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時空の臨界――「強制排除」の閃光

大坂城本丸の巨大な油圧門が轟音と共に開き、黄金の陣羽織を翻した豊臣秀頼が、真田幸村のサイドカーに跨ったその瞬間でした。


御堂筋の北側から、地響きのような重低音が響き渡ります。 「警視庁、及び自衛隊第三師団だ! 全員、武器を捨てて投降しろ!」 空を埋め尽くすのは、陸上自衛隊の**「対戦車ヘリ・コブラ」の群れ。地上では、警察庁の「特殊銃器対策部隊(SAT)」**を乗せた装甲車が、アスファルトを削りながらバリケードを強行突破して現れました。


現代日本が、ようやくこの「戦国ハック」という異常事態を国家を揺るがすテロと断定し、正規軍の総力を挙げた物理的な排除に乗り出したのです。


自衛隊の八九式五.五六ミリ小銃が一斉に火を噴き、徳川・豊臣両軍の足軽たちを容赦なくなぎ倒します。術で強化されたはずの具足も、現代の正規軍が放つ圧倒的な弾幕の前では、無力な鉄の板に過ぎませんでした。


東署の松島巡査は、警察庁の同僚たちの姿を見て、安堵と恐怖の混ざった叫びを上げました。 「撃つな! ここにはまだ一般人が、逃げ遅れた人たちがいるんだ!」


だが、現代の武力が戦国武将たちを一掃しようとしたその時、世界から一切の音が消失しました。ナオトのスマホ画面は激しいノイズに塗りつぶされ、拠点を守る美咲の絶叫がデジタル音へと瓦解していきます。 「ナオト君……だめ! 歴史の……修正力が……限界を超え……!!」


「――天海、貴様が招いた結果だ。世界がこの矛盾を拒絶している」 石田三成が、天を指差しました。空が、ジグソーパズルのように崩れ始めます。現代のビル群と、かつての大坂の風景が、超高速で入れ替わり、空間の摩擦熱で世界が真っ白に発光していきました。


「キィィィィィィィィィン!!」


鼓膜が裂けるような高周波と共に、御堂筋の中央に**「巨大な光の柱」**が出現しました。自衛隊の戦車も、SATの装甲車も、血溜まりの中にいた松島巡査も、黄金の秀頼も、冷徹に鴉を操っていた秀元も――。その場にいた「戦場」のすべてが、抗えぬ光の渦に飲み込まれていきました。


どれほどの時間が経ったのでしょうか。ナオトが再び目を開けた時、そこにはもう、アスファルトも、LEDの看板も、自衛隊のヘリもありませんでした。


鼻を突くのは、排気ガスの匂いではなく、**「焼けた草と、乾いた土と、大量の血」**の匂い。気温は優に四十度を超え、見上げる空には、現代より一回り大きく、血のように赤い太陽が居座っています。


「……ここが、一六一五年。本当の『夏の陣』か」


ナオトの横には、泥まみれになりながらも立ち上がる松島巡査の姿がありました。その手には、現代の警察庁から支給された拳銃が、白くなるほど強く握られています。そして、その前方には――。


「真田幸村、参る。……ナオト殿、警察官殿。どうやら、退路は完全に断たれたようだな」


幸村が、赤く塗られたバイクの泥を拭いながら立ち上がります。彼らの背後には、現代の大阪から共に飛ばされてきた**自衛隊の軽装甲機動車(LAV)**が、数台、砂煙を上げて横転していました。


「秀頼公は……秀頼公はご無事か!」 大野治長が叫びます。瓦礫の中から、黄金の陣羽織を纏った秀頼が、高周波振動刀を杖代わりに立ち上がりました。その瞳は、過去の歴史に戻った絶望ではなく、この灼熱の地で家康を討つという、狂おしいほどの戦意に満ちていました。


「……家康、どこだ。予がお相手してやろう。今こそ命を捧げ、豊臣の真理を知らしめる時なり!」

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