黄金の獅子、覚醒――「命を捧げる時、今なり!」
御堂筋が肉と鉄の焦げる死臭に包まれる中、大坂城本丸・奥御殿では、歴史を覆す「意志」が爆発しようとしていた。
血に汚れた床も厭わず平伏するのは、城外の地獄から帰還した武将たちだ。真田幸村、大野治長、毛利勝永、そして長宗我部盛親。彼らの具足の隙間からは、先ほどまで斬り結んでいた徳川兵の、まだ熱い脂が滴り落ちている。
「……最早、一刻の猶予もございませぬ!」
毛利勝永が、床を砕かんばかりに拳を叩きつけた。 「城外の民は肉塊となり、兵は死力を尽くしております! 今こそ、秀頼公自ら馬を執り、御旗を翻してくだされば、豊臣の士気は天を突き、徳川を御堂筋の果てまで押し戻せましょう!」
だが、上座の簾の奥から響いたのは、狂気すら孕んだ淀殿(淀君)の拒絶であった。
「なりませぬ。断じて、許しませぬ!」 彼女は現代の監視タブレットを握りしめ、青白い顔で叫ぶ。 「秀頼は豊臣の宝、天下の主なるぞ。あのような汚らわしい肉の雨が降る戦場に、一歩たりとも出すわけにはまいりませぬ。治長! 貴様は何のためにそこに居る! 秀頼を出さずとも勝つのが、臣下の務めであろうが!」
その時、沈黙を守っていた豊臣秀頼が、ゆっくりと、しかし巨木が立ち上がるような威圧感で立ち上がった。六尺(約180cm)を超えるその体躯が、黄金の陣羽織を翻し、淀殿の前に立ちはだかる。
「母上。……豊臣の大将は、この予(御身)にございます!」
その咆哮は、御殿の天井を震わせ、平伏していた将たちの背筋を貫いた。秀頼は淀殿の細い肩を、鋼のような力で掴み、その瞳を正面から射抜く。
「外を見なされ! 松島という若き巡査が、震える手で銃を握り、民を守ろうとしている。名もなき兵たちが、内臓をぶちまけながらも私の名を呼んで死んでいく。……今こそ、この予が命を捧げる時! 共に戦おうぞ!!」
「秀、秀頼……何を……」
「治長! 幸村! 勝永! 盛親! 予に馬を引け! 現代の兵装を纏った『真田のバイク』でも良い! 予が先頭に立ち、家康の首をこの手で獲る!」
秀頼は傍らにあった現代の**「高周波振動タクティカル・カタナ」**をひったくるように手に取り、親指で鍔を弾いた。 「キィィィィィィン!!」 高周波の駆動音が、静まり返った御殿に共鳴する。その音は、死を待つだけの「籠城」の終わりを告げるファンファーレだった。
「秀頼公……っ!!」 幸村たちが感極まった声を上げ、一斉に顔を上げる。その瞳には、敗北の影など微塵もなかった。
「開門せよ! 豊臣秀頼、出陣である!!」
大坂城全域のスピーカーから秀頼の咆哮が轟き渡ると同時に、本丸の巨大な門が、重厚な油圧音を立てて開き始めた。現代のSNSコメント欄は『秀頼、ついに覚醒!』の文字が滝のように流れ、戦場の士気は一気に臨界点を超えた。
次章、黄金の獅子が、血塗られた御堂筋を爆走する。




