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サラリーマン戦記 ~スローライフで世界征服~  作者: 笛伊豆
第三章 俺は冒険者チームのインターン?
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6.ダンジョン?

 ホトウさんの自伝は、本人が恥ずかしがったこともあって早々に切り上げ、俺は冒険者について聞いてみた。

 何も判らないので、最初から説明してくれと。

 ホトウさんの苦労を思うと、実にけしからんズルである。小さい頃から努力して、自力で這い上がっていったホトウさんに、その果実だけを提供しろと言っているようなもんだからな。

 だって何でも聞いてくれと言うんだもん。

 マルトさんのコネって、思ったより強力なんだ。

 いや、いい人と出会って良かった。

 ラノベでもここまでうまくはいくまい。

 ちなみに、冒険者についてはソラルちゃんもジェイルくんも大して知らなかったので、ほとんど判っていない。

 顧客は、結果だけを求めているのであって、その過程については知らなくてもいいからだ。

 まあジェイルくんは、もっと知っているような雰囲気もあったけど、多分専門家ではない自分が中途半端な知識を伝えることもないと思っていたのだろう。

 ホントに切れるな、あのイケメンは。

「まず、冒険者って何をするんでしょうか。いえ、ギルドの専門業務から外れた事案全般という風には聞いているんですが、具体的なことがさっぱりで」

「そうだね。簡単に言えば、トラブルシューターかな」

 トラブルをシュートするんですか。

 ホトウさんが言うと、どうしても超長距離カスタムライフルで、誰かを狙撃するように聞こえるんですが。

「ギルドの専門業務はそれぞれ担当する業者がいるんだけど、その業者に解決できないというか、当事者すぎて対処できないような仕事が回ってくるんだ。

 例えば、ある仕事をした業者が顧客とトラブルになってしまったような場合、その業者や同業者が何をやってもこじれるばかりだろう?

 僕たちは、そういう所に呼ばれて両者を取り持ったりすることもあるね」

 きれい事だな。

 そういう場合は、むしろ拗れに拗れてどうにもならなくなっているはずだ。で、冒険者が力づくで解決するとか。

「というのが建前で、実際にはあらゆる手段を用いてコトを納めるというのが冒険者の仕事だよ。

 ただし、冒険者にも色々あって、なりふり構わないで押し通すところもあれば、出来るだけ綺麗に片付けることを信条としているチームもあるね」

 ホトウさん、そんなに正直でいいんですか。

 俺はいつか、冒険者業界から離れる男ですよ。

 で、『栄冠の空』はどっちなんですか。

「うちは、どっちかというとなるべく綺麗に済ませる方だね。ほら、一応この街ではトップ3に入るチームだし、あまりアコギな所を堂々と見せると評判に響くから。

 まあ、最終的にどうしてもやらないと駄目な時はやるけど」

 「殺る」と聞こえたんですが、まあいいです。

 ところで、まだ具体的にどうするのか聞いてないんですが。

「それは個々のケースで違うね。まあ、僕のチームは大抵野外におけるトラブル、つまり害獣の被害にあった村の支援や、危険なダンジョンの予備調査といったことが多いかな」

 ちょ、ちょっと待って!

 ダンジョンって聞こえたんですが、そんなもんがあるんですか?

 ホトウさんは、軽く微笑んで頷いた。

 いや、目がスナイパーなんで、獲物を見定めているようにしか見えないんですが。

「あるよ。まあ、ダンジョンというのは言い過ぎかなあ。大抵の場合、村の人や流れの商人が見つけた変なもの、というレベルだね。

 そういうものは、ギルドに報告する義務があるから、見つかったという連絡が来たら、僕たちが出動するわけ」

 困ったなあ。

 こっちの冒険者って、警備員じゃなかったのか。

 そんなガチなラノベの設定が出てくるとは思わなかった。

 でも、考えてみたら『栄冠の空』は一流のチームだし、依頼料も結構高いだろう。つまり、個人の問題や街のちょっとしたトラブルで呼ばれることはめったにないはずだ。

 勢い、高額の依頼料を払えるギルドやマルトさんみたいな大商人が顧客になるし、そういう所から来る依頼が簡単に解決できるものであるはずがない。

 ダンジョンというのも、おそらく迷宮というレベルのものではあるまい。俺の知識の中の「冒険者が行う仕事」のうち、何か変なものを調査するというような分類のものが、こっちの世界の『ダンジョン』になるというわけだ。

 なんか、この魔素ってネットの翻訳機能みたいだな。大体正しいんだけど、時々突拍子もない訳が出てくる。

 まあ、間違ってはいないんだが。

「仕事は大変ですか」

「大変というのがどういうレベルなのかにもよるけど、出来ない仕事は回ってこないよ。というより、出来ないことが判ったら依頼の途中でも断る。

 無謀に突っ込んでいく冒険者は、長生きできないからね」

 そりゃそうだ。

 仕事なんだもんな。

 ラノベでは、初級の冒険者がバタバタ死んだり、高レベルのパーティがよく全滅したりするけど、実際にそんなことしていたら、あっという間に冒険者なんかいなくなってしまうだろう。

 なり手もないだろうし。

 人が育つには時間がかかる上に、人は場数を踏まないと成長できないからな。

 死ぬくらいなら撤退だ。

「もちろん、危険がないわけじゃない」

 ホトウさんは真面目に言った。

「特に、未知のものに対処する時なんか、何が起こるか判らないしね。また、慣れている事でもイレギュラーな事態はよく起こる。

 そういう意味では、大変な仕事だよ」

 うん、判った。

 俺はインターン終えたら辞めます。

 あるいは何とかして、荒事と無縁な仕事につくしかないな。

 それでも冒険者やってる限り、危険はつきまといそうだけど。

 そんな俺を見て、ホトウさんは笑った。

「前にも言ったと思うけど、そうそう危険なことにはならないよ。少なくとも、マコトをいきなり前線に出すようなことはしない。念のためだよ」

 そうかなあ。

 ホトウさんは、おかしそうに言った。

「そうそう、早速明日から入っている仕事があるんだよね。朝から出るから、準備しといてね」

 ……準備?

 遺言とか?

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