御堂筋パニック
やばい、これマジの戦争じゃん!」「逃げろ、地下に潜れ!」
御堂筋のオフィスビルから逃げ遅れたサラリーマンや、買い物客たちが、アスファルトの上を右往左往していた。 彼らの目の前では、毛利秀元の騎馬隊がタクシーの列を飛び越え、立花宗茂の兵たちが街路樹の陰から奇襲を仕掛けている。
「おい、映ってるか? これ今、御堂筋! 本物の真田幸村がいる!」 ある若者が、震える手でスマートフォンを向け、SNSでライブ配信を始めた。画面の中では、赤備えの幸村が、徳川方のRPGの照準をかわしながら、ビル壁を蹴って跳躍する姿が映し出されている。 コメント欄には『CGだろ?』『いや、淀屋橋が燃えてる!』『警察何してんの!?』と、数万件の投稿が秒速で溢れた。
「……ナオト君、逃げて! 近くのビルの窓に、変な筒を構えた奴らがいる!」 インカム越しの美咲の叫びに、ナオトはハッとして顔を上げた。 「佐藤さん、あそこの一般人を保護してください! 全員ビルの中に!」
「了解!……お前ら、撮影してないで隠れろ! 命が惜しくないのか!」 佐藤巡査部長が拡声器で叫びながら、泣き叫ぶ親子を抱え、近くのカフェの中へと押し込む。 そこへ、天海が放ったロケット弾が飛来した。
「ドォォォォォン!!」
爆風で街路樹がなぎ倒され、高級ブランド店のショーウィンドウが無残に砕け散る。 「ヒィッ!」「助けて!」 現代人たちの悲鳴が響く中、その爆炎の中から現れたのは、『祇園守』の羽織を翻した立花宗茂だった。
「未来の民を傷つけるか、家康! 無実の者に手を出すなど、武士の風上にも置けぬ!」 宗茂は、腰に下げた現代の**「交通整理用の赤色誘導灯」**を抜き放った。 「ナオト殿に教わったこの『光の棒』、夜戦の合図には最適よ! 者ども、あの窓を狙え!」
宗茂が振る赤い光を合図に、ビルの屋上にいた明石全登の狙撃隊が、天海の異形兵たちを次々と射抜いていく。
「……凄い。あんなの教科書に載ってなかった」 カフェの窓からその様子を見ていた女子大生が、涙を流しながら呟いた。 目の前にいるのは、単なる歴史上の記号ではない。自分たちの日常を守るために、現代の武器や地形を駆使して戦う、生きた英雄たちだった。
「ナオト、隙ができたぞ! 今こそあの大路(御堂筋)を駆け抜けろ!」 石田三成が黄金の鳥の群れを呼び寄せ、爆発の煙を吹き飛ばす。
「幸村さん、秀元さん、今です! 家康まであと五百メートル!」 ナオトは、美咲から送られてきた「Google マップ」の最短ルートを指差した。 「……承知した。ナオト殿、美咲殿。未来の御堂筋は、我らが必ずや取り戻して見せよう!」
真田幸村を先頭に、立花宗茂、毛利秀元、後藤又兵衛ら勇士たちが、スマホを構える民衆の前を、一陣の風となって駆け抜けていった。




