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眠り
浅い川に身をゆだねているようでいて、深い底なしの穴に吸い込まれるよう。
なかなか訪れない時もあれば、抗いがたいほどの強さも持っている。
眠り、と呼ばれるもの。
まどろみの中の小鳥の歌。
吸い込まれる間際の陽光。
静かにいざなうそよ風。
深き沈黙の淡き月光。
多くの生き物が、その安らぎに身をゆだねることを、よぎなくされる。
危険な時もあれば、休息の時もある。
それはさながら、無限に紡がれる物語のようで――。
私にも、彼女にも、他の方々にも、届くもの。
誰しもがその瞬間を得て、目覚めを迎える。
尊く、優しく、温かく。
それと同時に、少しの不安も感じるけれど……。
だからこそ、眠りの前に人々は紡ぐ。
私たち《アクティース教》の神官にとっては、それさえも、祝福の一つ。
相手と自分とに捧ぐ、守護の言葉。
「おやすみなさい」
その優しき言葉を紡ぐ瞬間こそが、今と明日の生を確信する瞬間なのです。




