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紅蓮の要塞――超・真田丸

大坂城の南端、徳川軍が最も攻め寄せると予想される空堀の先に、その「異形」の出城は姿を現しつつあった。


「幸村さん、ここの角度はあと五ミリ……いや、一分いちぶ削ってください。計算上、ここが一番弾丸を弾く『跳弾の壁』になります」


ナオトは、真田丸の土塁の上に立ち、手にしたレーザー墨出し器を走らせていた。赤い光の線が夕闇の土を正確に切り裂いていく。 「ほう……この赤い糸の通りに削ればよいのだな。ナオト殿、貴殿の言う『構造の理』、実に見事だ」 真田幸村は感嘆の声を上げた。本来なら経験と勘に頼る築城が、ナオトの持ち込んだ現代の測量技術と、三成が計算した緻密な資材配分によって、驚異的な速度で「不落の要塞」へと変貌していた。


ナオトはさらに、腰袋から取り出した特殊な「補強用シート(現代の建築用クロスの端切れが、時空を超えて鋼鉄以上の強度を持つ霊的防壁へと変化したもの)」を、土塁の要所に貼り込んでいく。 「これは、ただの壁じゃない。徳川の重たい大筒(大砲)の衝撃を分散して、受け流すための『クッション』です」


その様子を、真田丸の守備につく木村重成が、眩しそうに見つめていた。 「ナオト殿の術があれば、我ら十万の浪人も、単なる捨て駒ではなく『生きた盾』になれる。希望が見えてきました」 重成の隣には、城内の侍女として働く**志乃しの**という娘が、兵たちの炊き出しの合間にナオトへ視線を送っていた。彼女は、かつてナオトが佐和山で助けた農家の娘であり、この十四年の間に城へ奉公に出ていたのだ。 「ナオト様……どうか、ご無事で」 ふとした瞬間に目が合う二人。戦場に流れる一瞬の静寂は、まるで恋愛映画のワンシーンのように甘く切ない空気を纏っていたが、ナオトは照れ隠しに作業の手を早めた。


しかし、この異変を徳川が見逃すはずはなかった。 茶臼山の本陣。家康の傍らに立つ、怪僧・天海が、漆黒の数珠を握りしめ、大坂城の南方を指差した。 「……家康公、あの赤い光は禍々しき異界の理。あの壁を壊さねば、我が方の弾丸は一発たりとも城へは届きませぬ。今宵、わが呪術をもって、あの『壁』の結界に穴を開けましょうぞ」


天海が呪文を唱え始めると、冬の夜空が不気味な紫色の雲に覆われ、真田丸へ向かって黒い落雷が走り始めた。


「ナオト、来るぞ! 天海の呪いだ!」 三成の叫びが響く。 ナオトは、ユイカの手を握りしめた。 「大丈夫だ、ユイカ。俺たちの技術わざは、魔法なんかには負けない!」


ユイカの体が黄金に輝き、ナオトが貼った「壁」が共鳴を始める。天海の放つ負のエネルギーを、ナオトの築いた「超・真田丸」が、光り輝く障壁となって弾き返した。


夜の闇を貫く赤と金の光。 真田幸村は、その光に照らされた己の軍旗「六文銭」を高く掲げ、咆哮した。 「徳川二十万、受けて立つ! この真田丸こそが、お主らの墓標よ!」


ついに、歴史を塗り替える「大坂冬の陣」の火蓋が切って落とされようとしていた。

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