表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/61

この雨に願わずとも ~流星の旅人~

 


 突然強さを増してきた雨に、ふとエストレアさんの事を思い浮かべました。

 彼もまた自らの真実を知った日から、早数日。

 今日は、エストレアさんがこの街を出て、また旅を始める日です。




 昨晩から振り続く雨は、植物にとっては恵みの雫。

 けれど、旅立つ人々にとっては、少しばかり厄介なもの。

 特に今日の雨は酷く、石畳を跳ねるその音が、どこにいても驚くほど鮮明に聞こえてきます。

 これでは、出発を延期される方も、少なくはないでしょう。


 ――しかし、エストレアさんは、雨が止むのを待つ気は無いようです。


 少し意識すれば分かる、彼の魔力。

 それが、すでに街の出入り口に在ることを感じます。


 ゆっくりと移動するその魔力は、まるでこの雨をその身に沁み込ませることを、楽しんでいるかのよう。

 ……いいえ、きっとこの雨さえも、彼は楽しんでいるのでしょう。

 ――世界と言う名の父が与えるものなのだと、分かったのですから。


 かくいう私も、ともすれば轟音にもなりかねないこの雨を、楽しんでいます。


 耳に響くその音にさえ、命の気配を感じて。

 跳ねる力強さと大粒の雫に、魔力を感じて。


 ふと意識をすればそれだけで。

 世界は全て、確かにあまねく魔力で満たされていたのだと。

 そう、気付くことが出来ましたから。


 澄んだ蒼き気配は、静かに静かに世界に満ちて。

 その中に、確かに〝兄弟〟の温もりも感じて。


 それは、きっと。

 この雨に願わずとも。

 必ずまた、会えるよ、と。


 この降り続く雨の中、旅立つ〝兄弟〟が、告げている証。


 であるならば。

 私は、《アクティース教》の神官として、祝福の祈りをおくりましょう。


 〝貴方の旅路に、祝福を〟


 ――どうか、よい旅を。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ