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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第五部 第八章 俺が盟主?
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13.継続?

 数日後、オウルさんご一家がセルリユ港から帝国海軍の御用船で旅立って行った。

 ていうか帰国したんだけど。

 ミラス王太子殿下がソラージュ王国の近衛隊を率いて見送ったそうだ。

 俺は遠慮した。

 お別れは済ませてあったしね。

 オウルさんご自身は泣きそうになりながら別れを惜しんでくれたけど、子供さんたちは立派だった。

 (シーラ)の前で片膝をついてきちんと礼をとる。

「しばしのお別れでございますが、心は常に御身の元にございます故」

「どうか姫様もご健勝で」

 (シーラ)も慣れたもので(カーテシー)ではなく両手を胸に当ててちょっと膝を落として応える。

「おげんきで。

 おやくめをはたしてください。

 おかえりをおまちしています」

「「お心のままに」」

 もはや劇団だな。

 それから二人はリズィレさんに抱かれた息子(ジーク)に向かって同じように礼をとったけど、何か様子が変だったんだよね。

 (シーラ)とは違った熱気を感じた。

 二人とも目が輝いているんだよ。

 何なの?

「息子達が申しておりましたが、ご子息(ジークフリート殿)に忠誠を誓いたいとのことでございます。

 我が(あるじ)を見いだしたと」

 オウルさんが言うには、息子さん達が俺の息子(ジーク)に一目惚れ、じゃなくて何なのかよく判らないけど魅了されたそうだ。

 それで臣下になりたいと。

 意味不明だよ!

(オウル)には判ります。

 主上(マコトさん)と初めてお目にかかった時の衝撃。

 自分の存在意義が肯定された感激。

 息子達も同様なのだと」

 さいですか。

 遺伝か?

 やはりホルム王家の人たちって「初代様」に由来する器質的な問題があるのかもしれない。

 まあいいか。

 子供の言う事だし。

 オウルさんの息子さん達も帝国に帰れば落ち着くだろう。

「より一層修行に励みます!」

「次にお会いするまでに(シーラ)様と主上(ジークフリート)様に仕えるに相応しい男になってみせます!」

 駄目か。

 重傷だ。

 別に何しようと自由ですから好きにして下さい。

 皇太子妃(メルシラさん)が無言で頭を下げてくれたことだけが救いだった。

 そういうわけで嵐のような帝国皇太子ご一家が去ると、ヤジマ屋敷は元の静寂を取り戻した。

 でもフレスカさんが残っているんだよね。

 ソラージュ残留の帝国軍部隊を配下に置いているらしい。

 元々軍人だからというわけではなく、オウルさんに指揮権を委譲されているのだそうだ。

「フレスカ様が帝国代表ということになります。

 これは公式な立場で、ソラージュに駐留する帝国軍の責任者ということで」

 帝国の大使とはまた別に、民間協力の形で残るそうだ。

 なるほどね。

 さすがに帝国の正規軍部隊が政治的責任者無しで外国に留まるのは無理があるからな。

 まあいいけど。

 フレスカさんは随員と一緒にヤジマ屋敷の近くの屋敷(いえ)に住むことになった。

 でもそこにはあまりいなくて、ヤジマ財団やヤジマ学園に通って何かやっているらしい。

 ユマさん達と一緒で頻繁にヤジマ屋敷(俺んち)に夕食を食いに来るんだけど。

 タカリか?

「フレスカ様は『すべての国と組織の(ミルトバ)連合』の設立準備委員でございます。

 多くの国から要員を派遣して頂いておりますので」

 さいですか。

 まあ好きにやって下さい。

 ララエ公国のアレサ公女(さん)も参加している。

 セルリユ興業舎に所属したまま、ヤジマ学園にも何とか復職できたということで頑張っているそうだ。

 良かったですね。

 でも立場が変わってしまっているからなあ。

 今やヤジマ学園でも一目置かれている。

 国際会議で列強の一角であるララエ公国の代表を務めた経歴は巨大過ぎる。

 地球で言えば日本とか英国とかそういう大国の臨時国連大使をやったようなものだ。

 そういう人が大学でただの実習講師なんか出来るはずがない。

 「格」が違いすぎる。

 ヤジマ学園側は急遽動いた。

 アレサさんを政治学部だか何だかの特任教授として迎える一方、本人の強い希望で狼騎士(ウルフライダー)も続けていただく事になったらしい。

 給料も跳ね上がったし専用の研究室も用意された。

 これは実用的な意味合いもある。

 ルリシア殿下がエラに帰国したため、教師側に王公族がいなくなってしまったんだよ。

 これでは高位身分の学生の押さえが効かない。

 今の「普通科」学生達はルリシア殿下の影響が残っているから平民の教師にも敬意を持って接しているけど、今後入ってくる者については判らないからな。

 だからララエ公国公女でありソラージュ王国近衛騎士でもあるアレサさんに白羽の矢が立ったと。

「何かするの?」

「普通に教師をやって頂きます。

 ご本人も承諾して下さいました。

 もともとあまりご身分には拘らない方ですので」

 久しぶりに訪ねたヤジマ学園で面会した学園長(モレルさん)が丁寧に言った。

 すっかり学園長が板についている。

 王太子(ミラス)殿下の側近はやらなくていいんですか?

「兼任しております。

 おかげで最近はあまり学園にいられなくなりまして」

 モレルさんはこうみえて王太子府の役職にもついているそうだ。

 教育関係を仕切っているということで、現在はむしろヤジマ学園にいない時の方が多いという。

 そういえばそうか。

 学園長とか理事長って学校にいなくても業務にあまり支障はないからね。

 日本の学校でも校長とか学長はむしろ政治的な存在だ。

 どっかで資金を調達したり、公的な付き合いに明け暮れている場合も多い。

 企業経営者もそうなんだよ。

 毎日社長室に籠もっている社長はあまりいないだろう。

「ヤジマ学園の体制も整って参りました。

 ただ、最近は学部が増えてまとめる事が難しくなってきているのが悩みで」

「だったら総合大学化しますか」

 うっかり口走るとモレルさんの目が光った。

 手元にメモ帳が現れる。

 まだ使っていたのか。

「その辺りをもっと詳しく」

 はいはい。

 これも久しぶりだな。

 でも大したことじゃないんだよね。

 ヤジマ学園は既に学部制が導入されているし、学部長だっている。

 むしろ今まで学部長権限が抑えられてきたのが不思議なほどだ。

「なるほど。

 学部長に学部の運営権限を持たせるわけでございますか」

「限定的なもので良いと思います。

 学部長に一部権限委譲して、学部内の問題は学部で処理して貰うんですよ。

 学園長は全学園に関係する事のみを担当するわけです。

 もちろん最終的な予算は学園長が握ります」

 予算さえ管理しておけばそうそう学部長独裁なんて事態にはならないからね。

「可能でしょうか」

「多分、既に似たような状態にはなっていると思いますよ。

 学部長は半ば政治的な存在ですから」

 なってないはずがない。

 管理者はそう成らざるを得ないんだよ。

 公式な権限がないのにそれをやらされることでむしろ先鋭化しているかもしれない。

「判りました。

 早速検討させて頂きます」

 モレルさんも鍛えられているな。

 いや体格は既に世界王者級だけど、精神的にも強くなったようだ。

 国の最高学府の責任者をやっていればね。

 しかもその学園には教師にも生徒にも貴顕がゴロゴロいるし。

 モレルさん自身は侯爵家の嫡子とはいえ跡継ぎを辞退しているし、今の身分は近衛騎士だから大変だろう。

「いえ。

 私もグレンも王太子(ミラス)殿下より代行権限を頂いておりますもので」

 さすが。

 名代ではないみたいだけど、確かにこの国の王太子(ナンバー2)代行に逆らえる人はあまりいないだろうな。

 判りました。

 アレサさんをよろしくお願いします。

 ヤジマ大公家近衛騎士に叙任した以上、一応は後見する義務があるからな。

 そういえばルリシア殿下もそうなのか。

 あっちは王太女になったからもうヤジマ学園には戻ってこないだろうけど。

「いえ。

 ルリシア講師はまだ休職中でございます。

 少なくともご本人から辞めるという連絡は来ておりません」

 まだやる気なの?

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