風
今日は風の強い日です。
立っているだけでも、コウコウと言う音が耳をかすめ、青と金が互いに引き立てあう《アクティース教》の神官服を、もっていこうとするのです。
ゆったりとした神官服は、とても風にあおられやすい。
ともすれば、同じようにゆったりとした歩調まで、もっていかれかねないほどに。
進む街中に視線を巡らせて見れば、男性は比較的何事も無いように動く反面、女性は私と同じく、時折ふらりと足をさまよわせています。
子どもなどはもっと分かりやすく、唐突に吹き抜ける一陣の風に、その小さな身体に宿る力全てを使い懸命に抗っています。とっさに、近くにいた男性が一人の少年を抱えて庇っていました。
ふと見上げた空は、私の瞳の色として良く例えられる、蒼穹、と呼ぶべきもの。
この青空のどこから、強い風が舞い降りてくるのでしょう。
疑問に思わず首をかしげた途端の強風に、今日はおとなしく神殿へ帰ることにしました。
眼前の窓は、空の青さと同じように、外はいまだに風がいたずらをしていることを、その身を揺らして教えてくれます。
カタカタカタ、という音は、閉めてなお外から響く空を切る音と共に、まるで風の楽士による音楽のよう。
時に強く。時に優しく。頬を撫で、髪をさらい、それでいて服をあおる、風の舞。
それに混じり、部屋の外から小さく聞こえる、可愛らしい歌声。
つい、耳に届く風音にあわせた歌を歌いたくなるのは、どうやら私だけではないようです。