第九話『紅狐とノア』
第九話『紅狐とノア達』
ノアがレイルス家の屋敷を出る少し前の夜、イーストのとある貴族の屋敷にて
「おい!待て!」
数人の騎士に見つかり一人の女性がある階の廊下を素早く走っていた。
窓から月明かりが差し、彼女の姿が映る。
真紅の短めな髪に金色の大きな瞳に猫のように細い瞳孔。
背は騎士の背に並ぶほど高く露出度の高い服を着ているが何よりも目を引くのは狐のような耳と尾。
彼女こそ国宝窃盗犯の紅狐であった。
彼女の足はものすごく速かったが前方の階段から多くの騎士が上がってきてすぐに囲まれてしまった。
「紅狐とうとう追いつめたぞ!さあ、その手に持った王家により承った国宝を返せ、紅狐」
しかし紅狐は左手で腰から一振りの赤い刀身の刀をゆっくりと抜き、不敵ににやっと笑う。
月の光で反射した赤い光が紅狐の顔を照らしぞっとしたものとなり、あたりの騎士が後ずさる。
紅狐はそのまま刀を振り上げると赤く輝いた刀身はさらに輝きを増し、光は突如その階全体に広がった!
窓から赤い光がこぼれ、その光が消えた後そこには誰も人はいなかった。
紅狐もうすでに姿を消し、騎士のいた場所には先ほどの騎士と同じ数の小さい狐が気を失って転がっていた。
「また、これも宝玉とは違う…、これも別の人のモノ。だとしたらもうこの国には…。」
紅狐はその屋敷の屋上で手に持った宝玉のついた腕輪をそのまま静かに置き姿を消した。
~
「カエサル!よかったぁ!てっきり死んでたのかと思ったよ!」
ノアが丘を抜け再び森に入りしばらく経った頃だった。しばらく聞いていないカエサルの声が聞こえ始めた。
どうやら持ち主の魔力の減った割合に応じてカエサル自身も同じ割合だけ魔力を消費して停止していたらしい。
安心してニコッとはにかむノアにカエサルはいつも通りの軽い悪態をつく
「死んでたって笑顔で言わないで下さいよ…ええ、バカが自分の能力わきまえずいきなり慣れない変身を複数回やったうえ暴走なんかするからこっちはひどい目にはあいましたよ
まあ、魔力ってのはここらの空気取り込めば自然に回復するんで」
「剣でも呼吸するんだ!ハハ…なんかカエサルって面白いねえ」
「全く呆れた阿呆ですよ…、いいですか?確かにあの時は仕方なかったとはいえ今後は連続で変身したりとか変な心配とか持った状態で変身しないでくださいね、ってかまだ会ってからそんなに経ってない間ですけれども
もし悩みがあるんでしたらちゃんと相談してくださいよ。」
「ああ、悩みは晴れたよ!…というかヴェル兄さんに助けてもらったんだ!」
「へえ、ああ?ヴェル?どこかで聞いたことある名前だな…
今この様子だと別れたかのですかね
まあともかく、あなたの頑丈さとか悪運さは今までの持ち主でも1,2を争うんじゃないですかねえ」
「ハハハ…褒めないでよ」
「そこだけは認めてあげるっすよ」
頬が赤くなったノアを見てカエサルはさらに呆れてしまったが何か考え事を始めたらしく少し黙る。
ご主人様に捨てられたことの悩み事を抱えていて変身後暴走したって話を聞いたとき通りで記憶が飛んでいたんだなあとは思っていた。
けれどなんとなく歩いてるうちにハーピーに変身した時の爽快感が記憶とともに蘇り、スライムの件もそうだけれど変身した後の自我って保てなくてどういった感じなのかなかなか印象を持てなかった。
でもそれを思い出すと変身ってすごい楽しいかも…!
「でもカエサル珍しいね!いつもの調子だったら冷たくあしらうと思ったのに」
「いやあ、折角の私の持ち主なんっすから死んでもらいたくはないだけっすよ、それに危なっかしい持ち主を持つと私自身も見ててハラハラするもので…」
「スリル満点ハラハラドキドキだね!」
「ハハハ!って、このやろう…
全く笑顔で言われると余計腹立つんだけど本人はそのつもりがないとこがまたね
え…、しかしアンタの課題としては変身した後自我を保つことっすねえ。
魔力のコントロールが下手っす」
「うう…下手ってはっきり言わなくてもいいじゃんかぁ…。
でも魔力のコントロール?
ボク魔法自体本当にあるなんて最近知ったばかりだしそんなこと言われてもわからないよ」
「それを知らないってのも魔法科学中心のアイスバーグに比べての錬金や機械技術中心のイーストの特徴ってことですかねえ…。
まあ、変身を繰り返すうちに慣れますよ。
ただ何度もしつこく言いますが負担のかかる変身の仕方は体に大きな負荷を掛けるっすからね」
しかし魔力っていうのは先ほど照らし合わせたけど碧眼の勇者に書かれてたお話の通り、アイスバーグ国のある位置に落ちた隕石に含まれていた物質のエネルギーのことを言うらしいんだ。
世界にはその細かい粒子とエネルギーが大気に広がっていてそれを取り込むことで魔力を回復させられるんだって!
難しいことはよく分からないけれど、アイスバーグの人たちが魔法技術っていうのを用いてるのもこの特色があるんだってカエサルから聞いたよ。
ご主人様もよく言ってたって聞いたしどういう国か気になるなあ
「そう言えば、その力を持つカエサルって騎士さん達が言ってた国宝なのかな?」
「いえ、あんなのはハッタリでしょうねえ、詳しいことは今の段階では話せませんが私自身はアイスバーグの技術を用いられ作られてるっす。」
また、アイスバーグかぁ、ご主人様もよくそこに出かけてたし不思議なお土産を貰ったりとかしてたけれど魔法については存在しないってご主人様には毎度言われてたんだ。
でも碧眼の勇者で書かれてることが気になってたんだ。
カエサルと出会ってこうして魔法が本当に存在するって知ったんだからそれは嘘になるよね!?
それにボク自身の目でアイスバーグがどういった国かを見てみたい!
と思っているととうとう森を抜け広い平原に出た。先ほどまでは木々が多く木陰も多かったが一気に日差しが視界に入り平原に生えた草が揺れ暖かい風が体にあたり髪や服が揺れる。
少し眩しくて目の上に手をかざしながら遠くを見ると海とそのすぐ近くに港町があった!
よく覚えてないけれどハーピーになった時に見えた本物の青い海だ!
あのすぐ近くに港町があったんだね!
「わぁ~、ねえねえ!カエサルすごいよ!海だよ海!ボク入ってみたいかも!」
「私が入ったら本格的に錆びそう…ってかまだあんた騎士に目をつけられてるんで変なまねはやめて下さいよ!?
それよりあと少しで港町につきますね。これからどうしますか?
優先すべきこととしては騎士から逃げることっすので私としてはここは首都寄りなので少し離れようってことで南の方の港町に行くことを提案します。
近隣のアイスバーグ国は要人じゃない限り手続きに2,3か月以上はかか・・・。」
「うん!アイスバーグ行こう!」
「おい、話を聞け」
読んでいただきありがとうございます!
3日後前後という言葉に甘え4日ぶりの更新になってしまいました、すみません;
結構前から書いていた後書きですが長くなってしまうので登場人物等の紹介は別個でまとめて出したいなと思います!(遅
では次回の更新は再び3日前後とさせていただきます




