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:交差する世界―

時空の境界線は完全に崩壊した。 大坂城の周囲では、戦国時代と現代の風景がパズルを無理やり組み合わせたように混ざり合っていた。


現代:大阪市中央区・大阪城公園付近

「な……何や、あれ!? 霧の中から、なんか出てきたぞ!」


2025年の大阪。観光客で賑わう公園に、突如として血生臭い硝煙の臭いと共に、泥塗れの土塁と真田丸の城壁が出現した。 観光客たちがスマートフォンを掲げて騒然とする中、その土塁の陰から、返り血を浴びた木村重成と真田隊の兵たちが、槍を構えて飛び出してきた。


「ここはいずこだ!? 陣屋が変わったぞ! 徳川の伏兵か!」 重成は、目の前にある「光り輝く巨大な看板デジタルサイネージ」や、奇抜な服を着てカメラを向けてくる民衆を見て、槍を震わせた。


「おい、撮影か? リアルすぎひん?」「コスプレ? 本物の馬おるで!」 無邪気に近づく若者に、重成が鋭い一喝を浴びせる。 「寄るな! 木村長門守重成、ここを通る! 邪魔だてせば斬るぞ!」


直後、けたたましいサイレンが鳴り響いた。 大阪府警のパトカー数台が、アスファルトを蹴立てて現れる。 「こちら警察です! 槍を捨てなさい! 危険な模造品……いや、本物か!? 落ち着いてください!」 拡声器を通した警察官の声は、戦国兵士たちには「天から響く怪鳥の叫び」に聞こえていた。


「怪しき鉄のパトカーが吠えておる! 出よ、者ども! 敵の妖術を打ち破れ!」 重成が号令をかけると、現代の道路のど真ん中で、戦国武士と警察の機動隊が対峙するという異常事態に発展した。


戦国時代:大坂・真田丸付近

一方、戦国時代に取り残されたナオトは、目の前の光景に頭を抱えていた。 真田丸のすぐ隣に、現代のコンビニエンスストアが、照明を煌々と輝かせたまま出現していたからだ。


「おい、ナオト! あの光る箱は何だ! 中に人がおるぞ!」 後藤又兵衛が、コンビニの自動ドアが開くたびに「ピンポーン」と鳴る音に驚き、飛び上がっている。 「又兵衛さん、あれは……食べ物を売る店です! 攻撃しちゃダメだ!」


コンビニの中では、店員や客が、窓の外を通り過ぎる馬や、火縄銃を構える足軽を見て腰を抜かしていた。 そこへ、徳川方の松平忠直の軍勢が、略奪のために店に押し入ろうとする。


「おのれ、未来の兵糧庫か! 中の者、米を出せ!」 「無理ですよ、松平さん! そこ、レジ通さないと買えないから!」 ナオトが叫ぶが、混乱は止まらない。


その時、戦場の中心にそびえ立つビルの屋上に、漆黒の法衣を纏った天海が姿を現した。 「……見たか、ナオト。これこそが、貴様が持ち込んだ歪みの結末だ。二つの世界が混ざり合い、共倒れとなる。この混沌を止めたくば、貴様がこの時代の塵となって消えるほか、道はないぞ!」


天海の背後では、ヘリコプターが旋回し、戦国武将たちはそれを使命を帯びた「鉄の龍」だと信じ込んで、一斉に弓を番え始めた。


「幸村さん! 警察も、徳川の兵も、みんなパニックだ。このままじゃ、未来も過去もめちゃくちゃになる!」 ナオトは、志乃の手を強く握った。彼女の瞳には、自分の住む世界が壊れていく恐怖が浮かんでいる。


「……ナオト様、私たちがすべきことは、この壁を『直す』ことではなく……どちらかの世界を『選ぶ』ことなのですか?」


志乃の問いかけに、ナオトは答えることができなかった。 空の上では、2025年の大阪の夜景と、1614年の炎上する戦場が、万華鏡のように激しく入れ替わり始めていた。

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