2 池の主
真二はふと目が覚めた。
周りを見渡すと見えるのは見覚えのあるの自室のリビングだ。
真二は安堵のため息をつく。
真二は一人暮らしをしている。住まいは1LDKの築40年ぐらい経過したボロ家である。
「なんだ、夢だったか・・・。」
しかし、夢の中で悪魔に捕まれた左手をみてぞっとした。
「・・・えっ!!?・・・なんだよ・・・これ」
そこには悪魔がかいた血の魔方陣がくっきりと刻まれていた。
さらに強く握られた時にできたアザもしっかりと残っていたのだ。
これらはあの夜の出来事が夢ではなかったことを物語っている。
──体を提供してくれればいいのさ──
あの時の悪魔の言葉が鮮明に甦った。
あいつは人間の肉体がほしいといっていたが。
しかし体に特に異変はない。
あいつは一体なにをしたかったのだろうか。
不安を感じながらもふと携帯を手に取って見てみて、真二はぎょっとした。
13:20!!?
あぁ、寝坊した・・・。
というかもうお昼だ。
「とりあえず今日の授業は自主休講することにしよう。」
真二は自分に言い聞かせ、顔を洗いに行った。
ついでに左手を洗ってみたが、こびりついた血の魔方陣はすぐに洗い流すことができた。
いつもと変わらない左手をみて真二は
「やっぱり夢だったのかもな。」
そう呟いた。
その後、昼御飯を済ませ、大学に向かった。
もっとも授業よりも友達に会うためみたいな状況だが。
学校につくと授業から解放され、いきいきと帰っていく学生たちがいた。
ちょうど講義が終った時間か。ならちょうどいい。次の授業は出るか。
そう考えているとケータイにメールが届いた。
差出人は住吉 仁。
大学に入学式の日に初めて話して以来の悪友である。
『真二ちゃーん(´∀`)冬眠かい??次の授業はくるか??』
始めたの真二ちゃーんが気持ち悪いと思ったが、あえてスルーして返信メールを作成する。
『次は行く。おまえは出るのか?』
返事はすぐにきた。
『スルーかい!!!
俺次は自主休講するわ。てか今日全部自主休講だ\(^o^)/』
こいつ。
講義全て休むとは一体何のために学校に来ているのだか。
とりあえず返事をしようとした時、肩に衝撃が走った。
「いでぇっ!!!!?」
真二がビックリして前をみると一人の女性が倒れていた。
そして周りにはたくさんの紙切れが舞い上がった。
「あたたたた。」
そう言いながら女性は立ち上がる。
「すみません。大丈夫ですか?」
散らばった紙をひろいながら真二は訪ねた。
どう考えても携帯に夢中で前を向いてなかった自分が悪い。
「いえこちらこそすみません。大丈夫ですよ。」
そう言って、真二から紙をうけとる。
その顔を見て真二はどきりとした。
ちょっ!!!・・・めちゃくちゃかわいいんだけど!!!!
まるでテレビにでてくる女優のような整った顔立ちなのである。
「あの・・・すみません・・・どうかされましたか?」
しまった。ついみとれてしまって、紙のを渡すのをわすれてしまった。
「いや・・・あ、ごめんごめん」
そう言って渡すと彼女は一礼してどこかへ駆けていってしまった。
かわいかったなぁ・・・。あの子。同じ学部なのかなぁ・・・?
そう考えながら真二は講義室にむかったが、その顔はにやけており周りに白い目で見られていたのは言うまでもない。
講義室につくと、相変わらずのテンションの高さの仁がいた。
「よぉ!!真二!!」
仁は真二を見つけると手をふりながらいった。
「メール返事くれよ!おまえのメール冷たすぎるぞ!!」
「あ、わりぃ。そいえばわすれてたっけ。」
あのかわいい子に夢中になりすぎて返信をわすれていたのだ。
真二は素っ気なく答えたが仁はまるで気にとめてる様子はないようだ。
「まぁいいや。
よし、じゃあ今から行くぞ!!」
「えっ。行くってどこにだよ。」
仁は子供のようにはしゃぎ気味に答えた。
「どこにって亀池に決まってんだろ!!?」
「はぁっ!?なんでこんな寒い中わざわざ行くんだよ!?」
亀池は大学から近く、電車にのれば行ける。しかし行ったところでその名の通り亀がいっぱいいるだけの何もない池なのである。
「なんでって、おまえ、カメッシーを知らないのかよ!?」
「カメッシー・・・?いや、知らないけど。」
真二がそう言うと仁はあちゃーといいながら首を横にふった。
「なんだよ。おまえ、もぐりだなぁー。今亀池つったらカメッシーの話題一色なのによー。」
「いやいや、カメッシーなんて聞いたことすらないから。まさか未確認生物ネッシーみたいなもんじゃないよな?」
「・・・えっ!!?なんだよ!!!おまえやっぱり知ってんじゃんかよ!!!」
仁は子供のようにはしゃぎだした。
それを見て真二は呆れながら言った。
「まさか、それを見に行くとか言うんじゃないよな?」
「いや、そのまさかだけど。」
「あほか。お前。」
仁は真二のツッコミをきにもとめず興奮気味に続けた。
「よく聞けよ、真二。カメッシーを捕まえれば、俺たち一躍有名人になれるんだぜ!!?
さらに賞金もでるんだ!!
名誉と大金をてにいれるチャンスなんだぞ!!!こんないい話そうそうないぜ!?」
いやいやいや、小学生かおまえーッッ!!!?
冗談じゃない!!どこの誰が流し噂か知らないが、なんでそんな嘘くさい話にのるのか。
というかこいつはカメッシーを本気で信じているのか?
我が友達ながら悲しくなってきた。
「俺は行かないからな。」
しかし仁も引かない。
「ダメだ。お前も来るんだ!!」
「いや寒いし、お前ひとりで行けよ。」
「お前、あほか。
大怪物カメッシーを一人で運べれるわけないだろうが。」
・・・ダメだ。こいつ。
本気でカメッシーを捕まえる気だよ・・・。
こうなった仁はもう止まらないのは十分知っている真二である。
「はぁ・・・。わかったよ。じゃあ行くよ。」
「よっしゃぁぁ!!さすが心の友!!」
そういいながら仁は小躍りしている。
まぁ、ちょっとした暇潰し程度に付き合ってやるか。
その時の真二はそんな軽い感覚だったのかも知れない。
その後電車に揺れること20分。
真二と仁は亀池に到着した。
さすがにこの寒さの中、亀池にくるような人はいないようで、池のまわりには人気がなく、静まり返っていた。
真冬の亀池にはカメッシーどころか池の名前の由来の亀すらもいなかった。
「やっぱりカメッシーなんていないんじゃないか??」
「いや、絶対にいるって!!待ち伏せしてればそのうち現れるさ。」
そいいうと仁は鞄からあんパンと焼きそばパンを取り出した。
「ほら見てみろ。食料もちゃんと持ってきたからな。」
そう言うと仁は近くにあったコンクリートの囲いに腰をかけた。
「なんか、もう帰りたい・・・。」
待ち伏せして一時間くらい経過しただろうか。
亀池に異変はない。
が、真二たちが待ち伏せしている目の前に二人の男女がやってきた。
「あれ、カップルか??」
こんな寒いのにわざわざ何もない亀池に来るなんて随分物好きというか、そうまでして二人きりになりたいのか。
「真二、あいつらもカメッシーを捕獲しにきた輩にちがいない。気張っていくぞ!!!」
そう言うと仁はその場でファイティングポーズをする。
「おいおい、気張るも何もあの人たちはただのデートで来てるだけだろ。」
そしてチラッとカップルたちの方を見て真二はとてつもないショックをうけた。
「な、な、な、なんだとーッッ!!!」
なんと女の子のほうが今日ぶつかったあのかわいい子だったのだ!!!
あの子彼氏いたんだ・・・。
しかも彼氏の方は手入れもしていないボサボサとした髪に似合わない黒ぶち眼鏡の一般的にオタクな人というイメージで、お世話にもかっこいいと言えない顔立ち。
隣にいる彼女があまりにもかわいいので余計に惨めに見えてくる。
つ、つりあわねぇ!!!!
まさにに美女と野獣状態。
「あぁ、もうだめだ。こんなの見たくない・・・。」
真二はそう言って膝と手をついてぶつぶつ呟いた。
「な、な、な、なんだとーッッ!!!」
今度はさっき真二が叫んだ言葉を仁叫んだ。
こいつ・・・。まさかこいつもあのカップルを見てショックをうけているのか?
それとも自分に対しての冷やかしか?
真二はそう想像したが、違った。
「カ、カ、カメッシーが現れたぁぁぁぁぁぁあああー!!!!!」
「えっ!!?」
そう言って真二が亀池を見てみると、
まるで特設番組に出てくる怪獣のような見た目の怪物がいるではないか!!
だが、作り物には見えない。
カメッシーの見た目は名の通り亀そっくりだが、その手には亀にはふさわくないほどの鋭い爪、口には牙が生えそろっている。
そして何よりも大きさが5、6メールはあるだろうか。とにかくやたらとデカイ。
とりあえず逃げなきゃヤバい。真二がそう考えていると、
「よっしゃぁ!!でたなカメッシーめ!!!覚悟しろぉぉぉ!!!!」
仁はそう言ってどこに隠し持っていたのか、虫網を片手にカメッシーの方へ走っていくではないか。
おいーッッ!!!!まさか、虫網でカメッシーを捕まえるつもりなのか!?
「おい、やめろ仁!!!無謀だぞー!!!!」
そう叫んだが、時既に遅し。
仁はカメッシーのところに泳いで行こうと池に飛び込んだ!!
と思いきや、たまたま足下にあった石につまづきその場に倒れこんだ。
そしてそのまま動かない。
「仁!?」
あわてて真二はカメッシーにばれないように駆け寄ったが、仁は頭を打って気を失っているだけだった。
「はぁ、心配させやがって。」
あのまま池に飛び込んだところでカメッシーに殺されるだけだ。仁が気絶したのは、不幸中の幸いだったのかもしれない。
カメッシーはまだこちらにきづいてないようだ。
「よし、今のうちに逃げよう!!」
そう思い仁を運ぼうとした時、真二はとんでもないものを見かけた。
なんとカメッシーの向いている方にさっきのカップルがいたのだ。
ところが二人は何故か逃げようとしない。
カメッシーその巨大な体で池を泳ぎ、近づいている。
そしてその巨大な爪で二人を切り裂こうとした!!
───危ない!!!!
ガキィィイン!!!!
金属のようなものがぶつかった音が鳴り響いた。
真二は一瞬何が起きたのか理解できなかった。
今自分はカップルの目の前にいる。
さっき自分がいた場所からはかなり距離がある。
だが、ここまで僅か数秒でたどり着き、そしてカメッシーの爪を弾いのだ。
二人は無事だ。
しかし驚きの表情のまま固まっている。
真二自身も驚いた。
「こんな運動神経よかったっけ・・・。」
だが、運動神経うんぬんどころか、人間技じゃない。
一方、カメッシーはというと真二に爪を弾かれたのがきにくわなかったのかガルルルと獣ようなのうなり声をあげている。
ヤバい!!早く逃げないと殺される!!!
「はやく!!あんたらにげろ!!!」
真二はカップルに対して叫んだ。
しかし、突如野太い声が聞こえた。
「何故人間の見方をするのだ・・・レオニールよ。」
なんと、あのカメッシーがしゃべったのだった。