硝煙とLED――コンビニ防衛戦
来るぞ! 衝撃に備えろ!」
ナオトの叫びと同時に、コンビニの強化ガラスが激しく震えた。外の闇から躍り出たのは、徳川方の先鋒、松平忠直配下の荒武者たちだ。彼らは、見たこともない「光り輝く四角い城」を、異界の宝物庫だと思い込み、我先にと突進してくる。
「野郎ども、門(自動ドア)を破れ! 中の財宝を分捕れッ!」
「佐藤さん、今だ!」 ナオトの合図で、パトカーの屋根に陣取った佐藤巡査部長が、手にした拡声器のスイッチをサイレンモードで最大にする。 「ウゥゥゥゥーーーーン!!!」 夜のしじまを切り裂く、鼓膜を震わせる咆哮。 「な、なんだ!? 鉄の獣が吠えたぞ!」 馬たちがパニックを起こし、前足を跳ね上げて武者たちを振り落とす。
その隙を、真田幸村は見逃さなかった。 「放てっ!」 コンビニの駐車場に積まれた「清涼飲料水のケース」を盾にしていた真田隊の足軽たちが、一斉に火縄銃を放つ。乾いた銃声がアスファルトに反響し、徳川の兵たちが次々と倒れ伏した。
「おのれ、これしきの音で怯むか! 突き進め!」 松平隊の剛力な武者が、自動ドアのセンサーに飛び込んだ。 「ピンポーン」 間の抜けた入店音と共にドアが開く。そこへ待ち構えていたのは、レジカウンターを乗り越えて飛来した後藤又兵衛の巨躯であった。
「この城の主は、我らよ!」 又兵衛の槍が、武者の喉笛を正確に貫く。同時に、木村重成が店内の床にワックス代わりに撒かれた「中性洗剤」を指差した。 「足元を見よ、徳川の輩共!」 洗剤でヌルヌルになったタイルの上で、後続の兵たちが面白いように滑り、転倒する。そこへ幸村の十文字槍が容赦なく突き刺さった。
ナオトは、カウンターの中で震える美咲を背中に隠しながら、手に持った「強力LED投光器」のスイッチを入れた。 「目を閉じろ!」 強烈な数千ルーメンの光が、闇に慣れた戦国武士たちの視界を真っ白に焼き切る。 「ぎゃああっ! 目が、目がああ! 太陽を盗んだか!」 視力を奪われ狂乱する敵軍。そこへ、現代の「催涙スプレー」を手にした佐藤巡査が、無念を晴らすかのように噴射した。 「公務執行妨害だ! 大人しくしやがれ!」
戦場は、凄まじい混沌に包まれていた。 アスファルトの上には、血の海とこぼれたコーヒーの染みが混ざり合い、火縄の煙が店内の火災報知器を鳴らし続ける。
「ナオト、左だ!」 三成が叫ぶ。影から飛び出そうとした敵兵に対し、ナオトは重い「レジスター」を力任せに投げつけた。 ガシャン! という音と共に小銭が舞い散り、敵が怯んだ隙に三成の刀が閃いた。
「……あ、ありがとう、ナオト君」 背後で美咲が、震える手でナオトの作業着の裾を掴んだ。 「……絶対、守るって言ったでしょ」 ナオトは彼女を振り返らず、ただ前を見据えた。頬にはかすり傷、手は油と血で汚れているが、その横顔は美咲の目には、どの歴史書の英雄よりも逞しく映っていた。
だが、戦乱の狂気は終わらない。 「……ククク、小賢しい真似を」 ビルの屋上から見下ろす天海が、不気味に印を結んだ。 「ならば、未来の『力』をもって、この店ごと消し去ってくれよう」
天海が指差した先――駐車場の端にある「プロパンガスのボンベ」の集合体に、呪いの火が走った。
「まずい! あそこが爆発したら、店ごと吹っ飛ぶ!」 ナオトは、絶望的な予感に目を見開いた。




