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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第六章 俺が舎長代理?
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2.演目?

 次の日の朝、俺はアレスト興業舎に出勤してシルさんから話を聞いていた。

 シルさんは、アレスト興業舎の現場を仕切っているらしい。つまり現場のトップだ。

 事務方のトップはラナエ嬢で、この二人がアレスト興業舎の真の指揮官ということになる。

 俺はまあ、お飾りだな。

 会社でも軍隊でも同じだけど、トップが多少アレだったとしても部下が優秀なら、組織というものは何とかなるものだ。

 俺に部下が出来るなんて、未だに夢としか思えないが。

 ちなみに、悪夢ね。

 査定とかさせられるんだろうか。

 無理だよ。

「現状を報告すると、とりあえずサーカス班以外は順調と言える」

 シルさんが、てきぱきと説明した。

 会議室に二人だけで、人払いしてあるのでシルさんも敬語モードを止めている。

 ありがたい。

 シルさんに敬語を使われると、居ても立ってもいられない気持ちになるからな。

「サーカスは遅れているんですか?」

「まあな。護衛班と郵便班は、やることがある程度判っているから、すぐにでも計画を立てて準備にかかれる。

 しかしサーカスは五里霧中だからな。漠然としたイメージはあるんだが、実際に何をやるのかというと、よく判らん。

 今みんなで頭を捻っている最中だ」

 そういえば、シルさんって統括兼務でサーカス班のリーダーでもあるんだっけ。

「難しいですか」

「マコトの話してくれた事は、判るんだ。だがアレスト興業舎でそれをすぐに実現するのは無理だし、予算の関係もある。

 特に目玉はフクロオオカミだからな。人もフクロオオカミも、お互いに慣れていないし、下手をすると姿を見せただけで観客がパニックになるかもしれない」

 それはそうだろう。

 何せ、体長が3メートル以上の猛獣といってもいい野生動物なのだ。

 ライオンだって驚くのに、怪物みたいなのがいきなり街中に現れたら、普通の人は逃げるよね。

「そこでだ。マコトを頼って悪いんだが、何かこう、ぱあっとしたアイデアはないか」

 無理です。

 ドリトル先生の話は参考にならないだろうし、そもそも俺は現物のサーカスなんか知らないんだよ。

 イメージはあるんだけどな。

 もの○け姫とか。

「何だ、それは」

「俺の世界の、まあ物語の一種で出てきた動物です。こっちのフクロオオカミくらいある森の守り神が、女の子を守って戦うんですよ」

 ちょっと違うけど、説明が面倒だからいいや。

「戦うのか」

「というよりは、その女の子のサポートですね。背中に乗せて走ったり」

 シルさんの目がギラリと光った、ような気がした。

「マコト、そこんところをもっと詳しく」

「も○のけ姫ですか?」

「そうだ。姫というからには、高貴な女性なのだろう? で、国を滅ぼされて、再興のために敵と戦うと。その○ののけとやらは、忠実にお姫様に仕えて活躍するんだな?」

「ええまあ、そんなところです」

 俺は、乗り出してくるシルさんに押されて後ずさりながら答えた。

 全然違う気がするけど、シルさんが怖いし、乗っているみたいだから肯定しておく。

 そもそも、俺はあのアニメってよく知らないんだよ。いや、テレビでやったから一応全部観たけど、血がドバッとかは苦手で。

 萌えもあまり、というか全然なかったしな。

 俺は、人外の萌えは認めない信条だから。

「そうか。なるほど。姫を助けて戦う。なるほどなるほど。よし」

 シルさんは、異様に乗っていた。

 もう、俺なんか眼中にないよね。

「よおし! 見えてきたぞ。マコト、ありがたかったぜ」

 シルさんは、俺の背中を叩くとそう言って去ってしまった。

 痛かった。

 キディちゃんを呼ぶ声が聞こえたので、すぐに班で打ち合わせするつもりだな。

 何を思いついたんだろうか?

 あいかわらず、俺は何もしてないけどな。

 ものの○姫の話をしただけで。

 ちょっと待ってみたが、シルさんが戻ってくる気配がないので、会議は終わったことにして、俺は会議室を後にした。

 さて、どうしようか。

 実は、アレスト興業舎にはまだ俺の席がない。

 倉庫の中を区切って部屋をいくつか作ったのだが、すべて各班と事務方に占領されている。

 俺のデスクを作るとしたら当然、事務室なのだろうが、ぎっちり詰まっていて余裕がないということで、断られた。

 アレナさんが、そのうち舎長室というべき場所を作りますから、と言ってくれているが、いつになることやら。

 自分たちのデスクは、ちゃっかり事務方に用意してあったからな。

 まあ、よく考えたら俺の部屋とかデスクとかを作っても、俺がそこで何をするわけでもないし。

 デスクならプロジェクト室に次席用のがあるから、そこに座っていろということか。

 でも、あっちに行っても輪をかけて何もすることがないんだけどなあ。

 ブラブラと歩いて倉庫を出る。

 でかい扉の脇には新しいプレートが取り付けられていた。

『アレスト興業舎』

 こっちはまだいい。問題は、その下に同じようなプレートがある点だ。

『プロジェクト・あの丘の向こう・分室』

 つまり、形だけだがここにはまだ分室の機能があるということだ。

 アレナさんとかマレさんが担当するんだと思う。

 それはいいんだけど、ツォルの奴の厨二発言がここにもついて回っているのが痛い。

 つくづく、失敗だったなあ。

 もうどうしようもないけど。

「マコトさん!」

 シイルが駆け寄ってきた。

 あいかわらずイケメンだ。

 この年代は成長が早いのか、初めて会ってから大してたたないのに、もう背が伸びている気がする。

 その割には、身体の成長は遅いな。厚みがなくて、ヒョロヒョロだ。

 それもイケメンの条件なんだから仕方がないけど。

 それにしても中性的な整った顔をしている。女装させたら、とびきりの美少女になるんじゃないのか。

 男の娘か。

 ちょっと俺の趣味じゃないけど。

 でもコスプレさせたら凄いことになりそうだ。

 コスプレと言えば、やっぱりアレだよね。

 魔法少女とか。

 実は、黒歴史だけど俺も魔法少女にハマッた時期があった。

 幼女趣味ではないので、念のため。

 昔の魔法少女は変身するだけだったみたいだけど、俺たちの世代だともう、本気で殺し合いするようになっていたからな。

 あれって魔法少女でも、幼女である必要性すらまったくないよな。

 昔の勇者ものを、主人公や廻りの脇役まで全部少女に変えただけだったと思う。

 それはそれで良かったんだけど、なんかだんだんエロくなってきたからなあ。

 萌えというより、もう露骨にエロ。

 ちょっとついていけなくて、フェードアウトした。

 ちょうど卒論やら就活やらで忙しくなっていたし、入社した後はアニメどころじゃなかったしな。

 でも、嫌いじゃなかったんだよね。

 髪が短くて、ボーイッシュな主人公(ヒロイン?)が多かったし。

 シイルを観ていると、なぜか男の娘という妄想が沸いてくるんだよね。

 失礼だよな。

「シイル、元気か?」

 照れ隠しに頭を撫でてやると、シイルはくすぐったそうに頭を振った。

 嫌がってないよね?

 それにしても、頭を撫でるのに手を上げなければならなくなってきたような。

 この調子だと、すぐに追いつかれそうだ。

「ボクたちは元気いっぱいですよ! 毎日お腹いっぱい食べてますから」

 屈託なく言うけど、それってつまりアレスト興業舎に雇われるまでは、腹一杯食えなかったということか。

 厳しいな。

 シルさんもいいことしてくれたなあ。

 俺がシイルたちをスカウトしたってのは、まったくの勘違いなんだけど、うまくいっているんだからそのままにしておこう。

 俺って最近、こればっかりだったりして。

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