かわり者 ~赤瞳の少女~
この神殿には、かわり者の神官がいます。
つい最近までは、そのかわり者は私一人だけだったのですが、先日私を教師兼補佐役に選んだ新入りの女の子も、それに追加されそうです。
彼女の名前は、ティティ。
少し癖のある金の髪と、強き意志を宿す赤の瞳をもつ、十二歳の少女です。
年齢以上に幼く見える可愛らしい顔とそこに浮かぶ笑みは、女性の方でも癒される、とおっしゃられるほど。
対して、その言動は落ち着きと賢さが見て取れ、年配の方でもすでに大人に近い、と褒められます。
そんな彼女ですが、一つだけ不可解なことが。
……えぇ、言うに及ばず、それはこの私に師事したことそのものなのですが。
ティティは、ここではない他の《アクティース教》の神殿で、神官になる術を学んだとおっしゃっていました。
であるならば、当然私のことは聞き及んでいるはずなのです。
第一に、私は数十年と言う月日が流れたのにも関わらず、いまだ成人したての十八の頃のままの姿をしています。
えぇ、単純に言って普通の人族ではありえないことです。
周りが《アクティース教》の神官方だからこそ、驚かれる程度ですんでいるのです。
普通の反応は、不気味、と言ったところでしょうか。
第二に、通常なら老人と呼ばれてもおかしくはない時間神官をしているのにもかかわらず、いまだに指南役をしたことがないのです。
それもそのはず。
通常指南役に選ばれる神官は、何度もその役をこなしてきた、玄人が選ばれます。
もちろん、そういった方ばかりではありませんが、それ以外の方が選ばれる場合は全て、玄人の方が薦めた方なのです。
えぇ、自慢にならないところが哀しいことではありますが、この神殿で玄人の方と同年齢である私より優秀な若い方は、たくさんいらっしゃいまして。
いえ、それ自体はとても喜ばしいことなのですが。
そういうわけで、私は今まで悠々と一神官としての生活をしてきたわけなのです。
当然、新入りの方に指南役として選ばれるはずもありません。
で、あるにもかかわらず。
ティティは朝、私が自室を出るときにはすでに私の部屋の前にいて、まっすぐ私へと視線を合わせ、笑顔で元気にこういうのです。
「エルピスさま! 今日もよろしくお願いします!」
――思わず困った微笑みを浮かべてしまったのは、ご愛嬌、としていただきたいです。
何はともあれ、やる気があることは良いことです。
私もティティを見習わなくては。
今宵は満点の星空。
明日はきっと、今日よりも青い空が見られるでしょう。
明日もまた、多くの方々に、私とティティの祝福が届きますように――。




