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 目覚めの耳に、かすかな音。小さな小さな葉擦れのようでいて、確かな水の気配。

 そっと布を払った窓から見えたのは、薄い雲に覆われた空と、靄がかった街の景色。


 小雨の降る日はいつも、神殿へと訪れる人が少しだけ少なく、寂しく感じます。


 恵みであり、時に煩わしくもある天からの贈り物は、植物を喜ばせ、私たちにフードをかぶらせます。

 そっと視界を狭めるその白い布の先には、色は違えど同じようにマントをはおり、フードをかぶる街の人々の姿がありました。


 いつものように微笑みながら足を進める私の耳には、サアァ――と言う音色が届きます。

 それは時に、ぽとぽと、ピチャン、とその音を変えながら、私の耳をくすぐるのです。


 今日は、雨の音楽が街一番の喧騒になりそう。そんな予感は、きっと昼過ぎには消えてしまいますが。


 一陣の風が、神殿へと帰ろうとした私のフードを持ち上げました。

 透明な水の飛沫が顔にかかると同時に、水色に見えると評されることもある自身の髪が顔に張り付いて、少し困りました。

 いたずらな風に苦笑をこぼそうにも、すでに髪には小さな水の珠がいくつものっています。目に付いたところをさっと払った私に気づいた一人の少女が、神官さま、と私を呼び、水滴をぬぐう布を貸してくれました。


 時に災いともなる雨ですが、今日は素敵な出会いをもたらしてくださったようです。


 お礼と共に祝福の言葉をおくり別れたあの少女に、確かな幸福が訪れますように。


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