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#003 ギルド

 人の気配がない街道に智早が着いたのは旅を始めて5日立った頃であり、現在はそこから更に2日達、智早はようやくたどり着いた街を見ていた。


「うーん……文明は王道みたいな感じか」


 ほとんどが木造建築で、時々見える石造りの家もあまり大きな建物ではなく、文明が発達してないことが伺われる。それでも街はある程度賑わっていて、青空市場が開かれているようだった。


 智早がまず確かめたのは言語である。話せるか? 読み書きができるか? 今までは神様であったり魔導書であったりと確かめる方法がなかったのだがここに来てようやく確かめることができるからか、智早は少し浮かれている。


「ふふふ……調べるためには会話すべきか? どうせギルドの位置を知るためにも聞かないといけないしな」


 少し怪しいエルフの青年を周りの人々は無視して通り過ぎる。もともと希少なエルフという種族に加え怪しい言動をしていたら誰でも関わりたくないのは当然である。そんな周りの考えをよそに智早は近くの露店の店主へと話しかけた。


「おじさん。ギルドってどこにあるかな?」


 被害者は露天武器屋の店主。年の頃は40ほどで、背が異様に小さく人間の子供ほどしかない。所謂ドワーフという種族であり、ルフでもそのままドワーフという種族である。地球を元にしたから当然といえば当然だった。


「ギルドならあっちの建物だ。兄さんはエルフだろ? ハンターやってるのか?」


「いや、まだ加入してないから今日加入しようと思ってね。教えてくれてありがと」


 意外に普通だったことに見ていた人は驚き、それに気づくこと無く智早は教えられた建物へと入る。

 中は予想通り酒場といった雰囲気であった。外から見る限り2F建てで、入ると1Fの半分が酒場で残りのスペースがクエストボードといったものが置かれている。昼時だからか飯を食べている物が多い。人間はもちろん、獣人族の犬種や猫種、中には鳥族なのだろう羽毛をもっている者もいる。

 エルフが入ってきたことによりギルド内の喧騒は止み、実力を測ったのか一瞬後には元の状態に戻る。それにはさすがに智早も気づき、しかし別段気にするふうもなく受付の方へと向かう。


「いらっしゃいませ! ハンターギルド、ラントス支部へようこそ。ここには初めてですよね?」


「はい。ギルドへの加入をしたいのですが大丈夫ですか?」


「新規さんの方でしたか!」


「珍しいんですか?」


 ハンターを目指す人は多いという予想だったため、意外に新規が少なさそうな雰囲気に智早は少し慌てている。それを見た受付嬢は慌てて智早の勘違いを正した。


「いえ、エルフの方は外見で判断がつかないので……それにエルフ自体珍しくエルフだけで言えば少ないと言えますね。他の種族なら月に数名は来ますし、別に珍しくはありません」


「そうですか。それにしても……やはりエルフというのは分かりやすいですか?」


「そうですね……特徴的な耳に加え全員美形ですから。嫌でも目立つと思いますよ」


 智早は最近気づいたのだが、耳の形が少し尖っており所謂エルフ耳、もしくは長耳と呼ばれるものになっているのである。元の形から少し尖っただけだが、髪で隠してるわけでもないので嫌でも目に入る。智早はまだ自分ではまだ見てないが、顔の形を少し変わっているようで、こちらもエルフ定番の美系状態になっている。鏡を見ればあまりの変貌ぶりに驚くことは想像に難くない。


「はあ……それで新規加入をお願いしたいのですが」


「分かりました。手数料として3000ルフしますが大丈夫ですか?」


「あー自分お金持ってないんですが……アイテムの買取ってしてます?」


 エルフはいくらでも職業を得られるためお金がない発言に聞いていたものは吃驚している。それほどなまでにこの世界でのエルフの地位みたいなものは高いのだ。


「大丈夫ですよ。ポーションやアイテム買取は種類で均一になっております。状態が良ければ自分で市場で買い手を探すこともできますが、その分時間がかかるためハンターの方はほとんどギルドで売りますね。そこからギルドはハンターの方々に売るポーションなどを集め売っているわけです」


「ほお……。ならこれを買い取ってくれませんか?」


 智早が置いたのは《ドラゴゼリーの核》《ドラゴゼリーの翼》に加え、自作《黄緑ポーション》、《ラックラビットの肉》など色々なものである。

 《黄緑ポーション》は拾った草を調合して作った代物で、ポーションの中級ランクにあたる。赤、黄、黄緑、緑、青、水色、白と変わるごとにランクが上がり、その分効果はもちろん値段も当然高くなる。最も緑以上は特別なアイテムが必要になってくるためあまり出回らない。一竜と呼ばれるものが持つようなものが緑以上のポーションなのだ。それ以下は作り方も無数にあり、緑ぐらいなら1日数本ぐらい智早でも作ることができた。アイテムだけでなくスキルと魔力が必要なのだ。

 《ラックラビットの肉》は智早のシチューに途中から加わったウサギ肉である。とても柔らかく美味しいのだが、取るのには結構苦労している。街道に出るまでに数匹倒しているが、ドラゴゼリーよりは弱いものの素早いフットワークに苦労した智早だった。


「……本当に新人さんですか?」


「はい。全部なんとか倒せて助かりました……ドラゴゼリーはきつかったですね」


「はあ……中級ランクのモンスターなんですが……さすがエルフといったところでしょうか? そう言えばお名前を伺っておりませんでしたね。私はここの受付を担当していますシーナです」


「ああ、俺は智早です。鑑定が終わるまでクエストでも見といていいですか?」


「大丈夫ですよ。終わり次第お名前を呼びますね」


 智早は早速クエストボードへと向かう。最も、智早は既に日本語で会話がなされているため文字も日本語だろうと思っている。そしてその考えは当たっていた。日本人を呼ぶ神様の作った世界なのだから日本語が使われているのもなんとなくだが当然なのかもしれない。


「ふむ……ランクが存在、報酬は最低でも3000ルフはあるな……荷物運びなら誰でもできるからこんなに安いのか」


 クエストの内容から色々なことを推測する智早。あとで聞けばいいのに無駄に考える性格であった。

 そんな智早は10分ほどで呼ばれ、鑑定の結果に驚くことになる。


「買取金額は73000ルフになります」


「結構高いですね!?」


「ドラゴ二種だけで30000ルフ、ポーションが5本で10000ルフ、ラックの肉で13000ルフ、他の細々としたアイテムで合計20000ルフです」


「買取お願いします。ああ、3000ルフはそのまま支払ったことにしてくださいね」


「分かりました。では銀貨7枚となります。そのままこの紙に記入事項を書いていただければ手続きは終了します」


 紙に書く情報は少なく、名前に種族、任意で出身地だけだった。その紙を提出し次は水晶のようなものに触らされ、犯罪の経歴を探られる。もちろんそこは普通に通過しカード発行が明日になるため今日は帰っていいと言われる。


「あの、少しギルドについて教えてくれませんか?」


「大丈夫ですよ。ギルドはランクが下から赤、青、緑、白、黒、銀、金になっています。受けれるクエストは自分のランクかそれ以下のものになります。ランクは一定以上のクエストのクリアや貢献によって上がります。各ランクはそこから更に三段階に分かれており、智早さんは現在赤の下、つまり最低にランクになります。三段階の目安は特に何かあるわけではありませんが、自分がどのあたりにいるのかを示すものさしになりますし、パーティーを組む時の目安にもなります。アイテムのほとんどはギルドに売ることができ、ギルドでは魔法の販売もしています。他にもポーションであったり一部のアイテムはギルドでも販売しています」


「魔法を売ってるんですか?」


「はい。魔法師を目指す方はほとんどがギルドに加入しますので、それようの魔導書を販売しております。最も中級までしかありませんので、白ランク以上になると上級魔法を自分で覚えなくてはやっていけません」


 智早は少し考え決断する。


「売ってる魔法を見せてくれませんか?」


「っエルフの方が見るようなものでは……」


「俺今まで独学でしかやってきてませんのでほとんど魔法ないんですよ」


「そ、そうでしたか。カタログを持ってきますので少々お待ちください」


 智早が現在もっているのは10種類だけしかない。元々神の趣味なのか魔導書には魔法についての知識はあっても使うための知識が無かったのである。想像魔法なら使えるのだが、指示魔法は知識がないと無意味なためどこで覚えようかと智早は考えていたのだ。


「こちらになります」


 カタログには100種類ほどの魔法があり、その中には智早の知っている魔法のうち7種類が存在した。ちなみにこの10種類は指示魔法だけであり、製造などのスキルは想像魔法を使うためカウントしていない。

 智早が持つのは【サンダー】【シールド】【ファイヤーボール】【ウォーターカッター】【エアースラッシュ】【アースクエイク】【ライトアロー】【ダークアロー】【サーチ】【エアロ】である。この中の【シールド】【サーチ】【エアロ】は乗っておらず、どの文献にも載っていなかった代物だ。他のは魔法図鑑で調べたため既存魔法であるのは確実、ただこの3つはもしかしたら神からのプレゼントではないかと思っている。

 【シールド】は智早が使ったように魔法攻撃をどんな属性でも守るもので、普通なら【ファイヤーウォール】などのように属性で別れるのだがそれを必要としない究極の魔法。

 【サーチ】は自分から5メートルまでなら完全にその場所の動きを把握でき、戦闘スキルさえ上がれば敵の攻撃を簡単に避けれるようになると智早は思っている。また最高で50メートルまで周りの気配を察知でき、そこには壁などの障害物を無視出来る力がある。

 【エアロ】は掛けたものを魔法をとくまで重力の柵から解き放つ魔法。生物には使えないが、かかったアイテムは重みをなくし投げればどこまでも飛んでいく。風でも飛んでいくのかと思うのだが、掛けた本人にしかその効果は発揮されない。打撃も重力がかかった状態で計算されるというチート仕様。


「うーん……【ライト】と【ウォッシュ】、【ファイヤー】をお願いします」


 あまり攻撃系を必要としなかった智早は生活に必要そうなものを選ぶ。最初と最後の二つは名前の通り、そして二つ目に言ったものは体や服を洗える生活に役立つ魔法の筆頭だった。


「か、家庭的ですね……全部で30000ルフになります」


 全部初級だったためか一律10000ルフ。中級だと全部50000ルフになるのだから驚きだ。

 もらったばかりのお金から支払い、智早はお勧めの宿を尋ねる。シーナさんは近くの「ひかり亭」が良いと言いその言葉通り智早はひかり亭へと向かう。明日からの本格的なハンター稼業、もとい未来へと資金稼ぎのために休む智早であった。

誤字脱字ありましたらご報告ください。

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