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第96章:狂乱の御堂筋

淀屋橋の交差点は、阿鼻叫喚の地獄へと変貌していた。アスファルトの上に無造作にぶちまけられた本多忠朝の内臓は、5月の焦熱に晒され、赤黒い湯気を立ち昇らせている。


「……あ……あああ……!!」


避難誘導に当たっていた**大阪府警・東署地域課の松島巡査(24歳)**は、腰のホルスターに収まった「サクラ」M60回転式拳銃に手をかけることさえ忘れ、目の前の「肉の山」を凝視したまま凍りついていた。


警察学校を卒業して2年。角刈りに近い短髪、柔道で鍛えたがっしりとした体格の松島は、正義感に燃える典型的な若手警察官だった。だが今、制服の白シャツには細かな返り血のしぶきが飛び、彼の凛々しかった頬は土気色に変わっている。


彼が今まで見てきた「死」は、精々が交通事故の現場でブルーシートに覆われた遺体だった。だが今、目の前にあるのは、現代のチェーンソー刃によって脊椎ごとズタズタに引き裂かれ、生物としての形を失った**「かつての人間」**だった。松島は、自身の震える指先が、ホルスターのストラップを外すことすら拒絶していることに絶望していた。


一般人の精神崩壊:パニックの連鎖

その横を、オフィスビルから逃げ出してきた会社員たちが、獣のような悲鳴を上げながら駆け抜ける。


「踏んだ! 今、誰かの指を踏んだぞ!!」 高級な革靴の底に、ねっとりとまとわりつく赤い脂肪。男は叫びながら、狂ったようにアスファルトに靴をこすりつける。その顔は、恐怖で鼻水と涙が混じり合い、人間としての尊厳を失っていた。


その背後では、老婦人が血溜まりの中に膝をつき、祈るように両手で顔を覆っていた。だが、指の間から溢れるのは、恐怖で失禁した自身の体温と、足元を流れる武士たちの冷たい血の混濁だった。


「映せよ! ほら、これが『本物』だぞ!!」 高架下では、精神に異常をきたしたYouTuberが、自撮り棒を振り回しながら、転がっている徳川兵の首にカメラを近づけていた。切断面から覗く脊椎の白さと、未だに神経が痙攣してピクピクと動く唇。 「視聴者100万人突破! 歴史の瞬間、最高だろ!?」 男の笑い声は、直後に飛来した矢によって遮られた。喉を射抜かれた男のスマホが、自らの噴き出す鮮血で真っ赤に染まった画面を世界中に発信し続ける。


武将たちの「異常な日常」:毛利勝永の鉄火場

この狂乱を「背景」程度にしか感じていないのが、大坂城から討って出た毛利勝永だ。勝永は、現代の**「工事用ダイナマイト」を括り付けた火縄銃を抱え、徳川方の小笠原秀政**の陣地へ突進する。


「現代の民よ、邪魔だ! 死にたくばそこに居れ!」 勝永は、腰を抜かして動けないサラリーマンの肩を足場に跳躍。空中で引き金を引き、現代の爆薬を充填した弾丸を秀政の胸板に撃ち込んだ。 ドォォォォォォン!! 爆発と共に、秀政の身体は木っ端微塵に砕け散り、肉片が周囲のビルの窓ガラスにべっとりと張り付いた。松島巡査は、その破裂音で我に返ったが、もはや「警察官」として機能する術を知らなかった。


指揮官の冷徹:鳥の眼が見る「最適解」

上空では、毛利秀元の操る「使い魔の鴉」が、血に狂う一般人と、肉を切り裂き合う武士たちを無機質なレンズで捉えていた。


「……民のパニックが、敵の進軍を阻害しているな。良き盾だ」 秀元はタブレットを操作し、鴉の羽から**「神経を麻痺させる特殊ガス」**を散布する。ガスを吸った一般人たちは、力なくその場に崩れ落ち、徳川の騎馬隊に対する「肉の防壁」となって道を塞いだ。


「ナオト殿、情けは捨てよ」 真田幸村が、返り血を浴びたバイクのアクセルを吹かす。 「これが戦場だ。美しき物語など、血の一滴で溶けて消える。我らと共に、この地獄を泳ぎ切る覚悟はあるか!」


御堂筋は、現代の文明が剥ぎ取られ、剥き出しの「殺戮のレイヤー」へと変貌を遂げた。

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