表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/61

星巡り ~流星の旅人~

七夕と言えば――。

 



 美しい星空の今晩は、とても不思議な出会いがありました。




 今日は、昼過ぎから祝福を届けに、遠方の村へ行っていました。

 しばらく村の方々と話をして、村を出たのは普段より少し遅い時間。神殿のある街が先に見え始めた時には、すでに夜が訪れていました。


 どの宗教の神官も、光の魔法は得意なので、暗闇を恐れることはありません。

 加えて、今晩は特に、星々が多く明るく輝いていたため、むしろ辺りは明るいくらいでした。


 瞬く煌めきは闇色の中にあっても鮮やかで、遠くの天を眺めながら、街までの道を歩いていた時。

 ふと、澄んだ声音の歌が、聞こえたのです。



 煌くものよ 汝は(しるべ)

 悠久を知る 夜の精

 闇に生まれ 光にとけ

 されど(いずる) 巡逢(じゅんあい)の君

 我今ひとたび 汝に祈る

 消え行く道を 空の上に

 逢うべき(みこと)へ 導きたまえ



 旅の迷い人が紡ぐその歌を辿り、少し逸れた道の脇。

 小さな川が流れるその傍に、男性とおぼしき姿がありました。


 ……今思えば、その後ろ姿を見た瞬間から、すでに私の中の何かが、静かに動き出していたのでしょう。


 不思議な衝動に身を任せ、私は若い青年であろう彼へ、こんばんは、と声をかけました。

 それに、わずかな迷いも驚きも無く、青年は振り向き答えてくれました。


「こんばんは。素敵な星空の夜ですね」


 その澄んだ深い蒼瞳と、視線が交わった瞬間。

 ふわりと、身体が軽くなるような気が、したのです。


 何故か、私を見つめる彼もまた、私と同じように瞠目をして。

 何故か、よく似ていると思える、淡い水色に似た白銀の長髪を、風に揺らして。


 ――出逢えましたね、と。

 ――〝兄弟〟よ、と。


 そう、思ったのです。




 エストレア、と名乗って下さったその青年は、旅をしていると語ってくれました。

 互いに、今晩の星空を素晴らしいと思っていた私たちの会話は弾み、宿を諦めていた彼を神殿へと招待して、今に至ります。


 三日ほど、この街でのんびりすると言っていた彼。

 まだ何度か、語らう機会はあるでしょう。

 私には、それがとても、嬉しいことに思えるのです。


 ……本当に、不思議なものですね。


 まるで――ずっとこの時を、待っていたかのよう。


 願わくば。

 私がおくる祝福が、彼に届きますように――。




 ――燦然と輝く星々の夜に、この上なき、感謝を――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ