プロローグ『捕われの姫』
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「…!やっと完成したぞ!豊かな心を持ちつつ、普通の人間に極めて近いワシの望んだモノが!
ワシにとってこれは例の彼女を超えたワシの最高傑作じゃ!ふぉっふぉふぉ…」
暗い地下の研究施設と思われる場所で茶色のローブを着た隻眼の老人がろうそくの火を頼りに怪しげな研究をついに完成させ歓喜の声をあげた。
「いや、じゃ~がワシ肝心なことを忘れてたような、う~ん。なんじゃったかな」
プロローグ『捕われの姫』
それはとても満月の綺麗な夜のことであった。
しかしそんな美しい月を見ることができない人がいた。
とある王国の城のある隔離された時計台の塔の中にいる、捕われの姫。
そこには窓もなく照らすのは蝋燭の灯だけ。
その明かりを頼りに彼女は一人本を読んでいた。
それはある勇者の冒険譚の絵本。彼女は物心づいた頃からこの閉ざされた世界にいて外への興味はこれっぽちも無かったが最近は違う。
その本を読んでからというものの捕われの姫は外への思いに馳せ、常に外への憧れを持つようになった。
しかし彼女は外へ出た記憶はない。また、この環境から抜け出す術を知らない。
ただ彼女は外への希望を諦めることはなかった。
いつか自分を外へ、旅へ連れてくれる英雄がやってくる。
彼女はそう思いながら今日も時計台の奏でる遠慮がちな城下町に届くことのない小さな鐘の音を聞く。
彼女のための鐘の音だ。
外の明かりが見えないため、この一日数回決まった時間になる鐘の音を頼りに一日を過ごす。
その鐘の音を聞くと心が沈む。
捕われの姫はパタンと机上に本を閉じて置くとベットの上に横になろうとした。
また今日も変わらない一日が終わった。
ため息をついたがふと何か下で騒ぎ声がするのに気付いた。
城への侵入者だろうか?
たまにこの城へ賊が忍び込むことがあるらしい。それは勇者ではない、無謀者だ。
どうせ自分には関係のない、やはり自分の思い描いたその勇者はただの儚い妄想にすぎないのだろうか?
そうため息をついてるとその声は大きくなってきた。
やけにうるさい、どうしたのだろう
と床に耳を付けて話の内容を聞いてみようと思ったとき
ズドン!!
というけたたましい音と周辺が激しく揺れる衝撃ともに周りが煙に覆われた!
思わず咳込むと高い少女のような声がした。
「カエサル!ボクを殺す気!?」
煙が晴れたときそこにいたのは絵本で見た満月を、背にして一人の剣を持った子供が立っていた。
顔肩にかかる長めの綺麗な亜麻色の髪に、14,5歳くらいの幼いが整った中性的顔立ちに綺麗な碧眼。
性別は分からないけれど月明りで照らされその姿は神秘的で同時にいつも本で思い描いていた勇者の姿に瓜二つだった!
こちらがぼうっとその子供を見ていると目が合う。
「あ、君が捕われの姫だね!こんな狭いとこなんかにいないで外に出ないかい!?」
「…。」
その子はこちらに屈託のない笑顔を向け、月の見える方を指さした。
「あれ?なぜ泣いてるの?」
その子に言われて自分の目に初めて涙が出ているのに気付いた。あまりに大きなことが重なったから気が動転していつの間にかパニックになっていたのか?
しかし今はそんなことは気にしてられない。
とにかくここで私は何かを言わなくてはならない…!
言わなかったら今まで思い描いたものが崩れもう二度とその機会は得られないであろうという直感を感じる。
今までたまに来るメイドとしか話したことがない私は何を言えば良いかわからなかったが勇気を振り絞って抑えてきた自分のわがままをやっと固く閉じた口を一生懸命に押し開け一言呟いた。
「外に、出たくて…。」
小さくかすれた声でその子には何を言ってるか聞き取れないのではないかと不安を感じる。
しかしその子はその言葉を聞くとすぐにニコッと笑った。
「じゃあ、行こ!捕われの姫様っ!あ、忘れてたボクの名前は…!」
どうも初投稿させていただく刺身と申します。
稚拙な文章ですが今回連載させていただく予定です。
こんな自分の作品ですがもし質問や感想がありましたらよろしくお願いします。
今回は序章と第一話の2話分を載せておきたいなと思います。
更新に至っては3,4日に一話ずつ更新する予定です。




