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第三章 闇の街

第三章にやっと入りました。読んでくれている皆さん更新が遅くてすみません。読んだ感想などコメントに書いていただけると嬉しいです。

森を抜けた場所は、貿易が盛んでさまざまな物資が入ってくる町、ウォルスベイトへ着いた。唯一海に面している地域で貿易が盛ん。主に書物や食糧、など外国から様々なものを輸出、輸入をしている。だから危険な町。この町には異名がある。それが

「闇の町、ウォルスベイト……ね。さあレイ。これからどうする?」

「とりあえず町をまわりたい!せっかく来たんだし行かないなんて勿体無いよ」

「そうだな。はぐれんなよ」

二人はそうして港の方へ向かった。人々が群がり、魚介類の売り出し、布物、書物が売り出されている。書物の方へ行くと、楽奏魔術、幻術、結界系魔術などについて書かれている物が多い。これは自国でもあるが、外国の方がとても細かく書きあげられている。

「エル、結界系魔術だ。(ギル)しき使者(ジア)が出るんだ……」

悪しき使者、それは太古の昔。大天使イグリードが闇と悪を与えた際に、動植物たちに悪影響を及ぼした。それらは人に攻撃し、踏み立っている場所、空気が瘴気で覆われていく。言うなれば毒の獣。それを防ぎ、浄化するのが結界系魔術。最近ではローズフィールにも出現するようになってきているほど、繁殖し始めた。リステゴール魔術軍兵浄化班、彼らがいち早く動いたとしても増殖率が高く手に負えないらしい。そんな時数人の男たちが話しかけてきた。

「よお、そこのお二人さん。どこに行くんだい?」

「いや、別に……ただ見てまわってただけだよ」

「エル、行こう」

レイスは何かの危険を感じたらしい。言われた通りエルサも走ってレイスを連れて逃げる。男たちが追いかけてくるということはなかったが、口端をあげていた。

「いいか、あいつらから目を離すんじゃねぇ。行って来い!」

グループの中の四人は二人を追いかけて行った。二人は町の奥へと入ってしまった。そこは先ほどと違う違和感。人々は変に貴族のような者、貧相な者とはっきり分かれていて眼に光がないと思える。そして目に飛びこんできた者に衝撃を受けた。

「お母さん!待って。あたしを連れて買ないでおじさん!」

「ケイラ!その子を連れてくなら私を」

「黙れ役立たず!一体誰の所為で俺たちゃ困ってると思ってんだ?お前ん所の所為だって気づかないのか?」

人身売買よりひどいもの、無理やり親と引き離しどこかへ売り飛ばされる。その金はそいつらに持って行かれ結局は金も何も手に入らない。そんなひどい町なのだ。この町は。エルサが止めに行こうと足を出した瞬間、意識が途切れた。

「エル?エルサ!」

レイスの真後ろで起こった事。先ほどの男たちがエルサを気絶させ担ぎあげていた。レイスは一旦距離を取り構えに入る。

「あなた達、さっきの人たちですよね。一体何のつもりですか。その人を返して下さい」

「そんなわけにゃいかねぇのさ俺達は」

『詠唱、我ともに対となる鏡に手出しする者許されず。汝それは紅蓮ノ王の炎より焼き尽くされろ』

エルサの掌から出る赤く燃え盛る炎。それはいつの間にか男達を足止めさせる炎壁となるが、エルサを担いでいる男がエルサの首を締め始めた。

「かっ…………やめ、ろ……」

「さあ片割れ、さっさとこの炎を消せ。さもなくばこいつの命はないぜ」

エルサの骨がきしむほど首を絞められ意識が遠のいて行くのを感じる。

「やめて!炎を消すからその人だけは殺さないで!」

『詠唱、全てを潤し清水よ。我、目の前に立ちふさがる炎壁をときたまえ』

レイスの掌から水が出て日は消化される、がレイスも気絶させられ男達に担がれ闇に消え去った。


「司令官、あれは何でしょうか」

「どうした、あれは……!」

司令官と呼ばれる男とその部下達は茫然と炎と水を見ていた。


気づいた時は目の前が真っ暗。何も見えない、それが目隠しだっていうことも分かる。しかしレイスが無事なのかが分からない。ただ茫然と考えていた時、突然腹部に激痛が走る。

「ぐぅっ………」

「ったく、手間掛けさせやがってこのガキ共は。せっかくの売り物が台無しじゃねぇか。一体どうしてくれるんだ、あぁ?」

何度も腹部や顔を殴られ続ける。口の中が鉄の味がするのもそのせいだ。反抗しようとしても力が出ないのは手錠がかかっているから。しかしそれだけではない。魔術が使えない。何故か発動しないのだ。

「この手錠をしらねぇのか。まァいい、目隠しをといてやれ」

光が目に来て辛い。一体何の光なのか目を見開いた瞬間大きな檻の中で顔を隠した人々がおぉと感嘆の声が聞こえる。レイスは横になっていた。

「おいっ、レイ!」

「エ、ル?」

レイスも顔や腹を殴られ何か所か切り傷ができていた。しかし力が入らず、座っているのがつらくエルサも横になった。

「みなさん。今回は大物ですよ。魔術が使えて若々しい双子。何ていいのでしょう。使い方は何でもありです。玩具にしようがペットにしようが何にでもいい!さぁどうです?スタートは百二十万イルから!」

どうやらここは闇オークション。すなわち人身売買の会場らしい、変な奴らに掴まり挙句の果てには売り物にされる。そんなのでいいのかと自身に問う。いいはずがない、何があっても抜け出すのだ、そう考えた瞬間今まで入らなかった力が湧き上がる。

「………」

「何か言ったかお嬢ちゃん」

「ざけんじゃねぇって言ってんだろうがッ!」

ものすごい音をたてて手錠と檻が壊れる。レイスのも外してやる。観客、バイヤーたちは次々と外へ逃げていく。今までにないほどの魔力が湧きおこり、思い切り男達を睨む。              いつの間にか エルサの髪が灼髪、目は灼眼になっている。レイスの周りはエルサによって作られた氷の壁で守られる。簡単には壊れない頑丈な氷壁。

「そいつを殺れ!」

男たちがエルサに向かって銃弾を放つ、頬と左肩を掠めただけだ。レイスの頬とこめかみは赤く腫れていて、エルサは怒りを抑えらず炎があふれ出ている。

「お前ら……弟に手を出しておいて無事でいられると思うなよ」

けがをしていない右腕を前に出す。男たちが再び銃弾を放つ。しかしエルサはひるむことなく詠唱を始める。

『詠唱、我に流れし炎の力。己の身を捧げよう。シトリ―、お前の力を貸したまえ』

「いいんだな?後悔しても知らないからな」

シトリ―の左手から出される炎が剣へと変わる。俺は手出ししないからなというと消えていった。上等だとエルサはいい、剣を男達に振りかざす。剣の核はシトリ―の紅蓮の炎を結晶化したものだ。前にエルサが聞いた時に

「その剣は俺の血が混ざっている。てことは通常の人間が作る剣よりも高度を持つ。いや、比べ物にならないくらいに強化されている。魔力も高い」

「そんなものオレにくれるの?」

「あぁ。だがその剣にも術を発動するための詠唱文がある」

剣を見ると確かに小さな文字が刀身に刻まれている。何と読むのかは分からない。

「心からそいつを信じろ。そうすれば分かるさ……」

それが、今だ。

『十字翼紋章詠唱、序章詠唱。我が道塞ぎ行く者、紅蓮ノ王より授かりし十字翼紋の剣にて切り裂く。我と王シトリ―の炎より核を構成せよ』

剣は炎を放ち核の中に揺らめき、炎が大きくなる。

「何だアイツは……」

悪魔だ、化け物だと罵られる。しかしエルサは止まることを知らない。そんな時ひとつのかすれた小さな声が耳に入った。

「もう大丈夫……ありがとうエル」

レイスがゆっくりと氷壁の中で立ち上がる。そして髪は茶色から翠へ、瞳は翡翠色へと変化する。フラフラしている様子もあるが詠唱を始める。

『蓮華乱舞紋章詠唱。我守りし者、姿を示せ。彼の者助けるべく武器を顕現せよ』

「はい、あなたが仰るならば」

ラファエルが広げた手のひらから溢れ出る光。その中には草のつる 、花、木の枝と、複雑な構成で形成された弓矢があった。

男達はエルサの時とは違い、そんな物で何が出来るというのだという表情で笑っている、しかしレイスは引き下がらない。すでに無表情のレイスは落ち着き、心を乱さず、ケルティアスの木から作られた弓矢を番える。

エルサと同じくレイスもラファエルから話を聞いていた。

「ケルティアスの矢。それは大天使フィルレンスの武器で、悪しき使者達が人々の暮らす都に侵入してきたとき、存在する木の中で最も高度が高く、しなる木で作った弓矢。それでやつらを駆逐し人々を守ったのです。その時の武器を私が作り、改良したものです」

「そのような物を僕に……いいの?」

「何かあった時のあなたの武器です」

軸をぶらさず、ただ目標だけを狙って放つ。風を切り裂き、腹を貫く。男はうずくまり悲鳴を上げる。

「ぐぅああぁぁぁぁ!」

あと残り六人。

『蓮華乱舞紋章詠唱、ウォルグリフより与えられし水。形は鮫、具現せよ』

水で作られた鮫たちは男たちに襲いかかる。かまれ、血が流れるような悲惨なことにはならないが、酸素循環が出来ず、気を失うものも多々あった。残り三人。男たちは観念したのか、本気を出すのかは知らないが双剣を表す。

「びっくりして俺たちに降伏してもいいんだぜ?子猫ちゃん達……」

『詠唱、我の持つ剣よ、今ここで焼かれよ』

最初は言っている意味がわからなかった。しかし、双剣の刃の部分が炎を帯びている。あんなものに触れれば、火傷では済まない事を知っている。水で冷やせば切れ味は良くなり危険。どちらの道をとっても危険からは免れない。

「おらよっ」

エルサに向かう炎の双剣。あと少し行動が遅ければ火傷では済まなかっただろう。その刹那、甲高い悲鳴が聞こえた。知っている声、その方向は

「ああぁぁぁぁぁッッッ!」

レイスの太ももあたりが刃で切られ刃の熱で大やけどをしている。あまりの衝撃にオレは考えなしに動いた。レイスを助けるためなら。

『詠唱、ウォルグリフより与えられし水。我が対の鏡に癒しの聖水を、害なるものにはエルファードより与えられし業火を』

右手を男たちに向けて言う。発動できないだろうと思っていた水属性の魔術は発動され、レイス自身をやさしく水で包まれる。男たちは炎で焼かれ、断末魔が響く。レイスの傷口は炎で焼かれていたため、出血は少ない。エルサは少量の氷を出し、自らの衣服を破きレイスの火傷部分に巻きつけた。動くなよと、くぎを刺し最後の一人である男へと向かう。

「く、くるな!」

エルサに向かい炎で包まれた刃を刺してきた。体だけ交わし、左の掌でつかむ。手からは出血し、火傷していく。男がさし抜きしようと試みるが微塵も動かない。

「おっさん。オレたちをさらって勝手に売ろうとして。挙句の果てには弟に手を出して大けがさせる。ふざけんなよ!」

思い切り睨みつけたエルサは刃をつかんでいる手から炎が放出され、刃だけでなく男をも包み込んだ。再び断末魔が響き渡る。エルサも炎を消し、レイスの元へ歩く。

「レイ……ごめんな、守ってやれなくて」

「何かあったら二人で一緒にやるって言ったでしょ。謝らないで、そんな僕より大怪我しながら」

「じゃあ行こうか」

エルサがレイスをお姫様抱っこして外に出る。レイスの顔は林檎のように赤い。外はすっかり暮れ、夜になっていた。時間すら分からないまま宿を探しに行く途中目の前をある男が塞ぐ。

「いきなり何だよ……」

エルサが見るそいつは白を基調とした制服、肩章は星が二つ。背もエルサより十センチほど高い。盾の紋章の中には六芒星と剣が描かれている。

「一体魔術軍兵が俺たちに何の用です?」

彼はこの国の兵士、しかも魔術を行使できる兵士、魔術軍兵の一人だ。一体彼がなぜ二人の前に立ちはだかっているのかは不明のまま彼は話し始める。

「君たちがここであの首謀者共を黒焦げにしたのか?」

単刀直入な言葉。素直に今までの事を話すと身を細められ口端を上げた。

「シルヴィアの双子、といったな。サンセリアでの行動、魔術をすべて見せてもらったよ」

この一言に双子は驚く。だがエルサには身に覚えがある。あのとき町を出る瞬間、何かをつぶやかれたその正体はこいつではないだろうか。

「あんた、オレにサンセリアで何かつぶやいたやつか?」

「そうだ、そしてこれから君たちに言うのは命令に近い勧誘。いや、必ずそうしてもらうがな」

何の話か全く付いていけない二人を置いて話を続ける。

「まず、私はリステゴール国軍本部直轄機関の魔術兵ドグミーナ部隊長、ミラク・ゲ―カーだ」

「……オレはエルサ・シルヴィア」

「僕はレイス・シルヴィアです」

自己紹介が終わったところでミラクは双子の泊まるための宿を探し、部屋で話の続きをし始める。

「君たちにはまず試験を受けてもらう。魔術兵入団試験だ。一般とは違い三次試験まである。第一に筆記、第二に体力、精神鑑定試験、第三に魔術試験だ。全てをパスしてようやく魔術訓練兵へとなる。訓練兵になると大体の魔術を学ぶ事が出来る」

「ミラクさん。僕たちはさまざまな魔術、文化を学ぶために旅をしているんです。それなのになぜ軍に入り、国民、王、そして軍に頭を垂れる必要があるんです?それにそうさせるとは一体どういうことです」

「まず、君たちを野放しにしておくことで、他の奴らに目をつけられまた今回のような事件が起こるということ。そうさせるとは君たち二人が軍に入らなければ家を、いや君の住んでいる町ローズフィールごと焼き払ってしまおうか」

机を思い切りたたき立ちあがるエルサ、しかし彼の首元には刃が突きつけられていた。改めてエルサは思う。やはり軍というものは残酷だ。邪魔なものは切り捨て、使えるものは無理にでも服従させる。服従できなければそれもまた切り落とされるだけ。

「エルサ・シルヴィア、レイス・シルヴィア。君たちに選択肢を三つ与えよう。一つはこのまま魔術兵入団試験を受ける。二つ目は私と今ここで争い無駄な血を流す。三つ目は君たちが逃走してローズフィールが焼かれるか。選びたまえ」

結局一しかない。三つ与えられたところで選べるものなんて決まっているのだ。まるで仕組まれたかのように。

「エルサ、君の答えから聞こう」

「オレは……受ける」

「レイス、君は?」

「僕も受けます」

「これで決まったな。試験は一カ月後だ」

今何かと口を開けば首がはねられてもおかしくはない。だから何を思っても口を閉ざしたままだった。

「試験勉強は明後日からリステゴールに来い。中央書庫内のある談話室一室を明後日から試験日まで借りておいた。そこで生活し食事をとれ、君たちの宿だ。風呂も付いている」

言い終わるとレイスにミラクは明後日の昼に運行するリステゴール行きの列車の切符を渡す。

健闘を祈る、それだけを言い残し部屋から去って行った。嵐が去ったという安心感よりも、絶望感の方が大きかった。もし受からなければ、諦めたら町が焼け野原にされる。両親が殺されるかもしれないという恐怖。さまざまなものから追い詰められて自分自身が消えそうなくらい追い詰められている。

「レイ。暗い方向へ持っていくな、明るく考えろ。受かれば町は変わらないし、母さんたちも無事。ウェリアもだ。それに魔術軍兵と言えば様々な魔術を扱っている。てことはいろんな魔術に触れることが出来るチャンスだぞ」

「そんな簡単なことじゃないだろ!どうしていつもエルサはそうも馬鹿なの!?ねぇ、何で命がかかっているっていうのにそんな明るくいれるわけ?教えてよ!父さんや母さんだって、町の人たちだって僕らが不合格だった場合殺されるかもしれないんだぞ」

「レイス、よく聞けよ。オレは一言も町の人や母さんたちは関係ないとは言っていない。ただ明るく考えろって言ったんだ。人は明るく考えたり、希望を持つことは難しい。でも、それに向かって努力することはできる。でも、暗く考えると底なし沼のようにどんどん沈んでいくんだよ。それは諦めたも同然だ。オレは諦めてない、諦められない、町の人のためにも、母さんと父さん、そして自分のためにも」

「わかった。ごめんエル、強く当たったりして。でももう行ける、僕にも希望がある」

二人は落ち着きを取り戻し、いつも通り話し、風呂に入りその日はそのまま寝た。深いことは考えずその日はベッドに入りすぐに寝息を立てた。夢も見ず、ただ深い闇の名家へと沈みこんでいくのだった。


「これでよかったんだろ?リヴェアス」

「あぁ、構わないさ。貴重な人材だ、失うわけにはいかない」

「きっと立派な番人になるさ」

リヴェアスと呼ばれるその人物は窓の外を眺めながらつぶやいた。

「これは大きな嵐が来るぞ……」


深く、深く……

どこまでも沈んでいくような暗闇にレイスは捕らわれていた。どれだけ必死にもがいても闇からは出られない。そして目の前の情景はローズフィールが炎に飲み込まれ、跡形もなく焼け散った風景。レイスとエルサの目の前に、二ケルとサラが跪き、首だけを前に出している。

「ごめんよレイス。父さんは先に逝っているよ。母さんと二人で待っているから」

「いい?何かあったらエルサと助け合って生きるのよ。母さんはお父さんとずっと二人を見守っているからね」

そう、言い終えた瞬間に紅玉は宙に舞い、首は目の前で地に落ちた。

「ああああぁぁぁぁあぁああああぁぁああぁぁあああっっ!」

「レイス!レイスしっかりしろ!」

エルサが驚いておき、レイスを覚醒させるが一向に目を開けない。エルサは思いっきりレイスの頬を平手打ちした。空気を切り裂くような音と力がレイスを襲い、ようやく瞳が開かれる。

「エル……」

「レイ。オレ達は必ず受かる。そこからたくさんの魔術や文化を学ぶんだ。そのためにも今はゆっくり体を休めろ。変なことは一切考えるな」

そして双子は眠りに就いた。


昨日窓を開けっ放しで眠りに落ちてしまったのだろうか、部屋の中に様々な花の花弁が起きたと同時に螺旋を描きながら部屋で舞っていた。窓の桟には鳥たちが寄り添い、歌っているように鳴いている。まるで双子を起こすかのように。

「ぅん……わかった、今起きるから」

目を擦りながらゆっくり起き上がるエルサ。ドアをよく見ると新聞が置かれている。それを手に取り再びベッドの上で読んでみるが唖然とした。これは一体どういう事なのだろうか、日付がウィスターメイルへ行く日である。

「…………嘘だろ?おいレイ、起きろ。急がないとまた大変な目にあうぞ」

「ふぇ?何で」

「今日はウィスターメイルへ行く日だ。ミラクとかいう奴にまた言われるぞ」

「新聞見せて…………げっ、本当だ。急ごう!」

急いで着替え、荷物をまとめてフロントに鍵を渡し、列車のホームへと向かう。切符を駅員に見せようやく列車に乗り込んだ。

「間にあったな、よかったよかった」

「ウィスターメイルか、あんまりウォルスベイトも見れないまま首都に行くのか」

「ウォルスベイトはもう懲りたよ。でも一つだけわかったんだ。街によって治安の違いが。今回すごくこわかったんだ」

「忘れろ。それより勉強だ。何ヶ月振りだろうな」

列車に揺られながら窓の外の風景を見詰めるエルサ。いろんな町へ行きたいという意志は強いが、自然が少ないなと思ったのだ。木や、花や葉などがなく、コンクリートや工場などがよく目に入る。空も霞んで見える。そして四十分永遠と意識を飛ばしていると、自国リステゴールの首都、ウィスターメイルに到着した。目に入るのは白を基調とした軍服に身を包んだミラク。

「ようやく来たなシルヴィアの双子」

「あぁ、オレたちのせいで犠牲者を出したくないからな」

「その威勢はどこまで続くかな?まぁいい。さぁ来たまえ」

そうして双子は中央書庫の談話室へと案内されることになった。





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