綴る
この部屋から一歩出れば、私は祝福をおくることを第一に考えるようになります。
そうでなく、ただ思うがままに自らの心の内を、言葉として綴ろうと思えるのが、この部屋の中。
紙へと並ぶ文字には、様々な種類があります。
それは、時には感情、時には出来事、時には歌、と制限はありません。
ただ感じ、思い、手が動くままに――。
これは、そんな言葉を文字として現したものに、すぎません。
ある時、同じ《アクティース教》の神官の方に、こう尋ねられました。
「貴方は毎日、何を書いていらっしゃるのですか?」
と。
私は少し、嬉しさをもって答えました。
「いろいろなことです。その時に感じた思いであったり、その日に起こった出来事であったり。特に何を、と決めているわけではないのです」
と。
その方は、ひとつ小さくうなずいて、
「そうでしたか」
とだけ仰いました。
これは、私の趣味です。
それ以上にも、それ以下にもなりようのない行為。
けれど、その行為は限りなく、私を楽しませてくれます。
まるで、色とりどりに輝き踊る、精霊様の舞のように。
一方で、静かな川のせせらぎ。時には、飛び爆ぜる魔法戦。
決して単調ではないその楽しさが、私を惹きつけてやまないのです。
そうして、いつも書き終わった後に思うこと。
言葉として紡がれないこの文字も、いつかは祝福となるように。
綴る文字たちに見送られて、私はそっと、部屋を出るのです。