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緑の声
さわりと揺れた木の葉に、そっと瞳を閉じた時。
風に流れるようなささやきが、聞こえてくるような気がするのです。
金の花びらはすでに散り、若葉まばゆき巨樹のそば。
涼しげに歌う、小鳥の鳴。
遠くから響く、聖歌の音。
そして奏でる――葉擦れの声。
言葉としては、聞こえなくとも。
確かな意思が、そこにはあるから。
「おはようございます」
そう言えば。
風に誘われたざわめき、四回。
「今日も日陰をありがとうございます」
笑顔で告げたその後に。
強い葉擦れが、計八回。
――おはよう。
――どういたしまして。
きっと、そう答えてくれている。
エルフ族であれば、正しく〝声〟が聞こえたのでしょう。
けれど、たとえエルフでなくとも。
彼らは優しい私たちの隣人。
鮮やかな緑を大きく広げ、今日も木々は日陰をつくってくれています。
――さぁ、今日もお入り。
そうして日光を遮った陰に、私は今日も癒されるのです。




