ただ生きてと願う
眼前で震える幼い子ども。
温かい治癒の魔法を精一杯降らせて。
けれどもその震えは治まらなくて。
効かないとは、思わなくとも。
まるでその小さな体を、透りぬけてしまっているよう。
普段なら口にする祝福の言葉も、今はその余裕さえなくて。
ただ、切に祈る。
この子に、生を。
未来を。
温もりを。
どうか、と願う。
この小さな手が、もう一度何かを掴めますように。
この伏せた目が、もう一度世界を映しますように。
この息つく口が、もう一度元気に話せますように。
もし、あなたが元気になってくださるのなら。
たくさんの人達が、笑顔を浮かべて喜ぶことでしょう。
その小さな頭を撫で。
美味しいお菓子を食べさせて。
夜になるまで一緒に遊んで。
あなたが今在ることを、心底から嬉しく思うのですよ?
私だって同じです。
他の《アクティース教》の神官も。
誰もがあなたのことを、よりいっそう祝福して。
誰もがあなたのことを、よりいっそう抱きしめて。
「よかった」と。
「がんばったね」と。
微笑みかけるのですよ?
だから。
さぁ、あなた自身の心で、未来を描いて。
ここで天と地へ還ることが、望みで無いのならば。
諦めずに、この温もりへと手を伸ばして。
〝希望〟はここに、いますから。
あなたの目の前に、ありますから。
光を受け入れ、こちら側へ。
治癒の光は、あなたの為に。
さぁ――目を覚ましてごらん?
あなたがその目に映すのは、多くの人達の、とっておきの笑顔ですよ。
……あぁ。
よかった。
ありがとう。
――生きることを、選んでくれて。




