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11.お花畑な狐もやって来た

 狐の気まぐれで急きょ決定した野営……

 えぇと、あぁ"きゃんぷ"だな、聞いた事もない言葉であったが、聞けば山の中や川辺で"てんと"なる陣幕を張ってそこで寝泊りすると言う、戦時の野営を異国の言葉に変えただけであった。

 弘嗣が言うには戦はないようだが、まぁそこは時の流れと割り切るしかあるまい。


「"きゃんぷ"――"きゃんぷ"か、ふふっ腕が鳴る」


 此度の"きゃんぷ"と言うのは非常に楽しみぞ。

 小競り合いはあるものの大きな戦は無く、野営なぞは久しくしておらなかったからな……。

 戦なぞあらぬ方が良いが野営は好きだ。夏は夜――との言葉通り、この時期であるなら蛍を見、眠りに就くまで広き夜空を眺めるのが良い。

 虫の声も趣があって良いな、蚊は困るが……"きゃんぷ"でもかのような事が出来るのであろうか?


 確か陣幕の設営に飯炊きもするのであったな。

 それに、七殿が水浴び用の着物を用意すると言うておったし、川で泳ぎ、魚も獲ろうか。

 うむっ、まことに楽しみであるな!!


「して、場所は何処なのだ?」

「分からぬ。あの方は気まぐれであれこれ決めるのでの……。

 お主らの騒動で、この時期のこれをすっかり忘れておったのじゃ……」

「何ぞ、浮かぬ顔をして。"きゃんぷ"は嫌いなのか?」

「嫌いではないし、逆に好きなのじゃが

 あの方と行くとのう……一から十まで童が全てやるので楽しむ間なぞないのじゃ」


 雑務を押し付けられ走り回る姿が容易に想像できる。

 にびは間が悪いと言うのであろうか使いやすいのであろうな。

 かの様子からして事あるごとに呼びつけられておるのであろう、此度の我々の件で忘れておったと言うておったが……。


「以前より気になっておったのだが、何ゆえ私がここに来る事になったのだ?」

「うぐっ――さ、さぁ何ゆえじゃろなぁ、なっ何の拍子で来てしもうたのであろうなぁ……」

「答えよ」

「え、えうぅぅ……お、怒らない?」

「うむ、怒らぬ」


 理由に次第ではあるがな。『怒らないから言うて見よ』と言うのは嘘に決まっておる。

 それを信じ涙した純朴な(わらべ)がどれだけ居ると思うておるのだ。


「じゃ、じゃあ言うのじゃ――

 そろそろ言わねばならぬ事であると思うておったしな、実はの――」


 にびの口より語られた真実……その内容は信じがたいものであった――。


「なんだとーーッ!? かのような事、うっかりで済むか馬鹿者――ッ!!」

「お、怒らぬと言うたではないかっ!? そ、それにお主も悪いのじゃぞっ、捧げ物もせずあれこれ無理難題をふっかけおって!!

 あぁっ思い出したぞっ、そなたっ童を『マヌケ』と言うたであろうっ!!」

「うっ……」


 い、言うた……気がせんでもない。

 まさか……まさか、この世に来た理由がこ奴の癇癪であったとは――。

 しかし、何ゆえ弘嗣の所にやって来たのだ? おかしな所に行かされておっても困るが、確かあ奴の真上に落ちたはずであるが……。


「それなのじゃが童にも分からぬのじゃ……。

 本来なら不慮の事故であっても石の中にも飛ばぬし、意図的にせぬかぎりこんな世に飛ぶことなんてないのじゃ。

 あるとすれば、ちょうどそなたの相手を探しておった時じゃったし、該当したのが四百年先の時代を超えた弘嗣であったのじゃろう。知らぬが」

「わ、私の相手はそこまでおらぬのか――いや今はそれではない、ひひ弘嗣がわわ私ののっだと!?」

「じゃから童は知らぬ。あ奴もそなたを受け入れておるし、そなたもまんざらでもないじゃろ?

 もう契りを結んで夫婦になれば良いであろう。そうすれば童のお仕事終わり、任務達成で晴れて本当の狐の仲間入りじゃ。

 はい、誰も損せず解決、めでたしめでたし――」

「そそそっそんな安易に決められるか馬鹿者ッ!!

 それに弘嗣は私が望んだのが入っておらぬではないかっ!!」

「こ、この期に及んで、お主はまだ選り好みをするか……」


 う、うむっ確かに私が望んだ物が入っておらぬではないか。だから違う、違わない部分もあるが違うのだっ

 仮にだ、もし仮にそうであるならば……私は、私はどう振舞えば良いのだ――。


 ・

 ・

 ・


 おかしな考えを払拭するべく、にびと共に剣の稽古をしに昨日の畑にやって来た。

 私が今もっておる木刀――これはこちらに来るまでに鍛錬用として使うていたもの。

 木工細工が得意だった祖父が私の為に遺してくれた最後の作品――

 幼き頃に頂いた物なのでちと小さいが、これには私の武士としての覚悟、これまでが詰まっておる。


 昨夜遅く、先日の忍者の妹くのいちが『奥方から預かり物がある』と届けにやって来た。

 母上の『そなたは何者であるか――』との伝言と共に……。

 私が"何者"であるか? そんなのは決まっておりましょう。

 私は武士――そうだ、平和なこの世におって忘れかけておったが、私は紛れもなく武士なのだ。


「――ふっ、ぬっ……」


 やはり長く鍛錬を怠っておったからか身が入らぬ。身体が鈍ってしまっておるな……。

 それに、袴で来るべきであった、襦袢では動きづらい――これもこちらの世で弘嗣に調達してもろうた物だ。

 今着ておる、淡く桃色がかったこの襦袢は私が最も気に入っておる。


 この世の見た事もない城のような豪華絢爛な建物、織田信長殿などがおればさぞ気に入るであろう。

 見るもの全てが想像を絶し心が躍っておった。様々な料理も知り、作り、食した。

 そんな毎日が楽しかった。だが――何ゆえ今は恐れておるのだろう……木刀を振れば振るほど不安ばかりが増してゆく。

 かのような事一度も無かったのだが――。


「えっとですね~、それは本当の自分を無視してるからなんですよ~」

「だ、誰ぞっ!?」

「に゛ゃっ――は、はは、八姉様っ!? 何ゆえここに!!」

「ん~、どうしてだったっけ~? にびちゃん知らない~?」


 えらく間延びした気が抜ける喋り方をする……八と言っておったが、これもにびの一族の者か?

 なんとも頼りのない苦労知らずの様な顔をしておる……。うむ、ふわふわとした黄色の毛に確かに尾が八つあるな。

 だが、何ゆえにびはかくも慌てておるのだ、折角姉に会えたと言うのに。


「知りませぬっ! ちょ、ちょっとどこに行かれるのですかっ!

 バックして、シットダウンしてくださいじゃ!!」

「あ~、そうだ。六ちゃんにお薬貰いに来たんでした~。あれ~? にびちゃんお散歩に行きたいんですか~?」

「ち、違うのじゃっ! 八姉様が勝手に歩いておるのですっ、お願いですから何もせずに居てください――じゃから歩くなーっ!!」


 にびも七殿や五尾や六尾殿、それにこれと――

 姉共に振り回され相当な苦労人であるな……であるが、この八尾と申すのは大丈夫であるのか?

 "八"は末広がり、見た目からして楽観的――いや、これは五の方が当てはまる。

 言うなれば阿呆だ……放っておってはならぬ阿呆だ。


「も、もしもしっ七姉様っ!? ちょっちょっと待ってぇーー――た、助けてくださいっはは八姉様が、八姉様が来てっ――

 え、前のドブ川に捨てろ? そんな事できぬに決まっておるでしょうっ、せ、せめて誰かっ誰かをーーっ――あ゛っ切られたっ!?」

「う~ん、身体が重いですね。 風邪でしょうか? 六ちゃん~お薬ください~あれ、いない~?」


 何であろう、この者を見ていると悩みなぞ馬鹿らしくなってくるな……。

 六殿も己の思うとこでしか動かぬが話は聞いておる、この者はそれすらもないとは何とも性質が悪い。


「あ~、にびちゃんにも用事があったんだ~。

 そのお侍さんが必要だから一緒に来て~。あ、服は袴に着替えといてね~」

「わ、私も? しかも何ゆえ服まで――」

「ちょ、ちょっと待ってくだされっ、わ、童の話も少しはーっ」


 全く話のかみ合っておらぬ狐どもを尻目に、言われた通り着替え後ろをついて行く、あの狐は呆けておるように見えて意外と歩くのが速い――。

 にびは途中から『も、もう駄目じゃーっはにゃー』とマタタビに酔うた猫の如くぐにゃりとし始め、八に抱きかかえられておる。

 気をしっかり持っておらねば、この者に合わせておると同じように力が抜けていくような気がしてならぬ……。

 得体の知れぬ……数歩歩くだけで己を見失いそうになってしまう……。

 あれ――私はいつのまに山に……。


「はっ――お主っ、何を企んでおるっ!!」

「あれ~、どうかされましたか~?」

「私を惑わしておるであろうっ!!」

「え~、窓なんて割ってませんよ~。あれは勝手に割れただけです~」

「そんな事言っておらぬわ!? かのような山中、我々を何処に連れて行く気ぞ!!」

「え~っと、あぁそうでした~。そこの道場破りをお願いしたいんです~」

「は――?」


 指差した先には粗末で今にも崩れそうな建物、確かに道場であるような看板が掲げられておるが……雨風に朽ちて字が読めぬ。

 果たして大丈夫であろうか――その、何か出そうでもあるし……いや、蛇とかおっては危ないではないか、かのような屋根裏に住み着いておったりするし。


「た、たのもー……」


 恐る恐る足を踏み入れたが人の気配が全くせぬ……おっても困るが、帰り道が分からぬのでおらなくとも困る。

 狭いと思うておったが外観より広く感じるな、昔は立派な道場であったのだろう。

 が、今は歩くたびにギギギィと軋む床板が何とも不気味で寂れた建物だ。

 言うなれば急ごしらえの粗末な造り……外部よりも内部から朽ちておるようだ。

 だが、何ゆえ懐かしくもあるのであろう……。


「ほう、かのようなボロ屋に足を踏み入れるとは。門下に入り来たのかえ?」

「なっ――い、いつの間に……」


 先ほど見たはずであるのに、その場所にはいつの間にか老人が鎮座しておった……。


「最初からおったよぉ、お前さんが儂を見ないようにしておっただけじゃ」

「なっ――おほん、突然の訪問失礼致しまする。

 拙者の名は、居下鈴音と申し上げます。成り行きでござるがこちらの師範と手合わせ願いとうあって参りました」

「ひゃっひゃっ、道場破りとは時代遅れな事じゃ。だが残念だの、もう三十年……いや十年早ければ相手してやれたのにのう。

 こんなボロ道場の看板で良ければ好きに持って行ってくれればええ、薪ぐらいにはなろう」

「そ、そうでござりますか……看板はいりませぬ、これにて失礼致します」


 一礼し、その場を去ろうとした時――背にゾクッとした悪寒を感じた。

 殺気――とっさに振り向き、その方を向くと先ほどの老人が……おらぬ


「こっちじゃこっち、試合は出来んが腕を見るぐらいはこの爺でも出来るぞ。

 折角来たのに手ぶらで帰すのは可哀想じゃ、あざの一つや二つつけて帰るとええ。ほれっ」

「な、何とっ――」


 老人の杖が眼前を通り過ぎた、咄嗟に退いておらねば当たっておったであろう……。

 あまり本気で打って大事になってはならぬが返さねばやられてしまう。


「くっ――せいっ!!」

「なんじゃそのヒョロヒョロの振りはっ」

「ぐうっ!?」


 私の刀はいとも簡単に避けられ、逆に左の膝に手痛い返しを貰ってしまった――。

 ずきずきと痛む足に、心のどこかに奢りと侮りがあったのを恥じた……いかに相手が老いておると言えど気を抜いてはならぬ。

 獅子は兎を狩るにも全力を尽くすと言う、先の狐もおる事だ、事が起こればその時に考える!!


「ぬぅっ!!」

「ひゃっひゃっ、いいぞいいぞー」


 ――くっ、まただ……何ゆえ太刀筋がブレる!!

 病に臥せっておったからでも、身体が鈍りきっておるからでもない。

 道場内にガッガッと木刀と杖がぶつかる音が響き渡り、時にはバシッと身体に当たる音が響く。

 打つたび打つたび容易くにいなされ返される――もうどれだけ打ち込まれたか、どこか痛いのかも分からぬ。

 この床板も場所によっては踏み抜きそうで思うように踏ん張れぬ……。


「足元がおぼつかぬのはお主の心が迷い戸惑うておるからじゃ」

「ぐっ――右肩に……」


 右肩の痛みに手を止めてしもうた。

 いや、痛みではない――迷い戸惑っているとは何だ?

 私は何に迷うておる――いや、相手の言葉に惑わされぬな。

 気を集中しろ、踏み抜きかねぬのなら踏み抜く前に一太刀浴びせればよい。

 この一撃に――かけるっ!!


「ここも最初は小さくとも立派な道場だったのだがのう……最初は勢いでがむしゃらにやってきておったが、

 ふと立ち止まり、振り返ると一つ間違えれば崩れるボロ屋になっておったわ――。

 今はただ建っておるだけ、この外にある真に求めておる物を得る妨げになっておる」

「なればいっそ潰せば良かろうっ――」


 速さ・踏み込み・間合いのどれをとっても完璧だった


 ……はずなのに


「それをするのは儂ではなくお前自身なのだよ――鈴音」


 この太刀筋は――嗚呼そうか、なるほど敵わぬはずだ……。

 耳鳴りで良く聞こえぬが鈍い音が道場内に響いてるであろう、受け止めた刀も――折れた。

 もう持たぬのであったのであろう……刀も私も……。

 嗚呼、これは左の鎖骨が折れておるな――もう痛いのか痛くないのかも分からぬ。

 分かるのは私の両膝が崩れ意識が遠のいて……視界が……暗く……。


 ・

 ・

 ・


 ――ん、顔に何かポツポツと当たる……これは雨か、まずいな眠っておったか。


「痛っ――」


 左肩に激痛が走る、いやそこだけではなく身体中が痛い。あざどころか血まで滲んでおる……。

 あぁそうか、周りには何もあらぬがあれは夢ではなかったのだな――

 道場にてこてんぱんにやられ、遂には一太刀も浴びせられずこの様だ。

 大事に至るのは私の方であったな、あぁ痛い……。

 だが、負けたと言うのに何と清々しきことよ――。


「どこがあざの一つや二つなのだ、爺様め――」


 私に木刀を与えた祖父――あの老人はその人だった。

 幼少の頃に爺様より剣術を習い、挑んではいつもこうやって完膚なきまでにやられておったな……。

 あまりに勝てぬので泣いた事もあったか、ふふっ……まさか今でも勝てぬとは。

 薄れ行く意識の中、大爺様の声を聞いた。『強くなったな。』と、あの時のように微笑んで――。


「……もう必要ないと言う事でござりまするか?」


 側に転がっている真っ二つに折れた木刀――殺生な事をしてくれる。

 せっかく身体を動かせると思っておりましたのに。


「あぁっ居たのじゃっ――鈴音っ、おい大丈夫かっ!?」

「にびか……あまり叫ぶな、響いて痛い」

「あ~、突然いなくなったので心配しました~。じゃ、運びますね~」


 いくつか分かった事があるが、とりあえずこれは八本の尾の狐の仕業だ。

 こうなる事を分かってて仕込みおったな……。


 /


 七姉さんとの買出し中にかかって来たにびからの救援要請に急いで駆けつけると、

 上半身包帯と湿布だらけの鈴音を見、驚いて駆け寄ろうとした所でにびの尾の毛先が両目に突き刺さっていた。

 うん、怪我を負った鈴音の姿を見て取り乱してしまったようだ――物理的に目が目がぁな状態から回復した先に見えたのは、

 いけない縛り方されて床に転がされている、ゆるふわロングの黄色い毛の女性の姿だった。


「……で、動き回らないように縛り上げてると――鈴音は大丈夫なのか?」

「これぐらい何て事はない」

「……うん、余裕……」

「童はもう働きたくないのじゃ……」


 その傍らには所々から煙があがってそうなにびと六姉さんが座っていた。

 縛られてあちこちが強調されている女性はにびの姉の一人、八本の尾がある狐であるらしい。

 鈴音曰く、色々な意味で手に負えない、見た目に騙されてはならない人のようだ。


「あれ~、そう言えばどうして私縛られてるんですか~?」

「…………八は……脳みそに大麻詰まったような奴……凄く面倒……」

「この方、徘徊癖があっての……まぁ害はないし一人でおっても問題ないのじゃが……」


 確かに悪い人には見えないし、見ているだけで幸せになりそうな人だ。

 七姉さんから、何でも思念が込められた物を媒体にして必要な人を呼び出す、

 シャーマン的な能力に長けていると聞いたけど、これを見る限りではそう見えない……。


「……ナナ曰く……歩くドーパミン……」

「え~、六ちゃんひど~い。私も用事あったのに~」

「…………来たの去年……しかも食べすぎの腹痛で…………」


 なるほど七姉さんが来たがらない理由が分かった。見てたら無性に殴りたくなるんだ。

 あの人の性格からしてマイペース&マイペースの幸せオーラ全開なのでイライラするんだな……。

 さっきも新婚イチャラブカップル見て『旦那が寝取られプレイ好きで、スワッピングがきっかけで離婚しろ』と呪ってたし――。

 でも何だろう、この人見てたら妙に身体が気持ちいいと言うか適度な倦怠感が……

 あ、これ駄目だ……。


「……ドーパミン……」

「聞いておるか分からぬが、この人は幸せを振りまくからの。意志が弱いと駄目にぁあらめぇ……」

「……八、これ読んで……」


 十分後、何とか回復したものの――今度は間逆の意味で面倒な事になっていた。

 手には『もう疲れたよセントバーナード』や『アライグマオスカル』などと言った感動名作、あと何故かにびの絵日記を読んでいる。

 読むだけならいい、そこから先がすっごい面倒。


「うっ……ひぐっ……えぅっぐっ……か、可哀想です……どうしてシマリスちゃんがイジめられるんですかぁ……。

 アライグマちゃん酷いですう……ふぇぇん……にびちゃんも惨めですぅ……」

「何でっ!? 何で童のだけストレートに来るのじゃっ!?」


 泣きすぎて色々な作品が混じり別物になってる気がする。その作品にラッコは出てますか?

 この人は感情のパラメーターが極端に偏るとそれ漏れて、周囲に影響を与えるのだそうだ。

 なので幸せオーラを消すにはこうやって泣かせて中和させれば良いらしい。

 まぁ泣きすぎたら今度はそれが充満するので適度な調整が必要っと――うん、面倒くせぇ。


「…………じゃあ、治療の仕上げにこの坐薬…………」

「それは絶対にいらぬであろうっ!!」

「……ちっ……新作試したかった……」


 その後、案の定泣きすぎた八姉さんの影響で悲しみに満ち溢れた俺達(六姉さん除く)は涙しながら何故か謝罪しあっていた。

 帰って来たごっちゃんの影響で今度は楽しくてしょうがなく、家の中で米騒動が勃発しそうになった所で七姉さんにシバかれ全員の目が覚めた。


 感情のコントロールって難しいね……。

~今回登場キャラ~


八姉さん(八尾・シャーマン)

本人の感情が周囲の者に伝染する。

基本幸せ全開であり必要以上にバラまくため、皆が幸せすぎて脱力してしまう。

お花畑に見えるが時折本音を吐くので、それが素なのか演じているのか分からない。

主に物についた思念から霊を呼び出す。呼ばなくてもいいのに呼んだりするので霊からしても少し迷惑。

放浪癖があり、出ていくとなかなか帰って来ない。


体毛:ゆるふわロングの黄毛 性格:お花畑?

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