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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第五部 第五章 俺が支配者?
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22.陰謀?

 ユリス王子(さん)の動きがおかしい。

 そんな情報が何とフレスカさん経由で入ってきた。

 ユマさんからは何も聞いてないんですがと言ったら、どうもユマさん自身が関わっているらしい。

 そういえばエラ王宮でルミト陛下に謁見した後、ユリス王子(さん)とユマさんが密談していたな。

「怪しいとはどのような?」

帝国皇太子(オウル様)との会談や儀礼式にいらっしゃいません。

 ユリス殿下は事実上のエラ王太子なのですから、国王(ルミト)陛下が臨席されない場合は代理として参加されるはずなのですが」

 そうなのか。

 確かにエラの王太子候補はユリス王子(さん)くらいしかいないと聞いているけど。

 でも正式に王太子に登極したわけじゃないんでしょう?

「それはそうなのですが。

 代理としてユラシオ王子殿下が出席されておられますし」

 ユラシオ王子(さん)ってあの茶坊主的な立場の人か。

 ユリス王子(さん)の同腹の弟王子だったっけ。

 それなら別に不思議というほどの事でもないのでは。

 ユラシオ王子(さん)だって正式なエラの王族だし、立場から言えば王太子に登極してもおかしくないよね?

「それはそうなのですが」

 フレスカさんは釈然としないようだった。

 帝国軍の参謀将校だったからな。

 参謀とはあらゆる事を疑うことから始まるとどっかで読んだっけ。

 普通だったら見逃してしまいそうな事からでも情報をほじくり出して真実を暴く、というか別に真実じゃなくてもいいから何かを掘り出す仕事だと。

 帝国皇太子の副官も似たような役目なのかもしれない。

 でもここでユリス王子(さん)が怪しい動きをした所で、帝国に何か支障があると思いますか?

「……ないですね。

 今のところは」

 そうだよね。

 今のエラと帝国は普通に国交を結んでいて、特に利害がぶつかっているわけでもない。

 貿易も大量とか不均衡とかではないそうだ。

 政治的にも経済的にもむしろほぼ無関係と言っていいそうで、現に帝国皇太子(オウルさん)が親善訪問するにしても特に何か条約を結ぶとか交渉するということもないらしい。

「オウルさんの随行団がエラ王政府の官僚と折衝していると聞きましたが」

「あれは現状維持と調整のようなものです。

 随分昔に条約を結んで現代では無意味になったり双方に不利益になっている物の改正が目的ですね」

 まあ、帝国もエラも既知世界では大国だからね。

 完全に無関係というわけにはいかない。

 それでも利益衝突とかはないんですよね?

「はい。

 だからこそユリス王子殿下の動きが気になります」

 気になりますと言われてもね。

 別に謎というほどでもないみたいだし。

 大体俺、古典○員じゃないから。

 フレスカさん、何と言うか参謀病に罹患しているのでは。

 何もないところから疑惑を掘り出すという。

 うーん。

 俺としてはスルーしたいところなんだよね。

 なぜかというとユマさんが関わっている臭いからだ。

 何かの謀略が進行中なのはまず間違いない。

 そしてユマさんが関係している以上、俺の不利益になるはずがないんだよ。

 まあ、結果的には。

 結局俺は曖昧なまま流してしまった。

 フレスカさんも証拠があるわけじゃないので問題にすることはなかった。

 オウルさんには報告したらしいけど、あの人はそんなつまらない話には関心がないからね。

 万一不都合があったら実力で粉砕してしまえばいいとか考えるタイプだ。

 元帝国軍情報局長(レイリさん)が前に言っていたけど、オウルさんは強すぎる。

 精神的にも肉体的にも。

 実際の所、護衛として帝国騎士(ライヒスリッター)の人たちがいるんだけどほとんど役に立ってないそうだ。

 オウルさんの方が強いとか(笑)。

 もちろん護衛の役割は相手を切り伏せたりするよりはむしろ盾になることだから無意味というわけではないんだけど。

 そもそも今のオウルさんをどうにかしようなどと思っている人っていないんじゃないかな。

 帝国国内ならまだしもエラに来てまで暗殺しようとか、どんな無理ゲーだよ。

 俺もそうだったからね。

 俺の場合はヤジマ商会が急激に発展する過程で不利益を被った人たちが殺ってしまえとばかり色々差し向けてきたらしいんだけど。

 俺自身はあまり遭遇していない。

 ユマさんが俺を囮にして当時のヤジマ屋敷に敵を引き込んだ時くらいかな。

 護衛の層が厚すぎて俺の所までたどり着けずに終わっていたらしい。

 それでも万一ということがあると言われて親善大使の名目で北方旅行に送り出されたわけだ。

 エラ王国にもそれで来られたようなもので。

 その時に説明して貰ったんだけど、現実には軽小説(ラノベ)や小説に出てくるような、外国まで追いかけてくる暗殺者なんかまずいないそうだ。

 いたとしても、護衛に囲まれていたら為す術がないとか。

 まったく無防備だったとしたって容易には殺れないと。

 チートな殺しの技みたいなものも存在しない。

 ゴ○ゴ13のような精密射撃技能があったとしてもおそらく護衛に囲まれた標的(ターゲット)を仕留めるのは無理だろう。

 なぜかというと暗殺側には地の利もないし、人数もいないからだ。

 人間を外国に派遣するって大変なんだよ。

 民間企業を考えてみれば判る。

 北聖システムでは外国にもシステムを売ったりしていたし、外国製のパッケージシステムも導入していたから、バグが出たりバージョンアップの時なんかは技術者が日本から海外出張することがあった。

 でもその人、基本的にはシステムを弄ることしか出来ないんだよ。

 飛行機から降りて空港から出たらもう何も判らない。

 現地支社の支援がなければ目的地にもたどり着けないかもしれない。

 着いた所で出来るのはサーバの調整だけだ。

 もしこれが誰かを暗殺する仕事だとしたらどうよ?

 現地支社なんかないだろうし、あっても人殺しの支援なんかするはずがない。

 地球でもそうなのに、こっちの世界では魔素翻訳が効いているんだよ?

 そんな大規模な後ろ暗い仕事(殺し)なんか隠せるはずがないのだ。

 というわけで護衛の人たちは無駄を承知でオウルさんについているわけなんだけど、完全に無意味というわけではない。

 殺し屋はいないが野次馬(パパラッチ)は当たり前にいるからね。

 そういう人たちを失礼にならないように排除するという役目があるとのことだった。

 ええと、何の話だったっけ。

「ユリス王子殿下が……いえ、それはもういいです。

 むしろユマ殿の動きが気になっています」

 フレスカさんが意外な事を言い出した。

「ユマさんが何か?」

「何と言いましょうか……すぐにお判りになるかと」

 フレスカさんもはっきりしない事を言って去った。

 何かみんな秘密を抱えているみたいだな。

 でも俺には何も言って来ないからいいのだ。

 何かあればそう言われるだろうし。

 こっちもあまり面倒くさい事にカカワリアイになりたくはないからね。

 誰もかまってくれないので、俺は朝練を終えた後は暇つぶしにお忍びでエリンサ興業舎? を見て回った。

 単純に歓楽街というだけではなかった。

 最初に思った通り、まずは巨大な物流センターがあって歓楽街はその付属品のようなものだ。

 少し離れた所にサーカスとか猫撫で施設とかが固まっていて、そこはいつもお客さんで混雑している。

 エリンサはエラ王国の王都だから、それなりに余裕がある人が多いんだよね。

 領地貴族の人たちも家族で遊びに来ていた。

 エリンサ興業舎? のお得意様らしい。

 金を持っている人は持っているからね。

 領地貴族は大抵自領に商会を持っていて他領と取引している。

 交易を握っているヤジマ商会とはお互いにお得意様だ。

 だから領地貴族自身が配下の人たちを連れてエリンサに来て商談し、その間にご家族が遊園地で遊ぶという方式が定着したらしいんだよね。

 これは他の国にはないパターンだった。

 ソラージュなんかでは領地貴族は領地からあまり出ないか、あるいは王都に常駐している。

 ララエはそれぞれの大公領がそれぞれ一つの国だし、それとは別に公都サレステも政治的経済的に独立している。

 帝国は別にして、両方とも地方からお上りさんが首都に遊びに来るようなことはあまりない。

 だけどエラは違うみたいで、歓楽街に見えたのはつまりお店が豪華だったからだ。

 顧客層が金持ちなんだよね。

 貧乏人とか庶民は相手にしていない、というよりはその人たち向けにはまた別の遊興地があるとのことだった。

「もちろん、そちらにも出店しています」

 説明役としてついてくれたエリンサ興業舎の人が説明してくれた。

「ただし、売り上げはともかく利益が少ないのでヤジマ商会(うち)が直接経営するメリットがあまりありません。

 なのでフォム様は庶民向けに『銀行』を始められまして」

 銀行ですか!

 つまりアレですね。

 大口の金貸しでは相手にされないような庶民を相手に小口の金融をやったと。

「……お判りになられるのですか!

 さすがはヤジマ大公殿下」

主上(マコトさん)はすべての事に精通しておられる」

 オウルさんが余計な事を言うけどそんなんじゃないので。

 つまりあれでしょう。

 フォムさんは庶民に小金を貸して同じ庶民相手の店をやらせたと。

 地球でもそういう制度を聞いたことがある。

 貧しい土地や発展途上国で庶民相手に金を貸す事業だ。

 マイクロバンクやマイクロクレジットだったっけ。

 担保なしで少額のお金を貸し出すんだよ。

 借りた人はそれを元手に事業を興す。

 と言っても屋台とか商店みたいなレベルだけど。

 解放奴隷の人たちなんかも投入したんだろうな。

 負債を抱えて奴隷落ちした人って、つまりはそうなるくらいの勝負に打って出られるほどの気合と根性があるわけだから。

「その通りでございます。

 もちろん闇雲に出店しても失敗する確率が高いですのでこちらから経営指導を」

 うん。

 そうやって庶民層も取り込んでいったと。

 やっぱスゲーよフォムさん。

 そういう発想、多分ジェイルくんやラナエ嬢にはないよね。

 ロロニア嬢でも無理だろう。

 近衛騎士になるだけのことはある。

「そのフォムの資質を見抜いて配下にしたのは我が(あるじ)でございます」

 いつの間にか側にいたユマさんが言った。

 神出鬼没ですね。

 忙しいのでは?

「用意が調いました」

 何の?

「我が(あるじ)

 これからご案内したい所があるのですが」

 よろしいでしょうか、と聞いてくるユマさん。

 俺に断れるはずないでしょ?(泣)

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