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鏡の向こう  作者:
3/3

第2偏 映像の少女

「・・・?」

今度は はっきりと

耳に届いた

・・・女の人の声

それはとても優しく眠りにつく赤ん坊をずっと傍で歌い続ける母親の子守歌のようで少女はどうしてもその声の正体が見たくなってつい

扉の外側に足を

踏み入れてしまった−−


ぱあん と

何かがはねたような弾ける音がした・・

とたんに少女は

踏み入れたその時にがくんと挫いた


一瞬見えたのは

落ちる間際にこちらを向いた人影・・


少女は底なしの闇に放り込まれ唯流れに身を任せている

あの死体と化した

若い少女たちの事

どうして

「死」というたかちで人生を閉ざしてしまったのか

−−−戦争かな

それとも必然に巻き込まれたテロ?

はっきり少女には

なんの関係もないものばかりが頭に思い浮かんだ



悪夢なら早く覚めてほしいな



視界が落ちていくのですごく速くいろんな風景が通り過ぎていく−−−

・・・風景?

そこでやっと落ちているのは闇の中ではなかったと気づく


カメラで写された映像が機械音(ノイズ)混じりに流れていく

だか その映像は随分年代物で使い古されたビデオのように途切れとぎれでいまいち見ずらいものがあったが少女は何も気にせず落ちていくのを忘れて見つめていた




空は赤色に染まり

沢山の母親が我が子の手を引いて去っていくシルエットがその空のなかに黒く映し出されていた

おそらく公園で遊んでいた親子が帰っていく場面なんだろう

「平和」という情景が思い浮かぶだろうがこの映像のカメラはブランコにひとり揺れている幼い少女にクローズアップされたのだった


誰かむかえにくると思って待っているのだろうか?

だか 見た限り少女の周りの親子はみなそれぞれ家路へと帰っていった


少女のむかえはこない

唯 幸せそうな笑顔

めいいっぱい振りまく子供とそれを温かく見守る母を睨むような瞳をしていた



ふと 映像に白文字で字幕が薄く浮かび上がった




−おねいちゃん

−どうしてきてくれないの?

−わたし ずっとまってたのに

−どこにいるの?

−わたし わすれたの?




字幕はどうやらひとり残る少女の心の孤独を感じさせる言葉が並んでいる


でもこれを見ていた夢に迷い込んだ少女は

「他人事」と見過ごせなかったのだ



どうして かは

自分自身も解らない共感した、なんて事なかったのに−−


映像のは少しずつ進んでいく


沈みかけている夕日徐々に闇に隠れる公園のブランコ

映像の少女はまだ

むかえを待っているとも見える

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