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優馬

 



 今日は、旅の商人の方が、この神殿に祝福を受け取りにいらっしゃいました。


 祝福を担当するのは私ではなく別の神官の方であり、私はティティと共に、荷物を乗せた馬車を引くお馬を、少しの間お世話することになったのです。


「わぁ! 馬なんてひさしぶりに見ます!」

「私もです。……あぁ、ティティはそちらのお馬のお世話をお願いしますね」

「はーい!」


 明るい笑顔と共に跳ねる金の髪をつれて走るティティは、このところ好調のようで、たくさんの笑顔を見せてくれます。

 一時期不安げに揺れていたその強い赤の瞳も、最近は迷いなき輝きを宿しているので、嬉しい限り。


 そんなことを思いながら二頭のうち、ティティが世話していない方のお馬のところへ行くと、そのお馬がこちらへと顔を向けてきました。


 黒い、円ら、と称するに値する瞳。

 あまりにまっすぐに見つめられるものですから、思わずこちらもまじまじと見つめ返してしまいました。

 そっと近づくと、心得ているかのように頭を下げられ、それに導かれるように鼻先を撫でてみます。

 なるべく優しく、と自らに言い聞かせて艶やかな手触りに密やかに感動していると、今度は体ごとこちらへ寄せてくるものですから、思わず笑ってしまいました。


 何事かと顔を向けてくるティティになんでもないですと返した後、その素敵な毛並みの体躯を堪能したのは、言うまでもありません。


 水を差し上げながらも、嬉しさで微笑みが浮かんだままだったのは、きっとティティには見られていたことでしょう。


 主人と同じように祝福をおくった後、嬉しそうに擦り寄ってくださった心優しきお馬とめぐり合えた今日の時間は、大切な思い出になりました。


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