表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第一章 俺は不法入国の外国人?
9/1008

7.魔素?

 キター!(古いって)

 魔素だよ!

 あれだね。もうオ○ラ力そのものだね。

「魔素ですか」

「もちろん今君が言ったMAesooというようなものではない。

 君が、私の持っている概念である魔素を『魔素』という言葉で表す概念で認識した、ということだ」

 それから、マルトさんは感心したように続けた。

「というより君は魔素という概念を現すものを知っているのか。

 魔素が存在していればそもそもさっきの質問など出てこないはずだから、魔素などない世界から来たと思ったのだが」

 あー、それは俺が小説(ラノベ)やアニメを結構読んだり見たりしているからです。

 これは日本人の特性かもしれないな。

 俺よりもっと上の世代でも、アニメやゲームで魔法の概念を知っている人は当たり前にいる。

 多分日本人だったら魔法とか魔素とか、そういう概念を理解するのは難しくないと思う。

 俺の上司みたいなガチガチのリアリストは駄目だろうが。

 アニメなんか子供が見るもんだとか言っていたし。

 しかし、こんなことでマルトさんに怪しまれても困る。

 少し明かしておくか。

「魔素とか、そういうものは存在しませんが仮定的に想定されているんですよ。

 俺の世界……というよりは国では」

 嘘は言えない。

 日本人は変態だからな。

 もっとも欧米でも魔法使いとか魔女とかのお話は当たり前にあるし、こういう童話的な概念の理解は別に日本人だけというわけではないと思う。

 でも魔素とかそういうアレな方向性は日本の、それも少年向小説(ラノベ)だけのような気がする。

 最近は外国のオタクにも広まっているらしいが。

 萌えやカワイイと一緒に。

 しかしめんどくさい言い方になってしまったが、果たして俺の言葉はどんな風に伝わっているんだろう。

 マルトさんの言い方だと、俺が何を言っても『俺が考えている意味』が伝わるみたいだし。

 魔素とか言われても、俺自身そんなのはっきりとした認識があるわけではないからな。

 魔法に至っては「万能の力」とかになりかねない。

「ほお。

 ヤジママコトは、そういった方面の研究者か何かかね?

 見たところまだ若いようだが」

 やはり誤解されているっぽい。

「いえいえ、私は単なるソフト技術者です。

 仕様書に従ってコーディングするだけで。

 あ、あとテストとかインストールとかセッティングとかもやりますが」

 いかんいかん。

 何を言っているんだ。

 そんなIT系の専門用語を使っても、どうしようもないだろうが。

 それにしても、今の台詞はマルトさんにどう聞こえたのか。

 恐る恐る伺うと、マルトさんの顔色が少し変わっていた。

 何か、ヤバいことを言った?

「……よく判らないが。

 ヤジママコト、君がそういう方面の専門家であることは判った」

 うーん、やっぱり何か誤解があるな。

 だがどういう風に誤解されているのかよく判らん。

 魔素とかの専門家っぽく思われていたりして。

「釈迦に説法かもしれんが、話を戻すとこちらの世界では意志の伝達は必ずしも言葉に頼っていない。

 だが、言葉が必要ないわけではない」

 マルトさんは説明を続けてくれるようだった。

 最初に「俺の世界には魔素なんてもんはない」と言ったことを覚えていてくれたらしい。

 やっぱこの人頭がキレるわ。

 それにしても「釈迦に説法」か。

 そんなようなことわざが、こっちにもあるんだろうな。

 とりあえず相づちを打っておく。

「音に乗せて意志が伝わるということでしょうか」

「その通りだ。

 だが有史以前には魔素がなかったか、あるいは意志伝達機能が働いていなかったとされている。

 でなければ言葉などというものが発達するはずがないからな。

 だがいつの頃からか、何を言っても思ったことが相手に伝わるようになっていた」

「……」

「それはつまり、別の言葉を使っている人とも意志が通じ合うようになったということだ。

 また言葉を発することができない赤子や幼児でも、声さえ出せれば自分の意志を相手に伝えることが可能になった」

 おお、テレパシーの世界だ。

 だけどそんなに便利になったら、言葉なんか廃れてしまいそうなものだけど。

「凄いじゃないですか。

 でも言葉は残っている?」

「魔素による意志の伝達には、いくつかの制限があるんだ。

 うまいことにと言っていいのかどうか判らないが、研究によれば声が届いたからといって、意志が伝わるとは限らない。

 つまり、距離制限がある」

 へー。

 それはまた、便利なような不便なような。

「しかも話す内容に整合性がないと、意志がうまく伝わらない。

 理論的には出鱈目な発音でも、意志がはっきりしていれば伝わるはずなのだが、会話がきちんとしていないと訳がわからない話に聞こえる」

 ますます便利だ。

 というか、まるで話し言葉を廃れさせないための設定のようだ。

 やはり設定(ラノベ)か。

「つまりある程度離れたら言葉でないと意志が伝わらないし、そもそもきちんと話さないと会話にならないと」

「そうだ。

 ちなみに今我々が話しているように、お互いに自分の話し言葉がしっかりしていれば、意志は伝わる。

 お互いに違う言語を話していても、そうなる」

 これって、やっぱり魔法だよね?

「それで話し言葉は廃れなかったと」

「話すだけでなく書いたり読んだりする方もだ。

 とはいっても実は文盲の者は少なくない。

 なまじ意志が伝わるもので、肉体労働者は生活する上で文字の読み書きが必要なくなってしまっているからな」

 ああ、そういえば地球でも、産業革命以前の時代は庶民のほとんどが文盲だったと聞いたことがある。

 話し言葉が判れば、仕事や生活するのに文字を知っている必要がないからだ。

 ましてこっちの世界では言葉を知らなくても会話できるわけだからね。

 ますます文盲率が上がりそうだ。

 だがちょっと待てよ。

 話し言葉があれば、種類は何でもいいということか?

 いや言葉になってなくても、例えば鳴き声とかでも大丈夫なのでは。

「だったら、ひょっとしたら動物とも会話できるんですか」

「出来る。

 とはいえ、ごく一部とだがね。

 大抵の野生動物はカタコトになる。

 会話というほどのものではないな。

 だが意志というか感情に乗せた断片は伝わってくる。

 ある意味、人間より分かり易い」

 うわー!

 それって最悪かもしれない。

 家畜の感情が判ったら、屠殺とかできなくなりそうだ。

 それとも慣れるのだろうか。  

 マルトさんは俺が顔をしかめたのを見たのか、苦笑して言った。

「良いものではないな、確かに。

 だから我々はめったに野生動物を害さない。

 ドラゴン殺しなどは、ほとんど禁忌に近い」

 は?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ