星巡り ~流星の旅人~
七夕と言えば――。
美しい星空の今晩は、とても不思議な出会いがありました。
今日は、昼過ぎから祝福を届けに、遠方の村へ行っていました。
しばらく村の方々と話をして、村を出たのは普段より少し遅い時間。神殿のある街が先に見え始めた時には、すでに夜が訪れていました。
どの宗教の神官も、光の魔法は得意なので、暗闇を恐れることはありません。
加えて、今晩は特に、星々が多く明るく輝いていたため、むしろ辺りは明るいくらいでした。
瞬く煌めきは闇色の中にあっても鮮やかで、遠くの天を眺めながら、街までの道を歩いていた時。
ふと、澄んだ声音の歌が、聞こえたのです。
煌くものよ 汝は導
悠久を知る 夜の精
闇に生まれ 光にとけ
されど出 巡逢の君
我今ひとたび 汝に祈る
消え行く道を 空の上に
逢うべき命へ 導きたまえ
旅の迷い人が紡ぐその歌を辿り、少し逸れた道の脇。
小さな川が流れるその傍に、男性とおぼしき姿がありました。
……今思えば、その後ろ姿を見た瞬間から、すでに私の中の何かが、静かに動き出していたのでしょう。
不思議な衝動に身を任せ、私は若い青年であろう彼へ、こんばんは、と声をかけました。
それに、わずかな迷いも驚きも無く、青年は振り向き答えてくれました。
「こんばんは。素敵な星空の夜ですね」
その澄んだ深い蒼瞳と、視線が交わった瞬間。
ふわりと、身体が軽くなるような気が、したのです。
何故か、私を見つめる彼もまた、私と同じように瞠目をして。
何故か、よく似ていると思える、淡い水色に似た白銀の長髪を、風に揺らして。
――出逢えましたね、と。
――〝兄弟〟よ、と。
そう、思ったのです。
エストレア、と名乗って下さったその青年は、旅をしていると語ってくれました。
互いに、今晩の星空を素晴らしいと思っていた私たちの会話は弾み、宿を諦めていた彼を神殿へと招待して、今に至ります。
三日ほど、この街でのんびりすると言っていた彼。
まだ何度か、語らう機会はあるでしょう。
私には、それがとても、嬉しいことに思えるのです。
……本当に、不思議なものですね。
まるで――ずっとこの時を、待っていたかのよう。
願わくば。
私がおくる祝福が、彼に届きますように――。
――燦然と輝く星々の夜に、この上なき、感謝を――




