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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第五部 第七章 俺が英雄?
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16.北方種(エルフ)?

 あまりにも軽いがここに驚愕の事実が明かされた!

 といっても予想はしていたんだよね。

 前から思っていたんだけど北方種(エルフ)という名称、じゃなくて俺にそう聞こえる事が重要なんだよ。

 和製ファンタジーのエルフの特徴である長耳なんかないのに明瞭に「エルフ」と俺の脳が認識する。

 人外の存在、あるいは異種族。

 まあ、長寿に見えたり優れた容姿だったりすることも影響してはいるんだろうけど。

 でも(ハスィー)軽小説(ラノベ)だったらどう見てもエルフ的な存在だからな。

 少なくとも並の人類とは思えない。

 しかし「作った」というのは?

「その辺りははっきりしていません」

 ラヤ様が人間そっくりの動作で肩を竦めた。

「記録に残っていないのですよ。

 ある時期から北方種(エルフ)という存在が当たり前のように記載されるようになります。

 おそらくその頃に生まれたのでしょうね」

 生まれたのか。

 むしろ特定の特質を備えた子供が一定の確率で誕生するようになったと見るべきだろうな。

 家畜や穀物なんかの改良でも同じ方法が用いられる。

 優れた個体同士を掛け合わせ続けると、ある時期からそれが遺伝形質として固定されるらしいのだ。

 つまり、そういう性質を備えた生物の次世代が同じ性質を安定して備えることになる。

 人間で言えば美人の家系みたいなものだね。

 もちろん個体差があるから生まれる子供が全員美人だとは限らないけど、少なくとも他の家系よりは美人が多く生まれると。

 貴族や王家にイケメンや美女が多いのはそのせいだ。

 一方モブや並も生まれるんだけど、そういうのは廃嫡されたりよそに出されたりして家系から消える。

 厳しい(泣)。

 まあいいか。

 北方種(エルフ)生誕秘話は了解しました。

 で?

 するとユマさんが口を挟んできた。

北方種(エルフ)僧正様(スウォーク)によって生み出されたとおっしゃいましたが、どのような方法なのでございましょうか」

 ユマさん、判って聞いているよね。

 自分の思考経路の確認かもしれない。

 今の話はさすがのユマさんでも初めてだろうからな。

 天才(ユマさん)なんだから北方種(エルフ)についても色々考えてはいただろうけど、それは仮説だ。

 正しいのかどうか聞きたいのかも。

「マコトには判っていると思いますが、強制ではなかったようです。

 当時から既に教団の原形のような組織が作られていて、スウォークは表に出ずに人類を指導していたと考えられています。

 その仲立ち役だった一族が北方種(エルフ)の先祖です」

「ああ、なるほど。

 巫女もしくは預言者というところですか。

 祭祀の家系を作ったと」

「最初はスウォークの側仕えといった立場だったと思われます。

 その者どもに神託という形で婚姻を勧めるわけです。

 一族の中だけからではなく、市居からも特定の資質を持つ者を選んで娶ることでその特質を強化したのでしょう」

 あれね。

 軽小説(ラノベ)によく出てくる「庶民の子供なのに光の魔力がある」とかで貴族しか入学出来ない魔法学園に編入して来るとか。

 いやむしろ教会から神託が下って聖女として召し出されたりする方か。

 もちろん美形だ。

 そうやって選ばれた美少女は、まさか断るわけにもいかないよね。

 そして悪役令嬢(違)を駆逐して王太子(違)と結ばれる。

 本人の好き嫌いを無視して家系に取り込まれて子供を作るわけか。

 それを繰り返していけば金髪の美形で長寿のイケメン/美女の家系が出来上がると。

「違います」

 ラヤ様の容赦ない駄目出しが入る。

 でも北方種(エルフ)ってそういうものなのでは。

「そうですが、単に人間基準で美しくて外見上老化しない者を作ったわけではありません。

 それはむしろ副産物ですね。

 本来の北方種(エルフ)は、例えばラルレーンのような者だったようです」

 ラルレーンさんと言えば前トルヌ皇国皇王だったっけ。

 エラで会ったけどあれこそ純北方種(ハイエルフ)という美形かつ舌先三寸で神とか悪魔まで言いくるめてしまいそうな詐欺師(イケメン)だった。

 やっぱりそうなんだろうな。

 ラルレーンさんがトルヌ皇国の皇王だったのも頷ける。

 かつてのミルトバ帝国? もああいう純北方種(ハイエルフ)が治めていたんだろう。

「ラルレーン殿ですか?

 私にはそれほどの方とは思えなかったのですが」

 ユマさんが割り込んできた。

 そうなの?

 そりゃユマさんくらいの異能(チート)から見たら誰でも凡人に見えるかもしれないけど。

「私は傾国姫(ハスィー)こそが純北方種(ハイエルフ)なのではないかと考えておりました。

 あの周囲を歪ませるほどの情報発信力は巫女、いえ斎王に相応しいと」

 斎王って何だったっけ。

 いや俺の耳に斎王と聞こえている以上、俺の脳は知っているはずだ。

 ええと、確か伊勢神宮だったかに巫女として仕える天皇家の女性、だったと思う。

 つまり神に仕える最高位身分の女性ってことだよね。

 なるほど。

 こっちの世界で言えばセレイナ皇王陛下みたいなものか。

 あの人は自分で祭祀だと言っていたからな。

 でもラヤ様は首を振った。

 マジで人間臭いな。

 ひょっとして着ぐるみ?

 無理か。

「ハスィーは違いますよ。

 あれは突然変異の類いでしょう。

 確かに周囲を圧する(カリスマ)は大したものですが、制御(コントロール)が効きません。

 それに当時の我等(スウォーク)が求めていたのは祭祀であって帝王ではありませんでしたから」

 それはそうか。

 スウォークにしてみれば自らの力で輝くような存在は邪魔なだけだ。

 万一敵対でもされたら人類がスウォークの敵に回る可能性すら考えられるからね。

 操り人形じゃないと困ると。

「とはいえハスィーも北方種(エルフ)の精華の一人であることには間違いありません。

 あのような存在であれば、当時でも何らかの形で利用していたかもしれませんね。

 ミィルトーヴァは宗教国家と言って良いと思いますので、信仰を集められる手段は多いほど重宝したはずです」

 (ハスィー)なら女神にもなれただろうね。

 実際にそういう人もいたかもしれない。

 判りました。

 つまりスウォークの人たちは数百年くらいかけて北方種(エルフ)を育て上げたわけか。

 その頃には十分「国家」として立てるくらいの人口や体制が整っていたはずだから、自分達(スウォーク)は奥の院に籠もって表向きは北方種(エルフ)が統治していたと。

「その通りです。

 この関係は上手くいって、ミィルトーヴァは繁栄しました。

 野生動物たちとの関係も良好で、少なくとも数百年は黄金時代が続いたようです。

 しかし」

 そうだよな。

 ミルトバは滅亡したんだよ。

 何かがあって。

 ちょっと待って。

 ひょっとして、絵本に出てくるアレなの?

 ラヤ様が頷いた。

「よく判りましたねマコト。

 その通りです」

 やっぱしか!

 何てこった。

 知りたくなかったぜ。

「あの……絵本でございますか?」

 ユマさんがおずおずと聞いてきた。

 魔素翻訳では俺の思考を読み切れなかったらしい。

 まあ断片的過ぎたか。

「ユマさんも読んでませんか?

 かつて傲慢の罪で魔王に滅ぼされた国の話です」

「……真実だったのでございますか!」

 らしいね。

 困ったもんだ。

 これ、昔のSFとかの定番なんだよ。

 古代帝国が自然災害で滅んだとか。

 伝説とか神話にもよく見られる陳腐なパターンだ。

 アトランティスやムーとか。

 だから言いたくなかったんだけどなあ。

 でも事実ならしょうがない。

「ミルトバは魔王の顕現(自然災害)で滅んだんですね」

「その記録が残っています。

 ここトルヌにあったミィルトーヴァの首都を直撃した魔王は多くの人命を奪い、建物は(ことごと)く倒れたと」

 そうなのか。

 でも変ですよね。

 その程度で国って滅ぶもんだろうか。

 アトランティス伝説だと、国ごと海に沈んだことになっているんだよな。

 少なくとも本土は跡形もなく消えたはずだ。

 そのくらいじゃないと国って滅ばないんじゃない?

 ミルトバは北方諸国全体を領土とする広大な国家だったはずだから首都(トルヌ)を直撃されても他の部分が無事ならいくらでも再建出来そうなのに。

 支配者たる北方種(エルフ)の大部分がトルヌに居て命を落としたとしたって、教団(スウォーク)も一緒に全滅したはずはないし。

 ていうか今ラヤ様が存在しているんだから、スウォークは無事だったはずだ。

 地方に残った北方種(エルフ)教団(スウォーク)が頑張れば何とかなったのでは。

「そうはいかなかったのですよ」

 ラヤ様が淡々と言った。

北方種(エルフ)は、いえ我等(スウォーク)が民衆に見限られたのです」

 パネェ。

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