10.大食狐がやって来た
今回次回はやや短めです。
忍者騒動の後日、七姉さんは赤毛の女横綱を連れて帰って来た。
いや女性に対してこの例えは酷いかもしれないけどこれが一番正しい表現だと思う。
デカい、とにかく色々デカい……上は180cmは軽くある、そして横は俺が二人分ぐらいある、当然おっぱいも脂肪込みでデカい。
『私ぃ、肉の脂身超好きぃー』なんてセリフが良く似合いそうなくらい顔がパンパンだった。
何故か所々焦げているが、赤茶色い毛の狐耳がついているので狐の姉妹である事は確かなんだけど、
身体に隠れて尻尾の本数が見えない――多分五本だと思う。
突然やってきたこれを見た鈴音は、口をぽかんと開けたまま唖然とした様子でフリーズしていた。
「あっはっはー、いや君が弘嗣殿か此度は迷惑をかけたなぁ」
「こちらは、ごっちゃん――赤狐の五尾姉様じゃ。
その……五尾姉様は大食漢な方での、デ――すこしぽっちゃりさんなのじゃ」
ぽっちゃりとポジティブな呼び方に変えるんじゃない、むっちりなんてのもってのほかだ。これは正真正銘のデブだ。
それと"ごっちゃん"とはにびが五尾を呼ぶ愛称らしい、ごっちゃんです?
「膝が辛いぞはっはっはっー、ちょっとそこの寝床で座らせてもら――」
「お、お止めくだされっ!!」
鈴音が珍しく全力で止めに入った、相撲で言うとがっぷり四つの体勢だ。
きっと直感で俺と同じ事を考えたのだろう――ベッドさんが死んじゃう、と。
文字通りドスッドスッと言う足音を立てるようなのに座られたらとんでもない事になる、
頭で思っただけで行動に移せなかった俺より、行動に移した鈴音さんは立派だと思う。
だが鈴音の腕が回って無いし
『あっはっは相撲か、私も相撲が好きだぞ。だがここでやると鬼七にまた怒られるぞはっはっはー』
と、全く相手になっておらず、まるで幼子のようにひょい簡単に持ち上げて横にどかされただけだった――。
「わ、私がこうも軽々と……」
「はっはっは、軽い軽いー」
「五尾よ、ここに遊びに来たわけではないのだぞ」
「分かってる分かってる、此度の侘びにこれを納めてくれ、はっはっは」
呆然としている鈴音を尻目に、どこからか取り出した大きな野菜籠の中にはこれでもかと言うぐらいの野菜が入っていた。
キュウリ・カブ・トマト・枝豆――他にも色とりどりの良い出来の野菜、どうやらごっちゃんが作った野菜のようだ。
確か洞窟内で畑をしてたと言うし、その収穫物なのだろうか? 金が無い中でのこれは非常に助かる。
「ごっちゃんは昔、洞窟の中に隠れ住んで食っちゃ寝しておったのじゃ。
ある日、食う物無くなって洞窟から出ようとしたらその、肥えに肥えて狭い出入り口から出られなくなっておっての……」
「あっはっは、いやあれは焦ったなー」
山椒魚かなにか?
「七姉様が助けに来てどうにかして出る方法をと洞窟の中に入っておったら、
空腹で動けなくなったごっちゃんが入り口を塞いでしもうてな……。何とか命からがら脱出できたのじゃが、
七姉様は大層お怒りになって『痩せて自力で出て来るのじゃ!!』と三十年ぐらい閉じ込めたのじゃ……。
まぁ、死なない程度に童らが時々食う物を持って行ってたのじゃが――先日行った時、ごっちゃんは洞窟の奥で畑を作って、
差し入れの野菜から取った種を使って栽培しておったのじゃ」
「ど、どんだけ逞しいんだよ……てか洞窟の中で育つものなのか?」
「ごっちゃんなら可能じゃ、土に関しては右に出る者はおらぬからの。
水のある場所、光が差し込む場所とあれこれ計算しつくして完璧な畑を作っておったぞ」
「おおー、にびが偉くなっておるわ、はっはっは。よしよし偉いぞー」
「え、えへへ~」
ごっちゃんは土に関係するのか、なるほど確かに環境が整っていれば畑は可能だろう。
にびからすればごっちゃんは甘えられる姉であるのか、べったりくっついて頭を撫で撫でしてもらって満面の笑みを浮かべている。
そんな微笑ましい光景を、鈴音は何やら不思議そうな顔をして見ていた。
「のう、弘嗣よ"てれび"を見て気にはなっておったのだが――」
「ん、どうした?」
「その――『なでなで』と言うのは本当に最高のものなのか?」
「なっ何を言い出すの――」
「い、いやっ気にしないでくれっ、ちと気になっただけ……えっ――」
何か自然と手が伸びてしまっていた、手の平に伝わる細く滑らかな感触が気持ちいい
源氏物語でもあったかな、つややかな髪に惹かれたと言う話。鈴音の髪はずっと触っていたいぐらい気持ちのいい髪をしてる。
じっと撫でられ続ける鈴音に、大好きな親戚のおじさんに甘えるようにべったりなにび、冷ややかな目でそれを見る七姉さん
「えっあっあぁ~――うむ……うむ……悪くは――ないな」
「あっはっは、よーしよし」
「うにゃ~」
「……何なのじゃこの光景」
うん、本当に何なんだろうな……。
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しばらくして七姉さんにマンションの裏の小さな畑に連れて来られた。
畑とは言っても四方は住宅に囲まれた十畳あるかどうかの耕作放棄地のようで雑草は生えっぱなしの畑と呼びがたいものだが。
むしろずっと空地だと思ってたけど、ここ畑だったのな……。
他人の敷地に勝手に入っていいのだろうかと思ったが七姉さんなら許されるだろう、ダメだったとしてもこの人なら力押しでどうにかする。
以前、にびが言っていたことがある
『横一列にブロックを並べたら消えるゲームにて、縦一本入れられるスペースがある。
でも次のに来たのは真四角のブロック。七姉様はそこに無理やりねじ込もうとする。そして何故入らぬと怒る。』
――と。それぐらい強引で雑な性格をしているらしい。
分からなくもない。にびは後先考えず適当によけて自滅するタイプだろう。
そんな我が道を行く七姉さんが木造のボロい物置から古いクワやカマを取り出した。
それをを見た鈴音のテンションは妙に上がっているが、俺からすれば嫌な予感しかしない。
「ほれ、雑草刈るのじゃ」
「よしきたっ!!」
「やっぱりか……」
鈴音は慣れた手つきで雑草をどんどん刈りはじめている。
なんと言うかこう電動のでガーッとすれば早いんじゃないですかね……。
都会っ子に人力でこれは中々酷な作業だ、いや田舎育ちだけどさ……雑草刈りが終わったら今度はそこのクワなんでしょ?
しかし、他所の畑の草刈とか勝手にやっていいのか?
持ち主からすれば御の字ではあるだろうけど、ただ人の為に草を刈って土を耕して終わりとか慈善事業するような人でもない。
不法侵入で文句言われても、七姉さんなら力技で何とかするだろうし、今は言われた通りの事をするか……。
ただ、この中腰な姿勢はキツい……鈴音はもうあんな所まで刈っているし――。
当の狐どもは、あくびをする・飯を食う・スマホをいじると全く手伝いをする気配も見せない。
「で、七姉様――また土地をぶんどったのですか?」
「人聞きの悪い事を言うでないわ、死にかけの年寄りから借りておるだけじゃ。ぽっくり逝ったら親族に返すつもりじゃ」
「昔、それで遺産相続時にモメにモメておりませんでしたか……」
「あれは勝手に妾に譲ると遺言を残しておったからじゃ。
面倒じゃから放棄すると言うておるのに、その息子は妾に近づきたいが為に受取れだの
その嫁は遺産目当ての女狐じゃと言いがかりつけおって、妾を何じゃと思うておる」
「字の通り、女狐じゃと思うのですじゃ……」
狐どもの話を聞き流しながら何とか雑草を刈り終え、休む間もなく今度はクワを使って耕すように指示された。
座りっぱなしは腰に来るが、これもこれで腰に来るな……。
「ぬッ――ふッ――!!」
こちらに来た時の着物のおかげで動きやすそうだ。
襦袢を買ってからそれを着る事が多いが、今回は襦袢だと動きづらそうだしな。
武士であるけど普段は百姓仕事をしている――と言うだけあって活き活きと作業をしていて、
傍から見れば戦国時代に戻ったのかと錯覚してしまいそうなくらい絵になっている――なるほどああやって耕すのか。
だが、見よう見まねでやってみただけでは音が全く違った……。
鈴音はザクッ――であるが、俺の場合はジャリッ――とした音しか鳴らない。
「全然腰が入っておらぬではないか、ほれこうやってもっと脚を引いて。
持ち方も違う、こことここを持って……腰を使って耕すのだ――うむ、そうだ中々筋がいいぞ」
「おぉ、これだと楽に耕せるな」
それでも足腰が悲鳴をあげるがさっきに比べれば遥かに楽になった。
耕し終えた頃には汗だくになっていたが不快感はなく、逆に気持ちの良い汗だった。
鈴音も汗だくになり袖で拭っている姿に少しドキっとしてしまう……。
下準備と言える段階を終えると、先ほど持って来た野菜をむしゃむしゃ食っていたごっちゃんが畑の畝を確認しにやってきた。
なるほど、土のエキスパートと言うだけあってちゃんとそう言ったのを確認しているのか……腹の肉で前かがみになれてないけど。
『よーしよし、これで良いぞーはっはっは』と言って等間隔に穴をあけた畝の上に着物を脱ぎ捨て――
「なななっな、何をしてるの!?」
「か、かのような場所でするでないっ」
狐の姿になり、そこで何と言うか――排便をし始めた……。
進んではポトリと次々と穴の所に落としていく……見てはならないので二、三個目あたりで後ろを向いた。
鈴音も見てはならぬと目を逸らしているが、狐達は何の問題もないかのように淡々とその様子を眺めている。
どうして何もおかしいと思わないのか……出来上がった畑に設置物が置かれているとか嫌がらせのほか無いと思うんだが……。
「あっはっは、ようやく終わったぞー」
どうなっても知らないと思いながら待つこと十数分、終わったと言う報告に覚悟を決めて振り向くと……
そこには見知らぬ五本の尻尾が生えた女性が立っていた……
「え、誰――?」
「だ、誰ぞ……ひいふうみい――まさか先の狐か!?」
「あっはっは、そうだぞー」
別人じゃんっ――!?
細くすらっとしていて背の高さがより際立ってる。
花魁のように肩まで露出しているぶかぶかの着物が以前のサイズが嘘ではないと表していた。
何なの、にび以外の姉妹って男をダメにしそう・不安にしそうな美人ばっかなの?
この人の場合はどう言うのだろう、体幹がしっかりした美人アスリートみたいだ。
「お主、童の元の姿を知ったら腰抜かすぞ? 元に戻ったら思いっきり張り倒してやるからの、覚えておれよ?
それにしても、ごっちゃんの細い身体久々に見たのじゃ。やっぱ美人なのじゃー」
「あっはっは、そうかそうかー。んー、にびも可愛いぞー」
「うにゃ~~」
「五尾よ、あまりこれを甘やかすでない」
「ふ、糞便をすればかのように痩せるのか……?」
「違うからねっ!? 人間じゃ絶対無理だからねっ!?」
七姉さんの指示通り、穴に入ったアレに土を被せその上から水をまいていくが。臭いがないのが救いだな……。
自分のならまだしも、他人のを見るのは何の罰ゲームかと思うぐらいブルーな気分になるぞ……しかもしっこ付きだし。
確かに昔は糞尿を溜めて肥料にすると言うのがあったが、量は少ないものの似たようなものなのだろうか。
「五尾の力の込めた糞尿は土を良質な物に変えるのじゃ、故にそれだけ凄まじい力を使うがの」
「何かその表現すっごい嫌だ……」
「もっと言えば、いつもは人の形でやるからの。今回は体裁もあって獣型でさせたのじゃ」
「あっはっは、あたしは別に気にしないけどなー」
だからあんなに肥えていたのか。かと言って納得もしたくないが……。
どうやらアレの中にさっき食っていた野菜の種が混じっているらしく、こうやって水を撒いておけば芽が出てくるらしい。
そうか、それでキュウリやトマトなどの夏向きの野菜を食べていたのか。
……ってあれ、そう言えば洞窟内で畑やっていたなら出られたはずじゃ?
「いやあ、元々あの洞窟は快適でなー。
最後は鬼七にゴロゴロどかーんって潰されてしまったが、あっはっはー」
赤毛の耳や尾が所々焦げている理由が分かった気がする。
慣れない農作業が終わった後、最後の仕上げだと傘を持って下から上にぐーんとしようとしていた。
こうすればすぐに芽が出ると言うがそれはやってはいけない。
その後空を飛べるかもしれないけど、やるなら夜中にやるべきだ。
全く関係ないがその晩、鈴音は熊のような何かにしがみついて空を飛ぶ夢を見たらしい――。
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その後、七姉さんの奢りと言う事で畑仕事を終えたその足でとある中華料理屋にやって来た。
七姉さんが奢ってくれるなんて――と思ったが、その金って俺のじゃないのか?
「違うわたわけ、あれは全て使うたわ。まっ妾が奢るより五尾が払うてくれるが正しいのう」
「の、のう……ここは何の店なのだ?」
そうか、外食らしい外食をしてないからちゃんとした飲食店を知らないのか。
ここの中華料理店は美味く、かつ値段もリーズナブルなのもあって結構な人気の店なので、昼の時間帯では大賑わいを見せる。
今はまだ昼飯と言うには早いぐらいだが、これからもう少しすると平日にも関わらず一気に混んでくるだろう。
それと人気のある理由がもう一つ別にある、それは――
「五尾よ、あれいくのじゃ。店主、これに超メガ盛りラーメンと唐揚チャレンジを頼む」
「はっはっはー良いぞ良いぞー、ついでに餃子もいってくれー」
「え、ちょっ超メガ盛りに――!?」
この店には、一時間以内に全て食えばタダ・三万円の賞金が手に入ると言う大食いチャレンジをやっているのも人気の一つだった。
盛りに盛られたラーメン・唐揚・餃子と三種の内どれかを選ぶのだが、
これまでに一つでも達成されていないと言うにも関わらず、この方々三種全部挑みやがった……。
バイトのお兄ちゃんから店主、ましてや客までもが『何言ってんの――?』って顔でフリーズしているし。
「えーと、この"らあめん"と"ぎょうざ"と"にらいため"……いや"はるまき"にしよう」
「童は唐揚げ注文するから、餃子を分けて欲しいのじゃ」
大変な事が起こっている事が分かっていないこの方達は、マイペースに自分の飯を選んでいた。
店主は面白半分で言っているだけだろと言うが、七姉さんは早うせいと冗談ではない事を伝え厨房の中が大騒動になっている。
失敗したら逆に三万マイナスなんだぞ……全部で九万だし、本当に大丈夫なのか……?
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「ほうこれが"らあめん"か。うどんより細く黄色い麺であるな、醤油の香りも良い――うむ美味いっ
どれ"ぎょうざ"とやら……あちちっ、うむうむこれは中々、弘嗣よすまぬがその"ちゃあはん"と申すのをくれぬか」
「あぁ、いいぞほら――」
「あ、童も欲しいのじゃ」
注文した料理が運ばれ、一画では和気藹々な一般家庭と言った感じの食事風景が展開されている。
鈴音は料理本では見て知っているものの、食べたことがない料理を研究するように食べていたが、
隣の別席に移動した七姉さんとごっちゃんの前に運ばれてきたとんでもない量の料理を見て、思わず箸を止めてしまっていた。
「はっはっはー、来たぞ来たぞー」
まずはラーメン(十人前)、これ専用に特注したラーメン鉢になみなみ入っている。
次に唐揚(十人前)、そびえ立つ茶色い山――。
最後に餃子(十人前)、雪が積もった日の汚れた道路――。
本来なら一時間であるが全種と言う事なので二時間になった。
置ききれず、更に別席にまで置かれている脅威的な光景に、店にやってきた客が全員目を見開いて凝視している。
「あっはっは、いいなーいいなー。じゃあいっただきまぁすっ!!」
段々と混み合って来たが、食い終わった客も事の顛末が見たいとそこに留まり更に混んで来ていた。
こんなの見入ってしまうに決まってるじゃん……。
「うん、美味い美味いっ。鬼七、唐揚の皿頂戴。あとこの餃子の皿持ってってー」
ニコニコ顔でどんどん平らげていくんだぞ……。
最初は『どうせ無理に決まってる、おちゃらけで注文しやがって』みたいな態度だった店主の表所がみるみる変わり、
今では吹き零れている鍋にも気づかないほど唖然としている。
しかも、一時間も経っていないのにほぼ半分食われてるのに加えて――
「店主、チンジャオロース四人前も頼むぞーふぁっはっは。にびチャーハン美味かったか?」
「ええ、肉にチャーシューが使われておって、大変美味しゅうございましたのじゃっ」
「じゃあ、それ五人前頼むぞーはっはっは」
更に追加してくんだもん……。
店の中にいる客は注文したのが一向に来ない事にも怒らないどころか、逆にごっちゃんを応援している。
まぁそりゃ美人が二人並び、その横では二人に負けないぐらい顔立ちの整った鈴音、可愛らしいにびがいるんだ。
しかも俺以外は店に似つかわしくない和服姿でより存在感を引き立たせているし、
ギャップとインパクトが強烈すぎて怒る事なんて出来ないだろうこれ。
「あれじゃの、ごっちゃんの挑戦を拒否しなかったのが悪いのじゃ。あの方、痩せておる時はこの倍は食うと言うのに」
「冬眠する前の熊か何か?」
神話にもあるな、火と大食い勝負をして云々のが――赤毛なのでまさにそれだ、薪を火にくべているようなものだった。
まさにそれだろう、食った矢先にエネルギーに変えて蓄積されていくんだから。
なお、この日を境に大食いチャレンジの賞金と罰金が引き上げられ、殿堂入りと言う事でごっちゃんの挑戦は禁止となった。
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「うぅ、見ておっただけで胃が……」
「俺もだ……」
全ての食事代がタダに、かつ賞金九万が手に入ったのだが
『ラーメンのもう一度できるか?』と言ったごっちゃんに店主が本気の土下座していた……。
その賞金はお年玉を貰った子供の貯金先、親の懐バンク(出金不可)――七姉さんの懐に納められていた。
その金で諭吉さん八人を帰して欲しい。
「ふむ――もうちと足りぬな。五尾よまだ入るか?」
「はっはっはー、余裕余裕っ」
「よし、じゃあもう一店行くのじゃ。お主らはもう食えぬだろうし帰ってても良いぞ」
「あの……姉様、何か物入りなのですか?」
にびが不思議に思うのも無理はない、今日の七姉さんは妙に金に五月蝿い気がする。
この前からも何やら雑誌を読みふけっては電卓をポチポチ叩いてたし、欲しい物があって金策をしているのだろう。
でもこの人ならこんな博打みたいな事しなくても金持ってる気がするのになぁ……
もしかすると自分の金を使いたくない人なのかもしれない。
「言ってなかったか? ではお主らは帰って準備しておけ、出発まであまり日が無いのじゃ」
「俺は全く聞いてないが、鈴音は?」
「私も何も聞いておらぬぞ、にびは?」
「童もじゃ、七姉様どこか出かけられるのですか?」
「キャンプに行くのじゃが?」
キャンプ――?
~今回登場キャラ~
ごっちゃん(五尾・赤狐)
色々大きい人。身長は180㎝と大柄、懐も大きい。
力を蓄えているとデブになり、その際の糞尿は痩せた土を肥えさせる。代わりに本人が痩せる。
普段は人型でもするが、今回は色々考慮しなければならないので獣型でさせられた。
にびが唯一甘えられる人(他にろくなのがいない為)でもあり、一番懐いている。
楽観的と言うより何も考えていないので良く七尾には怒られているが気にしていない。
体毛:赤毛 性格:楽観主義・豪快