛が逆三角形に……。

 最近の子は発育が良いと言うが、まさかこんな大人顔負けの剛毛が……むしろ動物の毛皮か。


「そうかそうか、お主らそんなに童に張り倒されたいか。よしそこに並ぶのじゃ、童考案の狐キックを顔にしてやるからの」

「まぁ毛皮のようなものじゃ、こやつはそれが無ければお子ちゃまじゃからのう」

「な、七殿っ!? そなたは隠されよっ――お主は見てはならんっ」

「わわ分かってるっ!!」


 豊満なその身体――

 しかもにびの毛皮と違って人間と変わらないソコを見ていたら思わず凝視してしまいそうだ……

 ちょやめてっお尻なんでこっち向けてくるのっ、やめてっ尻尾と弾力のあるボールを背中に当ててくるの止めてぇっ!?


「妾はそこにある着物を取っておるだけじゃぞ? おや、帯が見当たらぬのう……弘嗣よ、ちと探すのを手伝うのじゃ」

「嘘でしょっ、そう言ってこっちにイケないとこ見せるつもりなんでしょっ!?」

「わ、私が探すので弘嗣にかのような破廉恥な行いをするでないっ!!」

「おやおや~?」

「な、何ぞその目はっ!?」


 七姉さんもテンション上がっているのかやってくる事もいつも以上だった。

 ちらっとでも見ておくべきだったかもしれない……いや駄目だっ見たら取り返しの付かないことになってしまう。


 既に設営されているテントが納まっるのを待ってから

 寝泊りするためのの設営を始めたけど、昔に比べると今のテントってホント簡単になってるな。

 ボーイスカウトやってたからちょいちょいキャンプでテント設営はしていたけど、

 重いわ何人かで支柱を支えてペグ打たないとって手間が本当に大変だった。

 しかもデカいから表裏の確認から面倒だし、片付けもまた大変なんだよなぁ……。


 それに比べれば、二人でフレームとなる支柱を穴に通して立ち上げるだけで良いんだから。

 少々味気ない気もするがグダグダになるより遥かに良いな、は慣れているにびの指示のおかげでよりテンポよく建てることが出来たし。

 鈴音もテントにはしきりに感心しっぱなしで、野営では上に布を張るぐらいでこんな四方が囲われた立体型のは見た事が無いらしい。


「中も意外と広いぞ、これで風雨を凌げると言うでのあろう? 何ともはや見事としか言えぬな……。

 しかも弘嗣もかのような野戦の訓練を受けておったとは意外であった」

「ボーイスカウトって確か元軍人が指導してたからあながち間違いでは――ないな。

 ロープワーク……縄の結び方から、手旗を使っての連絡方法、こうやったキャンプの方法から人命救助とかだから……

 考えてみれば忍者の方が近いか。もちろん戦闘訓練とかはしてないけどね」

「なんと!! 戦う術はなくともそれだけ出来れば十分であるぞ、私の所に来ればすぐに登用ぞ!!」

「ほれタープもできたのじゃ、ジョイントを展開してちょいとペグ打てばよいのは楽じゃのう」


 思わぬ所で再就職先が決まった気がする。まさかこんな所で子供の頃の経験が評価されるなんてなぁ……

 今でも新卒の面接時にボーイスカウトやってたと言うとウケが良かったし、色々経験しておくもんだな。

 経験に無駄な事なんて無いって事だろうか。


 テント設営が終わると後は自由時間――といきたい所だけどまずは飯だ、もうとにかく腹が減ってしょうがない。

 これから飯を炊くとなると時間かかってしまうがどうするんだろうか……。


「ほれ、握り飯ぞ」


 と思っていたら、鈴音がちゃんと見覚えのあるお握りを用意してくれていた。

 相変わらずとんでもない重さと大きさだ……。


「此度はちと違うぞ。米の量がおかしいと言われ考えたのだ、それを皆で均しく分ければちょうど良いのではないか――と」

「違うのじゃっ!?、そっちではないのじゃっ、飯を人数分均一に分けてから握れば良いのじゃっ!!

 あと問題は目一杯握りすぎて三合の米が通常より少し大きめの握り飯になっておることじゃからな!?」


 鈴音はたまにこう言う所があり合理的と言う名の横着をする。

 前にもベッドの周りにリモコンなど充実させようとしていると、にびに『それはデブのやる事じゃ』と言われていた。

 なお、ごっちゃんは『あっはっは、それ最高に楽だよなー』と言っていた。流石元デブ。

 今回はとりあえず鈴音の言うとおり塩むすびを均等に分け皆で食べた。

 うん、間違ってはいないが、やはり間違っている。


「じゃあ、晩飯の用意するまでその辺で子供のようにはしゃぎ回っておれ」

「お主が一番子供のようにはしゃいでたろうが」

「うぐっ、嬉しかったのじゃから良いじゃろ別に……まぁこの近辺を説明しておくのじゃ、

 ここを中心に西にあるのが清流じゃ、北をまっすぐ行くと温泉があるのじゃ、東は特に何も無い。

 あぁ、用を足す時はどこでも良いが穴掘ってやるのじゃぞ。

 それに自然の物を使うても環境や景観を壊す様なゴミは出さぬようにな、山は誰でも物でもないのじゃ」


 人がいた痕跡もあまり残さないようにして、山の中で生きとして生けるものへの配慮もちゃんとしているのか。

 流石は山や自然の中で生活する者と言うべきか――。

 確かに人間の影響で生態変わったりしてるもんな……こんな素晴らしく美しい場所を失うことなんてあってはいけない。


 こんな所でテント張ってもいいのか――とも思ったが、

 にびは『七姉様がヌシ様に許可とってくれておるから大丈夫じゃ』と言っていた。やはりデカく白い猪なのだろう、

 山の中は大抵涼しいものだけど、日が照るとやはり暑いので鈴音は水浴びするのに着替えてくると言ってテントの中に入った。


「にびよ、着物は何処にあるのだ」

「その鞄に入っておろう、お主のはその白いのじゃぞ」

「白? そんなもの無いぞ」

『――ええい、見えておるではないか。』

『――これは下着であろう?』

『それで良いのじゃ、ほれ着ろ。』

『う、うぅむ……ってこれで終わりぞ!? 待てっ!? これはおかしいであろうっお、押すな!?』


 にびに押し出されるようにして出て来たのは、清純な純白のビキニを着た鈴音――だった。

 身をよじり、胸と下を恥ずかしそうに身体を隠しながら『謀ったな!!』と怒っているが、

 にびが『水着とはそう言うものじゃ』と一蹴されてしまっている。

 そ、そんな恥ずかしくどうしていいのか分からない乙女の目で見るの止めてっ……。


「あ、あぁその……にびの言う通り、それで合ってる――と思う」

「お、思うって何ぞ!? 着物の下に着ておる"ぶらじゃあ"や"しょうつ"とどう違うのだっ、むしろそれより小さいのであるぞ!?」

「生地が違う……のでごじゃりまする。

 それは水に濡れても透けないようにと、乾きやすく動きやすいようにするのに、あのそのでごじゃる……」

「ま、真であるのだろうな……う、うぅぅぅ……この世の女子は何と破廉恥な――おい、お主から見てその……どうなのだ!?」

「どうなのだってっちょっと!?」

「この世の女子と比べてどうなかと聞いておる!!」


 にびが手を後ろに回してしゃきっと立てと指示されて言うとおりにしているものの、

 恥ずかしくてモジモジすると自然とポーズが出来上がってしまっている。

 不味い、本気で可愛いと思う……。

 可愛いと思わないと別のを考えると自分が持たない、普段は着物で隠れてる所の90%ぐらいが露わになってるだもん……。

 何でいきなりビキニタイプを選んだのかと疑問にも思うが、これは色々くるものがある――。


「ほれ、おなごがどうか聞いておるのだから答えてやるのじゃ」

「あっああぁ何だ――か、可愛いと思う……」

「ささささっささっ左様かっうむっ」

「へーそうですか……」


 聞いた割には面白くない答えと言わんばかりに、横になってスマホ弄る狐娘一匹。この狐を何発殴ってやろうか。

 居心地が悪くなったのか、鈴音に水浴びに行くぞと言って連行されるように引っ張られていた……

 頼む、到着する頃には俺のテントが萎んでいてくれ。

~今回登場キャラ~


九姉さん(九尾)

見ていたら目が痛くなるような全身ショッキングピンクの狐。

夢を通じて過去を見せる事ができる。また夢の中に他の誰かを連れて来る事もできる。

良く眠る、とにかく眠る。主にエッチな夢を見たいがために。


ワンちゃん(犬神)

石になった九尾が割られた際に飛び出た子の一人。口が悪い。

にびと大の仲良し。

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