新たな始まりに祝福を
長いようで、あっという間だった一年。
今年最後の、《アクティース教》のお仕事が始まります。
毎朝恒例の聖歌を奏で、今日の始まりを祝福した後、私たちは今までとは少しだけ違うことをします。
それはそれぞれに割り振られていて、今日だけは、皆がやるべき事のためにばらばらに動きます。
ある人は、神殿の様々なところにある魔法具の魔力補充を。
またある人は、庭で懸命に生きる植物たちに祝福の魔法を。
時には歌が、時には魔法光が、白亜の神殿を彩ります。
――それは、遠い別の地にある《アクティース教》の神殿でも、同じように。
この日を見慣れぬ旅人や商人の方々は、あちらこちらで顔をのぞかせ何事かと見ています。
そうして見てくる方々の多くが微笑んでくださることが、私は心底嬉しいと感じるのです。
今日は一年の最後の日。
《アクティース教》の神殿が、神官が、最も行き行きと輝く日。
生を最高とする《アクティース教》が、その真価を発揮する日。
夕方まで続く準備の時間には、いつにも増して楽しい声が広がります。
街へ祝福を届けに行く者。
神殿に残って準備をする者。
転送陣で他所の神殿を見に行く者。
どんな場所、時間、人であっても、今日ほど私たちが笑顔で楽しく過ごす日はないことでしょう。
なぜなら。
私たちにとって、最後は始まりと同義であるから。
私たちにとっては、生者に最後など、ありはしないから。
〝終わったと思うその瞬間から、すでに新しいことが始まっている〟
生き続けている限り、そこに限界などないのです。
だからこそ、生きている者は素晴らしい。
そして今日は、そんな者たちの多くが最後と呼ぶ――始まりを経験する日。
果てなく続く、命の輝き。
生を全うする者が持つ、最高の光。
それらがいっそう眩くなるこの日を、私たちが喜ばないわけがありません!
今日だけは、どの宗教の神殿や教会にも負けないほど、《アクティース教》の神殿は美しく輝き、純粋に瞳を癒すことができるでしょう。
もちろん、私たち神官も、神殿を飾り立てるだけではありません。
澄んだ夜空に包まれる頃。
神殿から鳴り響く、清らかな鐘の音を背に受けて。
一年で最高の聖歌を以って、生きとし生ける者全てへと、最上の祝福を届けるのです。
――〝新たな始まりに祝福を〟――と。
今年一年、『神官エルピスの心書き』を読んでいただいて、ありがとうございました。
来年も、皆様が癒されるようなお話を書いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
来年が皆様にとって、良い年となりますように。




