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創造の始まり

続きです。

目が疲れない程度に読んで下さい。

ここは神の楽園、godparadise。

神と人間が共同して生存する世界。神が目覚めた場所、簡潔に言うとそうなる。

理想的、そして非現実的。

仮想空間と現実空間の間に存在する、混沌の場所。ここに住む者は、現実世界では「名残」として存在した肩甲骨から翼を生やし、神と空で自由に羽ばたき、笑っている。

あたりを見回せば、普通の一戸建てだったり、豪華な城だったりと、十人十色。

また、現実世界と仮想空間の狭間にあるだけに、全てが非現実的ではなく、食文化などは進化どころか現実世界と全く変わっていない。

貧困をなくし、また裕福もなくした、全てが平等。

全部、平等に創られてきた。

だからこそ、崩したくなるのだ。

天才というのは喜怒哀楽で表すと、全てが喜喜楽楽ではない。

中には、悲しみ、そして自らに溺れてもがき苦しむ者もいる。

その悲劇の天才が、godparadiseにいた。

汝の名は、ニケ。

タイタン族の血族パラースとステュクスの子供であり、兄弟はゼーロス、クラトス、ビアー。

godparadiseの王に君臨したゼウスも「コイツらは天才じゃ」と感嘆の声を上げるほどの天賦の才。その中でも、ニケの力は、暴力という意味の名のビアーよりも数倍の力であった。

その時の、タイタン族の血族達の生き様を、ここに書き記しておこう。




ある朝。

ここgodparadiseの『参武街』でも有名な、全長約700メートルほどの家に住む、パラースとステュクス。昨日、産声を上げたニケを抱きしめながら大きなベットに横たわり、深い眠りについたパラースだったが、朝、目が覚めると目の前にはもう「赤ん坊」ではなく「青年」と呼ぶべきであろうほどの大きさになり、それなりに整った顔立ちになったニケおぼしき゛物体゛を目の当たりにした。

どこまでも響き渡るような大声をあげたパラースはベットから飛び上がり、ステュクスを呼びに隣の部屋に駆け込んだ。

「ステュクス! ニケが一晩で大人になってるぞ」

ステュクスは理解に苦しむような表情をしたが、一緒についてくるなりニケを見てこれまたどこまでも響き渡るような大声をあげた。

ニケはステュクスとパラースの存在に気付き、そちらを一瞥すると、上を見上げた。

「創造、開始だよ。母さん、父さん」

その一言に、二人は唖然とし、それがニケの最初に発した言葉であった。

なにか嫌なことが起こるのではないか。

パラースはニケの兄のゼーロスとクラトスを呼び、昨日生まれたばかりだったはずのニケと会わせた。

もちろん反応は父母とほぼ同じ、雄叫びに近しい大声をあげて恐怖に泣き叫んだ。

godparadiseでも稀にみることであった。過去ではゼウスやアシュラ、フドウミョウオウなどが出産した後日に成人になっていたという。

全てが歴史に名を残すような神達であることに気付いたゼーロスは、

「ニケ、お前は必ず凄くなるよ」と、弟なのに身長が1.5倍くらいあるニケに向かって言葉を発した。それに続いてクラトスは母に向かって、

「もう一人産んだらまたこんなんなるんじゃないか?」

とのんきに言った。


この出来事はすぐにgodparadise中に広まり、2時間もしないうちにゼウスの耳に届いた。

だが、ゼウスは自分の経験の事もあり、そこまで大騒ぎはせず、とりあえず周りの住民達を静まらせる事に専念した。

だがゼウスの健闘虚しく、godparadiseの住民達が「ステュクスとパラース夫妻の息子が『MMWX』の可能性がある」という噂は「壱武街」から「拾武街」まで、新型ウィルスのように広まっていった。

ここまで庶民に『MMWX』が広まってしまっては仕方がないとゼウスは諦め、godparadise管理長のカンギテンに残りの作業を任せて、噂のニケが生まれた家の前から立ち去った。



【パラース】

その家の中で、ニケはステュクスにおつかいを頼み込んだ。

何故かニケの目の中には、熱く、そして輝く光が見えた。

幻覚、いや、実際に宿している。

コイツはもしかしたら――――――――『MMWX』かもしれないな。などと、パラースは独り言を呟き、自分の部屋に駆け込んだ。

自分の懐から護身用のSPAS-12を取り出し、火薬を詰め込む。

そして、本棚の前に立ち、深呼吸を一つした後、本棚をSPAS-12で木っ端微塵にした。

本棚の瓦礫から出てきた薄い閃光を放つ立方体を拾い上げ、自分のパジャマのポケットにしまった。

早い足取りでもう一度ニケのいる場所へ向かう。

「このままにしておくと…なぁ」

パラースはそんな事を呟きながら寝室の扉をおもむろに開けた。

途端に、頬に血が飛びついた。

何故か、それは。

「やあ父さん。 どういう気分かな?」

と、ニケがどこから取り出したのか分からない、青龍刀もしくは三国志にて関羽が使用した『青龍偃月刀』を手に持っていた。

その刀身には、濃い血がまみれていた。

もちろん、ステュクスの物である。

――――とんでもないな。コイツは。

怪しげな微笑を浮かべるニケを一瞥し、床を見下ろすと、ステュクスの胴体が綺麗に二つに分かれていて、臓器らしきものが赤黒い血にまみれてはみ出ていた。

残酷。その次に浮かぶのが悲惨。

コイツはもう、神の常識を越えている。と、パラースは心の中で叫び、パジャマのポケットをまさぐった。

取り出したのは、先程自室で瓦礫から取り出した閃光を放つ立方体である。

パラースはそれを手のひらの上に置き、ニケの反応を待った。

この立方体は、『MMWX』と呼ばれるキューブである。

M=mo・tor

M=mote

W=what

X =x-rey

スペルの意味は、「モーターの欠点がいくつあっても、X線」という意味がある。

最初の言葉の意味は合っているが、最後のX線、というのが何か引っかかっている。

X線とは、光速の電子を金属にぶつけた時に発生する、短い波長の電磁波の事である。

強い透過力があり、これを利用して体内の骨、臓器の状態を確かめるレントゲン写真というものがある。

このmo・terというのは、神が生きるため、また、人間が生きるために必要な「心臓」の事だ。そしてmoteは「欠点」。whatはもちろん「なぜ?」や「いくつ」などの疑問文。

心臓の欠点がいくつあっても、X線の電磁波が巻き起こす「脳内α電磁波」が心臓の欠点を゛ないもの゛とし、脳が心臓の欠点を無しと認識した事で、本来の戦闘能力を保てる、という事だ。

脳内α電磁波を説明すると、普通、脳の活動はアセチルコリンら脳内信号伝達物質が規定の周波数で震動を伝えることで成り立っている。しかし、ある種の電磁波はそのアセチルコリンの震動と共鳴したり阻害したりしてその伝達物質を書き換えてしまう。その結果幻覚を見たり想像したモノが実際にそこにあるように感じてしまうのだ。

脳というのは非常に安易だ。すぐに物を信じてしまう。

それを利用して、「あるもの」とすれば、脳は勝手に信じて元々あったように活動してしまう。

mo・terは他の重要臓器、部位とも置き換えることもでき、その他の障害があっても、脳が勝手に信用する現象、脳内α電磁波を利用すれば、本来の戦闘能力、潜在能力を解放できるのだ。

「『MMWX』がある」というのはこの現象をもとにして、障害がある、と言っているのと同じである。


ニケは青龍偃月刀を堅く握りしめながら『MMWX』をしばらく見つめると、そのまま刀身を二つに折り、ベットの上へ放り投げた。

その瞬間、ニケの目が青白く光り輝き、さらに身体が徐々に大きくなっていった。

どんどん膨張していく腕、足。やがて風船のように身体はふくれあがり、嫌な音と共に破裂した。

血が飛び散り、その血は紛れもなく、ニケ本人の物だ。

身体があまりの潜在能力についていけず、結局抑えつけられずに破滅した。そう思った。

だが、

「MMWXか…創造完了だ」

どこからかそのような声が聞こえ、だんだんと飛び散った血が一つに集まりだした。

皮、肉、臓器、そしてMMWXも含め、全てが寄り集まって人間の形に戻っていく。

MMWXは、肉の中に紛れて見えなくなってしまった。

そして、そのゴミの塊は完璧な形に戻ると、再び破裂し、元の姿へ戻った。

もちろん、その姿は、ニケ。

「MMWXは意外に簡単な構造なんだよな―――X線が生み出す電磁波で脳内α電磁波を発生させ、元々あるはずの欠点をなかった事にし、本来のの戦闘能力以上を潜在能力とカテゴライズされるような形で発動させる―と」

ニケは言い終わると、パラースの顔を見つめた。

鋭利な目。どことなく意志を感じさせ、しかし殺気も少々加えられている。

「だからその分、加工しやすい」

言い終えると、ニケの背中から翼が飛び出した。

その翼は光り輝き、それは正に『天使』。神が神でないものに変わる瞬間をパラースは呆然と見つめていた。

翼を広げ、ニケは下に散らばっているステュクスの゛残骸゛を手に取り、眼を青白く変化させた。

すると、ニケの手に取った残骸を元にし、ステュクスの身体が凄まじい勢いで再び形成されていく。

『MMWX』とは、神が生まれた証。

人間のハジマリを、覚醒させたモノ。

それは全ての神、人間を発動し、全ての世界を統治する。

この世界は、『MMWX』で動いているのだと。


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